NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 中山果奈

人の役に立つアナウンサーに。
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ニュースや情報を、みなさんの生活の中へ。
  • 『おはよう日本』はどのような番組ですか?

    朝、玄関から出る前に、前日の夜までに起こった出来事をわかりやすく知ってもらえるようにお伝えしています。また、「まちかど情報室」のコーナーをはじめとする、日々の暮らしに役立つ生活情報もお届けしている番組です。

  • キャスターとして心がけていることは?

    みなさん朝は忙しくて、音声だけで聞いている方も多いと思うので、いつもよりは話すスピードを落として、音声だけでも伝わるようにハキハキと話すよう心がけています。そして「今日も1日頑張っていきましょう」という気持ちをみなさんと共有できればいいなと思っています。

  • 朝の番組では、その日の天気は大切ですね。

    気象予報士との掛け合いもあるので、そこでよりわかりやすくお届けするようにしています。新人のころの話になりますが、当時の上司から「気象情報はすべての基本。これを工夫できないと何もできない」と教わりました。

  • それは具対的にどういうことですか?

    たとえば、今日の最高気温は20度で、前日より7度低い場合に、「風邪をひかないように上着があったほうがいいでしょう」など一言添えられるかどうかです。気温という数字を、生活の中に落とし込んで表現する。これは、気象情報に限らず、ニュースでも同じです。『おはよう日本』では自分なりのコメントをひと言添えることで、そのニュースや情報をより身近なものに感じてもらえるように心がけています。

  • 『ダーウィンが来た』も担当していますね。

    世界中の生き物に密着して、その驚きと感動の物語や生態を紹介する番組で、ナレーションを担当しています。番組では、視聴者の代表として驚いたり、感動したりする場面と、プレゼンターとして解説する場面とがあるので、その役割の転換が担当していておもしろいところであり、難しいところでもあります。

  • ナレーションで気をつけていることは?

    距離感です。たとえば、最近は新型コロナウイルスに関する番組のナレーションを担当することがありますが、そのときは冷静に、客観的にナレーションするようにしています。感情を入れ過ぎると、情報に色がついてしまい、恐怖を必要以上にあおることになる場合もあります。
    一方、楽しい番組では感情豊かに話したほうが伝わりやすいこともあります。その距離感は、事前に自分なりの戦略を立てて臨むのですが、まだまだ未熟で反省することも多いですね。

9/14
思いを伝える方法は、言葉だけじゃない
  • アナウンサーに興味をもったきっかけは?

    大学のときにNHKでアルバイトをしたのがきっかけです。番組は、耳の聞こえない方に向けた、Eテレの「手話ニュース」。視聴者にとってどの表現が一番分かりやすいか、手話の1つ1つ、字幕の一言一句をギリギリまで議論しているスタッフの皆さんの姿を間近で見ていて、放送に関わりたいと思うようになりました。

  • そのときの経験は今も役立っていますか?

    NHKは、わかりやすさ、伝わりやすさを最後まで追求できる場所だと感じました。今でも、自分が理解できていないことはカメラの前で話さないようにしていますし、「わかりやすさ」のための努力は最後まであきらめてはいけない!そういう姿勢を『手話ニュース』の皆さんから学びました。

  • アルバイトのとき、手話はできていたのですか?

    中学生のときに手話に興味をもって、ずっと独学で勉強していました。高校生のとき、音のない世界はどういうものか学ぶ総合学習で、はじめてろう者の方に手話で話したとき、ちゃんと伝わったんです!そのときの喜びが忘れられず、大学でも手話サークルに入っていたので、ある程度はできていました。

  • 手話の魅力は?

    表情です!顔の表情がとても大事で、手の動きだけだと疑問形に見えなくても、顔の動きを加えると疑問形になったり、感情の幅も表情で変わったりします。ふだん使っていない顔の筋肉を動かして、表情豊かに会話するのが手話で、そこが魅力だと思っています。

  • コミュニケーションでの表情の大切さとは?

    『おはよう日本』で、店員の8割が聴覚障害のある方、という店をオープンさせた大手コーヒーチェーンを取材しました。注文の際は、手話やメニューの指差し、筆談などでやりとりをします。手話は目で見る言語なので、目が合っている時間が長い。その分、店員さんの笑顔がとても印象に残るんです。そして何より、「私はあなたのことを大切に思っています」という気持ちが伝わってきました。その取材を通して、人の表情や笑顔は時に言葉以上のことを伝えられるのだと改めて実感しました。

9/23
命を救う一助になれる放送を。
  • 新人のころに苦労したことは?

    カメラの前に立つと緊張して、手話で培ったはずの表情がまったく出せませんでした。ずっと眉間にシワが寄っていて、当時の局長から「日本一暗いアナウンサーだ」と言われたほどです(笑)。

  • それはどうやって克服しましたか?

    自分が失敗したくない、間違えたくない、という意識が強いから緊張するのだと考えました。自分のためではなく、視聴者の方々のために伝えようと意識を変えたころから、少しずつ緊張がやわらいできました。

  • 松江時代、広島時代で印象に残っている仕事は?

    広島放送局で、被爆者の方を取材し、ラジオ番組を作りました。13歳・中学1年生のときに被爆した方で、当時84歳の女性でしたが、それまであまり被爆のことは話されてこなかった。それでも、後世に伝えるべきだと、息子さんと一緒に取材に応じてくださいました。

  • その女性はなぜ被爆体験をあまり話さなかったのですか?

    原爆投下直前、女性は空を飛ぶ飛行機を見つけ、「飛行機だ」と叫びました。それを女学校の同級生と見上げた瞬間、原爆がさく裂。多くの友人たちが顔をやけどする中、女性は手をかざしていたため、左腕に大やけどを負ったものの、顔にはあまり傷が残りませんでした。13歳の少女たちにとって、顔をやけどすることは言葉では言い尽くせないほどつらいこと。女性はそれが自分のせいだと思い、口を閉ざしてきたのです。被爆者の多くが飛行機を目撃したことを証言しているので、決して女性のせいではないのですが、その時の記憶に、被爆から70年が経っても苦しめられている…被爆は身体だけでなく、心にも傷を負わせるということを改めて深く学びました。

  • その番組で工夫したこと、大切にしたことは?

    ラジオを聴いている人たちにわかりやすく、より心に響くように伝えるにはどうすればいいのかを考えました。女性の思いをできるだけ多くの人たちに届けるのが私たちの使命です。そこで、女性の体験と、それを丁寧に聞き取る息子さんの気持ちを、俳優の樹木希林さんと本木雅弘さんに朗読してもらうことにしました。演出という形で、より言葉が届く方法を追求する。そのこともこの仕事で学びました。

  • 自分の転機となるような仕事はありますか?

    これも広島放送局でのことですが、赴任3年目に西日本豪雨がありました。大雨の特別警報が出た夜、私は局にいたので、ニュースを担当。ものすごい量の雨が降っているのはわかっていましたが、夜中だったので被害の状況は詳しく把握できませんでした。「避難してください。命を守る行動をとってください」と注意喚起をしましたが、夜が明けて実際の被害状況を見て、私はがく然としました。

  • 想像以上に被害が大きかった。

    はい。自分の想像をはるかに超えていました。そのことを先読みして呼びかけられなかったことが悔しくて、ふるさとであるだけに悲しかったです。以来、誰かの命を救う一助になる放送ができるようになりたいと思うようになりました。緊急報道ができるキャスターになりたい。その夢を今も追いかけています。

9/28
誰かのためにできることを全力で。
  • 今の楽しみは何ですか?

    お笑い芸人さんのラジオを聴くのが好きです(笑)。最初は、トークの勉強のつもりで聴いていましたが、いつしか勉強そっちのけで楽しんでいます。

  • 熱中していることや趣味はありますか?

    強いて言えば料理や読書ですが、これと言った趣味はなくて・・・。でも、世の中には私のように特別な趣味がない方もいると思うので、そういう方たちの気持ちがわかる代表になれればいいかなと思っています。(笑)

  • アナウンサー志望の人にアドバイスを。

    「人の役に立ちたい」という思いが一番大事だと私は考えています。アナウンスの技術は入局してからでも磨けるので・・・。視聴者のみなさんと同じ視点に立って疑問を投げかけたり、同じ感覚で世の中の出来事を捉えたりするのがアナウンサーの役目だと思っています。華やかさを求めるのではなく、誰かのためを思って、ひたむきに努力できる人に向いている仕事だと思います。

  • アナウンサーとして大切にしていることは?

    わかったふり、わかったつもりは、絶対にしない。理解できないことはとことん聞いたり、調べたりして納得できるまでは放送に出さない。この姿勢はずっと変えたくないと思っています。
    『おはよう日本』は、準備の時間が短いのですが、それでも本番直前まで粘って自分がわからないことを無くすようにしています。自分が理解していれば、「この表現はこっちのほうがわかりやすいのではないですか」と提案することもできますから。

  • 今後やってみたい仕事や目標は?

    緊急報道で、1人でも多くの人に、命を守る行動を促せるアナウンサーになりたいと思っています。映像で見えているものを描写するだけでなく、その先を想像して「次はこの場所に、こういう危険が迫っています」と伝えるのがアナウンサーの仕事です。

  • そのために大切なことは?

    危険な状況にある、またはこれからなるかもしれない人たちへ、“届く”言葉で訴えかけることです。ただ「警戒してください。避難してください」と繰り返しても聞き流されてしまう。そのときの状況に合わせて、人の心を動かす言葉、行動につながる言葉を発することが大切だと思います。そこにチャレンジしていきたい。それができてはじめて、自分がずっと目標としている、「人に役立つアナウンサー」になれるのだと思います。


    ありがとうございました。

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