NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 瀧川剛史

最終走者として、情報を届ける。
10/07
世界を旅した学生時代。
  • 子どものころ、どんな夢を持っていましたか?

    幼いころ憧れていたのはプロ野球選手です。
    小学校では少年野球、中学校ではシニアリーグでプレーしました。
    中学生の時に阪神・淡路大震災があって、テレビでアナウンサーがリポートしているのを見て、『こういう仕事をしてみたい!』と思うようになりました。私が住んでいた奈良でも大きな揺れを感じて怖い思いをしたので、被災地の状況や役立つ情報を伝えてくれるアナウンサーがとても頼もしい存在に思えたんです。
    中学の卒業文集には『将来はアナウンサーになりたい』と書いていました。

  • アナウンサーになるために取り組んだことはありますか?

    話すことに苦手意識があったので、大学でアナウンス研究会に入りました。そこでは、原稿を読むほか、野球実況やリポート制作などもしていましたが、会全体の運営に携わったことが大きかったです。会員が150人近くいて、練習の年間計画を考えたり、合宿や学園祭の企画を立てたりすることに仲間と打ち込んでいました。
    いまも大規模な放送ほど、チームワークで臨む習慣がついています。

  • 大学では研究会の活動一色だったんですか?

    研究会にはかなりの時間を使いましたが、海外への関心も年々強くなりました。アメリカの大学に短期留学したほか、韓国の大学とも交流して、何度も行き来しては、学生と議論を交わしました。
    一人旅にも熱中して、20か国くらい回ったと思います。アメリカを電車で東から西まで横断したり、ヨーロッパをぐるりと一周したり・・・知らない世界をもっと知りたいと、アルバイトをしては長期旅行に出かけていました。

  • そうした経験は、今の仕事にどう役立っていますか?

    今の仕事で一番大切なのは、想像することだと思っています。カメラの向こうにいる視聴者、取材相手の思いや現場の状況をどれだけ想像できるかで、私たちの表現は変わってきます。
    世界を旅していろいろな価値観をもった人たちと接して、想像力の幅が広がったことは、今に生きていると思っています。

10/15
想像力を働かせて伝える。
  • 初任地の京都にはどんな思い出がありますか?

    はじめてテレビのリポートを作ったとき、スタジオでのプレゼンテーションがあまりにも下手だったことです。取材に力を入れ過ぎて、その内容をわかりやすく伝えるという、アナウンサーとして最も大事なところがおろそかになっていたんです。上司からは、プレゼンの練習が足りないと指摘されました。
    その後、コメントを整理してプレゼンする練習を何度もしました。
    このとき学んだプロ意識は、今の私のベースになっていると思います。

  • 2局目の沖縄ではどんな経験をしましたか。

    今振り返ると、沖縄への赴任は自分にとっての転機というか、報道の仕事に向き合う姿勢を決めたような気がします。
    沖縄が抱えている問題や課題については、本などで学んでいましたが、実際に住みながら基地問題を取材し、戦争を体験した方々に話を聞くほどに、何も知らなかったということに気づかされました。同時に、私たちは何ために取材し、伝えるのか、徹底的に考えるようになりました。
    報道の仕事を突き詰めてみたいと思うようになったのは、沖縄時代の経験が大きかったような気がします。

  • そのほかには沖縄でどんなことを学びましたか?

    先輩のアナウンサーから、ニュースの伝え方や取材の仕方など様々なことを教わりました。
    特に印象に残っているのは、どれくらい現場を想像して原稿を読んでいるかということ。たとえば「石垣島で子どもが田植えを体験しました」という原稿で、田んぼの様子、子どもたちが足を入れたときの泥の感触などを思い描きながら読んでいるか。そういう原稿のバックボーンを想像することの大切さを学びました。そのニュースに込められた喜怒哀楽まで表現できるか?それによって、伝わり方は大きく違ってくると思います。

10/21
視聴者の感覚を大切に。
  • 今年4月から『ニュース7』を担当していますね。

    1日のニュースを30分に凝縮して伝えています。『ニュース7』は、国内外の現場で数多くの人たちが懸命に取材し、制作者も少しでもいい放送を出したいと、ギリギリまで粘って作り上げるニュース番組です。キャスターとして、最後に手渡されるバトンの重さを毎日感じています。

  • 担当して半年、振り返ってみていかがですか?

    4月1日の担当初日は『令和』発表の日だったので、午前中は特設ニュースで官房長官が発表する瞬間をお伝えして、夜に『ニュース7』というハードなスタートでした。その後も、統一地方選挙、参議院選挙・・・めまぐるしい日々です。ただその中で、昨日より今日、今日より明日、より良い番組にしたいという気持ちでいます。

  • 日々の放送で大切にしていることは何ですか?

    視聴者の感覚です。たとえば、視聴者の関心はどこにあるのか?はじめてそのニュースを聞いた人にもわかる表現か?など、視聴者の立場で意見を言うようにしています。
    番組のコンセプトは「一歩先へ、一歩深く」です。数多くのニュース番組があるなかで、「ニュース7」を見てもらえるように、本番直前まで議論を交わしています。

  • スタジオでは、どんなことを心がけていますか?

    今伝えるべきことは何かを、冷静に判断することです。たとえば大きな災害が発生し、さらに被害が広がる恐れがある時に、命を守るための情報や呼びかけが大切です。しかし、次々と入ってくる情報を右から左に伝えることだけに必死になっていると、その大切なことが見えなくなります。
    そのため、私はカメラに向かいながら、離れたところから冷静に見ているもう1人の自分を意識するようにしています。現場を想像し、冷静に放送に向き合えているか。スタジオにいても、世の中にあふれる課題、人々の悩みや苦しみときちんと気持ちがつながっているか。
    これは私がニュースを担当する上で、常に意識していることです。

10/28
放送の最終走者として。
  • 休みの日はどうやってリフレッシュしていますか?

    ジムのプールで泳ぐことと、子どもたちと遊ぶことです。
    平日はニュースセンターにいることが多いので、休みの日はなるべく体を動かすようにしています。
    子どもたちには読み聞かせもしています。ナレーションも好きなので、感情を込めて本気で読んでいます(笑)。

  • 今後担当してみたい番組はありますか?

    今は、『ニュース7』に全力投球することで頭がいっぱいなので、次の仕事を考える余裕はないというのが正直なところです。
    でも、常に自分自身がプロフェッショナルとして役割を果たせる存在でいたいと思っています。これからも報道を中心に、どんな番組でも公共メディアとして求められる仕事、視聴者のみなさんの役に立つ仕事ができたらいいですね。

  • アナウンサーとしてのやりがいを感じるのはどんなときですか?

    多くのスタッフが時間を積み重ねて取材してきた情報や映像で報道番組は作られています。アナウンサーは視聴者目線で取材や制作に関わりながら、自分の身体を通して情報を視聴者に届ける最終走者です。
    同じ情報でも、伝え方によって視聴者の受け止めは変わることもあります。
    情報の最終伝達者としてバトンを受け取り、いま伝えるべきことを最もわかりやすい形で視聴者に届ける。それが一番のやりがいだと思います。

    ありがとうございました。


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