NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 中野淳

誰もが生きやすい社会のために。
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生きづらさについて考える。
  • Eテレの『ハートネットTV』を紹介してください。

    障害や疾患、LGBT、虐待、不登校などで生きづらさを感じている人たちの声に耳を傾け、SNSとも連動して、いろいろな意見を集めて一緒に解決法を探っていく番組です。

  • ドキュメントを放送することもありますね。

    例えば、3月には、トランスジェンダーの父親とそのパートナーである母親、そして2人に精子を提供したゲイの親友の子育てに密着した番組を放送しました。
    取材を通して、私自身も、「家族って何だろう?」、「親って何だろう?」と改めて考えさせられましたね。

  • 『ハートネットTV』を担当して4年目になりますが、キャスターとしてどんなことを心がけていますか?

    「寄り添う」という言葉は出来るだけ使わないようにしています。
    「寄り添う」というのは「こちらから歩み寄る」ことだと思うので、どうしても、困っている人や悩みを抱えている人を「助けてあげる」、「支援してあげる」という一方的なニュアンスを感じてしまうんです。
    様々な悩みを抱えている人がいて、その中には自分にあてはまるものもあるのではないでしょうか。誰にでも、弱さやこだわり、特性があります。だから、突き詰めれば、誰もが生きづらさを抱える「当事者」だと思います。
    『ハートネットTV』を担当して、他者の声に耳を傾けて自分のこととして考えていくことが、一人一人の生きづらさを解消して世の中を変えていく一歩になると感じるようになりました。

5/11
カンボジアの支援活動で学んだこと。
  • 少年時代に夢中になっていたことはありますか?

    小学生のころから陸上競技に打ち込んでいました。陸上は、練習すれば記録が伸びて努力が報われるのが楽しかったんです。
    夢は、箱根駅伝に出場することでした。
    中学と高校では陸上部に入り、駅伝の強い大学に進学しました。でも、思った以上にレベルが高くて・・・。1年の終わりに、悩んだ末、退部届けを出したんです。残念ながら夢をかなえることはできませんでした。

  • その後はどんな学生生活を送ったのですか?

    国際協力に興味があったので、カンボジアの孤児院を支援するNGO に入りました。大学生が運営していて、定期的に物資を持って孤児院を訪ねたり、現地で英語の先生を雇う資金を集めるために日本でチャリティーコンサートを開催したりしていました。

  • 活動を通してどんなことを感じましたか?

    はじめは孤児院の人たちを「助けたい」とか「支えたい」という気持ちでした。でも、交流する中で、「支える人」と「支えられる人」という関係ではいけないのだと気づきました。そういう関係でいたら、いつまでも心に見えない壁を作ることになってしまうと。だから、シンプルに、困っている友だちがいるから助けたいと考えるようになったんです。
    そして、活動を続けるうちに、カンボジアに限らず、世界各地の現状をたくさんの人に知ってもらいたいと思うようになり、マスコミの仕事を志望しました。

5/18
沖縄での新人時代。
  • 新人の頃にはどんな思い出がありますか?

    アクセントとイントネーションに本当に苦労しました。当時はまだ、ふるさと福島のイントネーションの影響が強かったんです。

  • それはどのように克服したのですか?

    自分が読んだニュースの映像や音声を何度も再生して、先輩から指導されたことをノートに書き込んで、繰り返し練習しました。陸上もそうですが近道はないので、人よりペースは遅くても一歩一歩やっていく。それしかなかったですね。

  • 特に印象に残っているのはどんな番組ですか?

    ホームレスの人たちに密着した30分のドキュメント番組です。
    リーマンショックの後、失業者や路上生活者に仕事を提供して支援しようという那覇市の取り組みを取材しました。仕事は、沖縄戦の遺骨や遺品の収集です。番組では、取り組みを通して、路上生活をしている人たちがどう変わっていくかを伝えました。

  • 取材では、どんな苦労がありましたか?

    路上生活をしている人たちと、信頼関係をどう築いていけばいいのかわからなくて悩みました。だから、とにかく、彼らが暮らすテントに何度も通いました。そして、たわいもない会話からはじめて、缶拾いについて行くなどして、少しずつ取材に応じてもらえるようになったんです。
    この番組制作で経験したことは、今の私の原点になっていると思っています。

5/25
パラスポーツが大好きです。
  • 趣味は何ですか?

    パラスポーツのことを考えない日はない、というくらいパラスポーツにハマっています。

  • どんな競技が好きですか?

    陸上、競泳、車いすバスケ、ボッチャ、視覚障害者柔道など、あらゆる競技を見ています。
    休日には家族と見に行くこともありますし、選手のSNSや競技団体のホームページを毎日チェックして情報収集もしています。

  • パラスポーツのどんなところに魅力を感じていますか?

    選手たちが個性を生かして戦っているところです。
    障害は人それぞれ違うので、選手たちは、自分の力を最大限引き出すために体の使い方や用具を工夫して、独自のスタイルを作り上げています。選手たちがどんなスタイルで戦っているのか、そこが一番の見どころかもしれませんね。 東京パラリンピックは延期になりましたが、これからもパラスポーツや選手の魅力を伝え続けていきたいです。

  • 最後に、どんなアナウンサーを目指していますか?

    声を上げたくても上げられない人の声に耳を傾けて、発信していきたいですね。だから、もっと取材をして、それを伝えるための言葉も磨かなければいけません。
    誰かの小さいけれど切実な声を、世の中を変えていく大きな声にできるようになりたいと思っています。

    ありがとうございました。


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