NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 小澤康喬(やすたか)

心震える言葉を求めて。
7/01
きっかけは「駅伝」でした。
  • アナウンサーを志望したきっかけは何でしたか?

    駅伝です。
    私は、中学と高校の陸上部で長距離を走っていました。その中で、特に思い出に残っているのが、高校3年生のときに出場した駅伝なんです。自慢できるような成績を残せたわけではありませんが、仲間たちとタスキをつないで走りきったことはやはりかけがえのない思い出になっています。

  • 駅伝がどうアナウンサーにつながったのですか?

    高校球児が甲子園に憧れるように、駅伝の選手は京都の都大路を駆け抜ける全国高等学校駅伝競走大会に憧れるんです。でも、私たちの実力で出場することは夢のまた夢だったので、テレビで観戦していました。選手として出場できなくても何らかの形で全国高校駅伝に関わることはできないだろうか?と考えたとき、テレビで実況をしていたアナウンサーに目が止まったんです。
    だから、アナウンサー採用試験の面接では、「NHKのアナウンサーになって全国高校駅伝の実況をしたい!」とアピールしました。

  • アナウンサーになって、憧れの「都大路」で実況はできましたか?

    残念ながら、実現しませんでした。そもそもスポーツ実況が苦手ということが早々に発覚し、スポーツアナウンサーの道は断念していましたので。でも、2局目の福井放送局で、一度だけ駅伝の放送を担当したことがあります。福井県の高校駅伝のラジオ中継で、スタートしてトラックを出るまでの実況でした。ところが、思うように描写できません。たとえば、「後ろの選手が前の選手を抜きました!」、ラジオでは何のことだか分かりませんよね。自分がスポーツ実況に向いていないことを再確認しました(笑)。

  • そんなに早く夢をあきらめて、それからどうしたんですか?

    実はそれほど困りませんでした。ほかにやりたいことが見つかったので。その後、ニュース番組や情報番組などのキャスター、リポーターとして、きょうまでやりがいを感じて働くことができています。それぐらい、NHKのアナウンサーの仕事は幅が広く可能性に富んでいると思います。
    駅伝は、NHKの素晴らしいスポーツアナウンサーの実況で楽しむのが一番です(笑)。

7/08
簡単に納得しない。
  • 新人時代には、どんな思い出がありますか?

    初任地は名古屋放送局で、取材をするたびに、先輩たちから「簡単に納得するな!」と言われたことです。
    たとえば、初めてテレビの企画を制作した時のことです。毎年夏に名古屋市などで開かれる「にっぽんど真ん中祭り」を立ち上げた20代の男性にインタビューしました。丁寧な説明にすっかりわかった気になった私の取材は、祭りができるまでの経緯をなぞるにとどまってしまいました。男性の「名古屋の街を盛り上げたいと思って始めた」という言葉を聞いただけで納得し、深めることができませんでした。
    主人公の豊かな言葉と熱い思いのおかげで放送を出すことはできましたが、「なぜ街を盛り上げたいと思ったのか、名古屋がどう見えているのか」と質問して話を掘り下げれば、思いの核心を表す言葉が聞けたはずです。

  • そのほかに、印象に残っているアドバイスはありますか?

    「インタビューをする前に質問を100考えろ」という言葉です。私は、実際に質問を考えてみて、100考えることが目的ではないことに気がつきました。
    たくさんの質問を考えているうちに、本当に聞きたいこと、聞かなければならないことが浮き彫りになってくることが分かったんです。

  • 2局目の福井放送局ではどんなことを学びましたか?

    視聴者が楽しみにしているのは番組だということです。
    公開放送を担当していて、収録前に会場を盛り上げようと練りに練った話をしていたんですが・・・、これが受けない(笑)。

  • ところが、ある時、「これからの収録が私自身も楽しみで楽しみで、というのはこういう理由で」といった自己紹介のようなたわいない話をしたところ、会場が温かい雰囲気になったんです。それは、私がどんなアナウンサーなのか知って頂き、私自身を番組の一部としてとらえて頂けたからだと思います。みなさんが楽しみにしているのは「私の話」ではなく「番組」なのだと、改めて気づきました。
    番組を楽しみにしてくださるみなさんに、その面白さを伝えようと考えるようになってから、放送にのぞむときに、余計な力が入らなくなりました。

7/16
ラジオは古くて、新しい。
  • 担当しているEテレ『あしたも晴れ!人生レシピ』はどんな番組ですか?

    人生100年時代と言われる中で、50代以降の方々に、これからの人生をより豊かにするためのヒントをお届けする番組です。賀来千香子さんと一緒に、年齢を重ねてくるとどうしても気になる病気やお金、ファッションのことまで、幅広いテーマを扱っています。
    ゲストは、新しいことに挑戦している方や逆境を乗り越えてきた方など様々で、どんなにつらいことがあっても、考え方や行動しだいで人生が豊かになることを教えてくれます。そういう意味では、30代、40代の方々にも見ていただきたいと思っています。

  • ラジオで土日の『マイあさ』も担当していますね。

    私は、ラジオは古くて新しいメディアだと思っています。放送で紹介するメールやファックスを通して、リスナー間の意見交換がはじまることがありますが、これって、SNSのようだと思いませんか。ラジオはそのようなことを昔からやっているんです。

  • ラジオがSNSですか?

    たとえば、今年5月5日の放送でのことです。「かしわ餅にはつぶあんか、こしあんか?」というお便りを紹介し、「リスナーのみなさんはどちらですか?」と聞いたんです。すると、メールやファックスが次々と届き、中には「いやいや、みそあんでしょう!」という意見も。結局その「あん問題」で3時間の番組がさらに盛り上がったんです(笑)。

  • 結局、つぶあんとこしあんは、どちらが勝ちましたか?

    つぶあん24票、こしあん21票。つぶあんが接戦を制しました!途中からみそあんが参戦し、構図が大きく変わったことが影響したかもしれません。みそあんは13票。善戦ですよね。なんとなく、SNSの盛り上がり方のようではありませんか(笑)。
    スタジオを介してリスナー同士がコミュニケーションをとれるところも、ラジオというメディアのおもしろさのひとつではないでしょうか。

7/22
目指すのは、よきインタビュアー。
  • 今後、担当してみたい番組はありますか?

    『NHK俳句』と『NHK短歌』の司会です。どちらかではなく、両方です!
    以前、番組で、短歌と俳句のコーナーを担当したことをきっかけに、好きになったんです。だから、今では、毎朝、短歌か俳句を詠んでいますよ(笑)。

  • では、どんなアナウンサーでありたいと考えていますか?

    よきインタビュアーです。主人公が喜んでいる時、怒っている時、悲しんでいる時、苦悩している時、情熱をたぎらせている時、会話をともにして、質問をし、言葉を導き出せるアナウンサーでありたいと思っています。
    いまや誰もが自分の言葉をネットに乗せて発信できる時代ですが、言葉は、聞き手が介在することで深化し、核心に近づく、メッセージがはっきりするということがあります。日常でも、人に話しているうちに頭の中が整理されたという経験はだれにもあることですよね。話を聞かせて頂く、教えて頂くという姿勢はもちろん大切にした上で、インタビューを終えた時には、主人公も新たな真実に気付いている、そんな質問のできるアナウンサーでありたいです。

  • インタビューにはどんな魅力がありますか?

    技術が進歩し社会が変化して、生き方や価値観がどんどん多様化していく中で、人間が求め続けることは何だろうと考えると、やはり感動することではないかと思います。そして、言葉には、人々を感動させる力があると信じています。
    これまでインタビューを重ねてきて、心が震える言葉が生まれる多くの場合、その直前には間があることを実感しています。主人公が言葉を紡ぐ間です。つまり、感動を生む多くの言葉は、その時その場で生まれるのです。言葉が紡ぎ出される瞬間に立ち会い、視聴者・リスナーのみなさんの元へ送り出すことができる、それがインタビューの魅力だと感じています。
    感動を届けるため、私自身も見識を磨き、心を柔らかく保ち、考え続けていきたいと思います。

  • ありがとうございました。

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