NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 安部みちこ

輝いている大人になりたい。
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社会の役に立ちたい。
  • どんな学生時代でしたか?

    高校と大学では、アルバイトばかりしていました。何か買いたいものがあったわけではなく、誰かのために働くことが好きだったんです。特に接客業が好きで、お客さんに喜んでもらえることにやりがいを感じていました。
    たとえば、ファストフードでアルバイトしていたときは、このお客さんはマニュアル通りにテキパキとやったほうがいいとか、このお客さんはたわいのない話をしながらゆっくりメニューの説明をしたほうが喜んでもらえるとか、それぞれのお客さんに合わせて接し方を変えていました。自分としてはそれが楽しかった。そのお客さんがどのような接客を望んでいるのかを感じとるのが得意でした(笑)。
    大学のときは、カウンターだけの小さな料理店で働いていました。近くに自動車関係の工場があったので、そこで働いている人たちがよく来てくれて、料理を出しながら自分が知らない世界の話を聞くことが楽しかったですね。
    アルバイトには、自分の得意なことや楽しいことがたくさんありました。

  • アルバイトを通して得たものは何ですか?

    主に飲食店で働いていたので、工場で働いている人、フリーターの人、大学の教授、何かを目指して頑張っている人など、様々な人たちとふれ合うことができました。自分の知らない世界の人たちの生の声を聞くことで、私の中の世界も広がったように思います。
    こういうことで悩んでいる人がいる、こういうことで一喜一憂する人がいる、こういう考え方をする人がいる。家庭や学校では知ることのできない多くのことをアルバイト先で学ぶことができました。
    また、私の接客に「元気をもらえたよ。」と言ってくれるお客さんもいました。そんなとき、自分の笑顔や言葉で誰かを励ましたり元気にしたりできるんだなと思って、うれしくなったことを覚えています。それも、今の仕事につながっていると思います。

  • アナウンサーを志望したきっかけを教えてください。

    大学で学び、アルバイトをしているうちに、何か、人や社会の役に立ちたいという欲求が出てきました。ちょっと大げさですが、自分が働くことで、人が喜んでくれたり、社会がより豊かになったりしたらいいなと。
    NHKに入りたいと思ったのは、公共放送だったからです。私はちょっと単純なところがあって、「公共放送」イコール「社会の役に立てる」、と思ったんです(笑)。
    そして、NHKに入ったら何をしたいのか?何ができるのか?と考えたとき、私は人の話を聞くのは得意だったので記者かアナウンサーがいいと考え、どちらを第一志望にするかでかなり迷いました。
    迷った末、誰かに話を聞き、そしてそれを自分の言葉で誰かに伝えることができるアナウンサーを第一志望にしました。アナウンサーとして内定をいただいたときは、本当にうれしかったですね。

3/11
人々の思いを伝える覚悟。
  • 新人のころは、どんなアナウンサーでしたか?

    本当に右も左もわからないアナウンサーでした(笑)。はじめて、朝の生中継を担当することになったときも、どんな準備をすればいいのかわからずあたふたしていました。自分は動いていいのか?表情を出していいのか?そんな初歩的なことさえ知らなかったので、それまでに放送された先輩の中継を見直して、真似ることからはじめました。思い返すと、入局1年目はひたすら先輩の真似をしていましたね。

  • 初任地の徳島で、特に印象に残っている仕事は何ですか?

    やっぱり「阿波踊り」です。入局してまだ半年も経っていませんでしたが、1分間の生中継を任せていただきました。
    ところが、いざ中継がスタートすると「藍場浜演舞場です!」と言ったあと、一生懸命考えたコメントが声になりませんでした。1500人の踊り子と観客の熱気に、何も言えなくなってしまったんです。その間、放送されていたのは、現場の迫力ある映像と音。しばらくして、ようやく、「観客はじっと座っていられずに身を乗り出しています。」というような言葉を出すことができました。
    でも、放送後、多くの方々から「あの中継、良かったよ。」と声をかけてもらえたんです。コメントが少なかった分、映像と音が会場の臨場感を伝えてくれたようでした。

  • 先輩からの言葉で、
    今も大切にしているものはありますか?

    アナウンサーになって2年目だったと思います。甲子園でスタンドリポートをすることになりました。30秒の短いリポートでしたが、厳しい地方大会を勝ち抜いて甲子園までたどり着いた選手や監督、そして応援に駆けつけている家族や友だちなど、甲子園には多くの人の思いがあふれていて、そのどこを切り取ってリポートすればいいのかとても悩みました。
    そのとき、先輩から「人々の思いを伝えるという仕事は、とても厳しいものなんだ。」と言われました。「甲子園でも、オリンピックでも、選手たちは何年も、何年も練習を積み重ねてそこに立っている。応援に来ている人たちも、熱い思いを抱いてそこにいる。その思いを伝えるには、私たちもそれに見合うだけの準備をしなければいけないし、覚悟をしなければいけない。」
    この言葉は、いろいろな現場で今も思い出します。阿波踊りの中継はたまたまうまくいきましたが、当時は、この『伝えることの厳しさ』を理解していませんでした。ですから、入局2年目という早い段階でアナウンサーとしての覚悟を教えてくださった先輩には今でも感謝しています。

3/18
生活者の視点を大切にする。
  • 現在、担当している『ごごナマ』では、
    どのようなことを心がけていますか?

    私は、子育てをしていて、地域の活動やPTAにも携わっています。そういう、生活者としての視点や感覚を大切にしたい。そして、テレビを見てくれている人たちが、生活の中で気になっていることは何か?という想像力を働かせることも大切だと思っています。
    あと、わかりやすさや見やすさを、視聴者目線で考えるようにしています。たとえばパネルで何かを説明するときに、どう撮ったらより見やすいか?など、リハーサルのときにカメラマンやディレクターと入念に打ち合わせています。

  • 『ごごナマ』では、出演者の船越英一郎さんと美保純さん、そしてゲストの方々との軽妙なやりとりが繰り広げられます。私の役割の3分の2は、番組進行やみなさんが楽しくトークができる雰囲気づくり。そして残りの3分の1は、視聴者目線でコメントすることです。今の会話はテンポがあって良かったけど、見ている人にちゃんと伝わったか?もし、わかりにくいと思ったら、会話に割り込んで「今のはこういうことですか?」と、ポイントを整理するようにしています。
    番組では様々なテーマを取り上げますが、わかりやすく楽しんでもらえるように心がけているので、何かをしながらでもぜひ見てほしいですね。

  • 『100分de名著』はどのような番組ですか?

    目の前の扉がひとつ開くというか、自分の引き出しを増やしてくれる番組ですね。ふだんなら、ちょっと難しそうな本、宗教書や歴史書も取り上げますが、どれも今の生活に通じるものが必ずあります。読み解いていくと心を動かされたり、元気をもらえたりする。また、よく知っていると思っていた本から新たな発見をすることもあります。1冊の本が明日や人生を変えてくれることもあるのだと実感できる番組だと思います。

  • しかも本の解説だけでなく、伊集院光さんが絶妙なタイミングで笑わせてくれたりもするので、肩肘張らずにリラックスして楽しんでもらえると思います。番組名は『100分de名著』ですが、4回で1冊の名著を紹介しているので、1回の放送時間は『朝ドラ』よりちょっと長い25分。この放送時間も気軽に見ていただくにはちょうどいいのではないでしょうか。
    また、どんな本を取り上げるのかも楽しみにしてほしいなと思います。

3/25
輝いている大人になりたい。
  • 今後、どんな番組を担当してみたいですか?

    たくさんありますが、その中の1つは世界各地でリポートをするような番組です。
    去年、『一本の道』という番組で、アドリア海を望むモンテネグロを訪ねました。そして、現地の人たちが大切にしている文化、宗教、食べ物、生活を紹介しました。
    それで、これからも世界にはこんな場所があって、こんな生き方もあるんだよ、ということをもっと伝えたいと思ったんです。次は、そうですね・・・北極と南極に行ってリポートしたいです!

  • 家事と仕事を両立しながら、どうやってリフレッシュしていますか?

    子育てです。大変ですが、リフレッシュできるのも子育てなんです。
    子どもが野球チームに入っていて、週末は朝7時からグラウンドに行って、お茶当番やボール集めをやっています。試合がある日は応援に行って、子どもと一緒に飛び上がって喜んだり、悲しんだり、励ましたり・・・こんな体験をさせてもらって本当に幸せです。子どもには、感謝の気持ちでいっぱいです。

  • 今後の目標を教えてください。

    あの人は子育てをしながら、仕事もしている。大変そうだけど、何だかいつも楽しそう。特に若い人たちに、そう感じてもらいたいと思っています。
    子どもにもお母さんは、家のことと仕事で忙しそうだけど、いつも楽しそうだと思ってほしい。
    輝いている大人になりたい!そういう思いでアナウンサーという仕事をこれからも続けていきたいですね。
    アナウンサー2年目に先輩から教えてもらった「人々の思いを伝える覚悟」を胸に、日々の仕事を楽しみたいと思っています。そういう気持ちでいると、やりたいこと、チャレンジしたいことがどんどん増えていくような気がします。

    ありがとうございました。


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