NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 合原明子

感受性と客観性を大切に
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現場の空気感を切り取りたい。
  • 『クローズアップ現代+』の見どころを紹介してください。

    「社会のいまに正面から向き合い、世の中の関心に応える」ことを目指しています。例えば、最近では相続、幼保無償化、近視、災害、性暴力などのテーマを取り上げました。「30分一本勝負」の意識で、1回の放送を通して可能な限り様々な発見や気づきがあるよう、総力を挙げて取材制作しています。

  • リポーターとして、どんなことを目指していますか?

    取材で現場の空気感を切り取ることです。そうすることで、視聴者に現場を追体験してもらえるようなリポートにできると考えています。
    例えば、去年、3回にわたって香港にデモの取材に行った時のことです。
    6月と8月、そして10月に香港に行って、20代の男性に話を聞いたのですが、会うたびに様子が変わっていました。6月に会ったときは「デモに参加し、香港の中国化への不安について平和的に訴えていく」と決意を語りましたが、8月にインタビューすると、周囲を警戒し、答えたくないということでした。そして、10月の取材では「デモの次は選挙という方法で戦うんだ」と話していました。
    デモに参加している人の心は、数か月の間に、大きく揺れ動いている。
    これは、実際に現地に行って生の声を聞かなければ伝えられなかったことだと思います。

  • そのためにどんなことを心がけていますか?

    先入観をもたず、自分が感じた素朴な疑問を大事にすることにしています。
    「現場で新しい気づきを見つける」という意識で臨むことで、小さな疑問が大きな発見につながることもあるのではないでしょうか。

  • 『所さん!大変ですよ』の司会も担当していますね。

    世の中に起きている小さいけれど不思議な現象を掘り下げていくことで、今の時代の意外な一面を発見していく番組です。例えば「売り上げ急増!?カニカマ大人気の謎」。今や日本だけではなく、世界中で大人気である理由や、カニカマが実は「人工クラゲを作る過程で誕生した副産物」という秘話をお伝えしました。

  • 番組に加わった当初はとても緊張していたのですが、所ジョージさんが「とにかく楽しめばいいんだよ」と話しかけてくださり、私もだんだんリラックスできるようになりました。「肩の力を抜くことで作り出せる空気がある」ということを所さんから学びました。
    私の役割は番組を進行することです。所さんや木村佳乃さんがテーマに対してさらに興味がわくように話を聞くことを心がけています。
    スタジオでは話がどんどん盛り上がるので、要所要所で番組の進行に戻すことも大切な役割です。でも、そのタイミングの見極めは難しいですね。みなさんの言葉とあわせて、息を継ぐ一瞬も耳をそばだてて聞いています!

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取材して、自分の声で伝えたい。
  • どんな学生時代を過ごしましたか?

    中学と高校では演劇部に入っていました。演じるだけでなく、衣装、照明、音響効果、舞台装置などをみんなで作り上げていくことがおもしろくて、夢中になっていました。 また、演じる上では、台本に書かれているセリフを覚えて話すだけでは、 演じる役の気持ちが見ている人に届かないと思っていました。書かれている 文字の意味をどれだけ理解して生きた言葉にするかが大切だと。 それは、今の仕事につながっているかもしれませんね。

  • 大学生のころにはどんな思い出がありますか?

    大学2年のときにスペインに旅行に行って、スペインの人たちの明るさや、人懐っこさに驚いたことを覚えています。 それで、3年生のときに10か月間留学することにしたんです。スペインでは、はじめは言葉の壁もあって、なかなか馴染めず、どうしようかと思い悩みました。でも、それは自分が壁を作っているからではないかと考え、せっかくスペインにいるのだから1日1日を楽しもうと気持ちを切り替えたんです。そうしたら、出会いもどんどん広がって友人もたくさんできました。 自分の気持ちや考え方しだいで、状況はガラリと変わるんですよね。そのことを身をもって知ったことは、とても大きかったように思います。

  • アナウンサーを志望したきっかけは何ですか?

    大学で受けたドキュメンタリー映画の授業です。物事を、いろいろな視点、切り口で見ることで、それまで見えなかったもの、わからなかったことが浮き彫りになることに心を動かされました。 その授業がきっかけで、取材ができるマスコミで働いてみたいと思うようになりました。そして、中学、高校と演劇部だったこともあり、自分が取材したことを自分の声で伝えるアナウンサーになりたいと思うようになったんです。

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福島で学んだこと。
  • 初任地の福島で2年目に東日本大震災が発生しました。
    その時はどこにいましたか?

    2011年3月11日の午後、福島局の自席でパソコンに向かっていたら、急に激しい揺れがありました。椅子に座っていられないほどの揺れです。局内に地震を知らせるサイレンが鳴り響くなか、自分自身に「落ち着け!落ち着け!」と言い聞かせるのですが、手の震えが止まりませんでした。
    そのとき「誰か中継に行ける人は?」という上司の大きな声が聞こえて手をあげ、沿岸部のいわき市へ向かいました。
    いわき市の高台に到着したのは午後6時ごろで、あたりはもう真っ暗でした。海の方向に目を向けると、月明かりで水面が光っているように見えたのですが、よく見ると、そこは浸水した市街地だったんです。
    被害の甚大さに衝撃を受けたことを覚えています。

  • そこからどんな放送をしたのですか?

    『ニュース7』で電話リポートをしました。その高台にどれくらいの人が避難していて、必要なものは何か、みなさんがどんな思いでいるのかを取材してリポートしました。
    被災して不安を抱えている人たちから話を聞くことには気が引けましたが、みなさんが何に困っていて、何が必要なのかを全国に伝えなければならないという思いで取材をしました。

  • それ以降、被災地の取材を続けていく中で、どんなことを学びましたか?

    被災地を取材するたび、私は、その被害の大きさに胸が張り裂けそうな思いになっていました。そんなあるとき、上司から「物事に対する感受性は大切だけど、一方で事実を客観的に捉える心も必要だ」と言われたんです。
    その言葉にハッとさせられて、「何かを感じる心も大事だけど、その事実と冷静に向き合う強い気持ちも大切だ」と、取材者としての意識が変わりました。

  • 現在は『福島をずっと見ているTV』を担当していますね。

    震災当時から続いている番組で、福島で頑張っている人たちを継続的に追っていくことで、福島が変わっていく様子をみんなで共有しようという番組です。震災当時のイメージのままで止まってしまっている人たちの時計の針が進めばいいなと思っています。
    番組を通して今の福島を知っていただき「今度遊びに行ってみようか、何か特産品を買ってみようか」と思うきっかけになればいいなと思っています。

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想像力を大切にしたい。
  • 趣味はありますか?

    小さいころから焼き物を見ることが好きです。作られた時代によって土の色などが違うので、図鑑を見て楽しんでいます。
    休日には骨董屋さんを巡って、目の保養をすることもあります。

  • その他にはどんなことに興味がありますか?

    生け花です。花器も好きなので、花と花器の美しさで、どんなことが表現できるのか、想像するだけでワクワクしますね。

  • 今後、担当してみたい番組はありますか?

    焼き物もそうですが、美術が好きなので、美術番組の司会やナレーションを担当できたらうれしいですね。
    また、最近はラジオをよく聴くので、ラジオ番組にもチャレンジしてみたいです。リスナーとの距離がとても近いメディアだと思うし、声だけで、いろいろなことを想像してもらいながら伝えるので、やりがいがあると思います。

  • アナウンサーとしてどんなことを大切にしていますか?

    想像力です。アナウンサーは「人」と向き合う仕事だと思っています。
    現在、取材、ナレーション、司会など様々な仕事を担当していますが、相手の気持ちを想像することは、どの業務にも必要不可欠だと思います。
    また、アナウンサー1人で完了する仕事はありません。
    ディレクター、記者、カメラマン、編集マンなど、様々な役割の人たちと、放送という1つの最終目標に向けたチームプレーが大切です。
    1人よがりにならずに、他の人の気持ちを常に想像し行動することが、より「伝わる」放送につながると信じています。

    ありがとうございました。


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