NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 松田利仁亜

生放送で勝負したい。
11/2
想定外のことが起こるから、おもしろい。
  • 担当している『首都圏情報 ネタドリ!』について教えてください。

    首都圏の気になるニュースの真相や本音に迫る生放送番組です。取り上げる話題は本当に多岐にわたっていて、人気のスイーツやネット婚活から、地震への備えやガンになった方をどう看とるかなどなど、現代人や首都圏に密着したニュース、ネタを幅広く取り上げています。
    同じくキャスターである高橋みなみさんと岡田結実さんが視聴者の代表として番組を盛り上げてくれています。

  • 番組の見どころやおもしろさは?

    生放送ならではのおもしろさがあると思います。高橋みなみさんと岡田結実さんは打ち合わせはしていますが、リハーサルには参加しません。本番で「気になったことをどんどん質問してください」というスタンス。お招きする芸能人のゲストの方も同じです。ですから、本番でどんな質問が飛び出すかわからないんです。
    僕は専門家の先生を交えて、どのような話をするかを打ち合わせして、ある程度番組の流れを想定していますが、思いもよらない質問や意見が出てくることも多々あります。想定通り、台本通りにいかないのが生放送のおもしろさだと思います。

  • 『チョイス@病気になったとき』について教えてください。

    国内の第一線で活躍されている専門家の先生に来ていただき、医療の最新情報をはじめ、病気になったときの治療法には今はどのようなものがあるのか、その選択肢を紹介しています。また、予防から早期発見、日ごろの対策法などもお伝えしています。
    病気がテーマですが、司会の八嶋智人さんと大和田美帆さんが、明るくわかりやすく伝えてくれるので、年齢性別を問わず幅広い方に見てほしいと思います。僕も40歳を過ぎて、いろいろ気になることがあるので、この番組の担当になって知識を蓄えることができて助かっています。

  • 『0655』ではナレーションを担当しています。

    Eテレで月曜から金曜日のあさ6時55分から7時までの5分間放送している短い番組ですが、その日1日を元気にはじめてもらいたいと思いながらやっています。
    通常のナレーションより短いせいか、ディレクターからの注文は多いような気がします(笑)。作品性の高い番組なので、制作陣たちのこだわりも強いのだと思います。微妙なニュアンスも含め、アナウンサーとしてどんな表現がきるかを試されている感じです。

  • 学生時代はスポーツアナウンサーになりたかったそうですが?

    そうなんですが、スポーツ実況は本当に難しくて、僕の場合は技術不足でその夢はあきらめました。でも、友人たちとサッカー観戦に行ったときは、ひとりでボソボソ言いながら実況しています(笑)。友人たちは聞こえないふりをしてくれていると思っています。

11/9
放送という仕事の重責と大切さを実感。
  • 学生時代の思い出を教えてください。

    大学時代には旅行サークルに入っていました。本や映像での情報だけではなく、自分の五感でその土地の空気を感じたくて、いろいろな場所に旅行にいきました。

  • 特に印象に残っている場所はどこですか?

    当時は、お台場(東京)から鹿児島県の与論島、沖縄・那覇に向かう船が出ていて、それで与論島や沖縄に行きました。鹿児島の志布志港を経由して、奄美大島に寄って、与論島、沖縄本島へ約2日間かけて行くのですが、その旅が一番の思い出ですね。
    山形県出身の僕には南の島の日差しは想像以上に強くて、日焼けでひどい目にあったり、現地の方の言葉がわからずに苦労したり、実際に行ってみないとわからない体験をたくさんしました。

  • そのほか学生時代で印象的だったことは?

    高校3年生のとき行った長野の冬季オリンピックと、大学3年生のときに行ったシドニーオリンピックですね。これらの体験は、アナウンサーを目指すきっかけにもなりました。
    人種も言葉も違う人たちが、ひとつの空間で同じ演技やプレーを観て、一喜一憂し、最後には同じ感動を共有している。オリンピックって本当に人類の祭典だなと実感したし、自分を含めて世界各国の人たちとスポーツを通してつながっている。この感動を多くの人に伝えたいと思い、アナウンサーという仕事により興味を持つようになりました。

  • NHKでの面接のことは覚えていますか?

    何を話したかは覚えていませんが、待機室で担当の方に「すいません、そこの窓から外の景色を見ていいですか?」とお願いしたのは覚えています。そこはNHKの22階だったので、こんな高いところから渋谷の街を見下ろすチャンスは2度とないかもしれないと思って・・・。入局して20年目になりますが、まだ22階からの景色は見たことがないので、あのとき見ておいてよかったなと(笑)。

  • 学生のときにもっていたアナウンサーの印象は?

    NHKから内定をもらっていた大学4年のとき、沖縄に行ったのですがそのとき運悪く台風が沖縄に近づいていました。また、僕たちが到着したすぐあとに、アメリカで同時多発テロ(9.11)が起きました。テレビを見ていると、画面では迫り来る台風情報と9.11の情報が同時に流れ次々に更新されていました。
    自分がこれから携わろうとしている仕事の重責や大切さを、沖縄のホテルで缶詰になりながら実感したのを覚えています。

11/16
小さな自信を積み重ねて。
  • 新人のころに苦労したことは?

    もう、すべてです。自分に自信がなかったというのもありますが、何をやってもダメでした。今、当時のことを振り変えると、よく辞めなかったと思います。それくらい、何もかもうまくいきませんでした。
    でも、あきらめずやっていると、たまにですが「あの番組、良かったよ」と言われることがある。すると、それがうれしくて「次は、どんなことをやってみようか」と前向きになれました。

  • どんな番組が「いいね」と言われたのですか?

    当時、大分県に住民が150人ほどの小さな集落があって、その地域が村起こしのためにいろいろなイベントをやっていました。本当に魅力的な村で、そこの人たちもイキイキしている。そこで取材をさせてもらいながら、僕も畑を借りて大豆を育てたりして・・・。
    それをテレビのリポートやラジオ番組で生中継したりしました。すると「おもしろかったよ」と声をかけられることがあり、そういう積み重ねが自信になっていきました。また、いろいろな人に出会って、いろいろな話を聞いて、人それぞれいろいろな生き方があるのだなということもその取材で学びました。

  • 新人のころ、先輩や上司に言われた言葉で印象的なものは?

    大分時代に、当時の上司に「お前は変だ!」と言われました。そして、「でも、そのままでいい」と。自分のどこが変なのかわからなかったし、言ってもくれなかったのですが、何か背中を押してもらえたような気がしました。
    「お前は変だからダメだ」ではなく「お前は変だけど、それでいい」。自分に自信がもてないときに言われたので、何となくですが勇気付けられたのを今でも覚えています。ただ今でも自分のどこが変なのかわからないのですが・・・(笑)。

  • ほかにはどんなアドバイスがありましたか?

    秋田から最初に東京へ行くときに、ディレクターの先輩に「東京に行ってもうまくいかないことが多いだろう。でも、ダメ出しされて、ボコボコにされたあとが勝負だからな」と言われました。東京で仕事をすると、この言葉は予言のようでした。

  • 東京ではどんな番組を担当することになったのですか?

    『あさイチ』がスタートするときで、そのリポーターとして参加することになりました。やはり最初はうまくいかずダメ出しばかりでした。ダメだ、ダメだ、と言われつづけ、それでもちょっとずついろいろなことにトライしていたら、あるとき「いいね、良かったよ」と。
    自分は器用でも、要領がいいほうでもないので時間がかかりますが、もがき苦しんでいる先に、いつか光が見えてくる。その光が小さな自信になって、それを積み重ねて今の自分があるように思います。

11/24
いろんな仕事にチャレンジしたい。
  • 休日に楽しんでいる趣味は?

    サッカー、ラグビーなどのスポーツ観戦が趣味なのですが、今はコロナ禍でなかなか行けないですね。あとは、週に1、2度、家の周りを走ることと、料理かな・・・。
    走るのが好きなのは、その間集中して物事を考えたり、逆にボーとできるのがいいなと。そして何より、汗をかいたあとのビールです(笑)。
    料理は、段取りを考えるのが好きなんです。あと5分でこれができるから、それに合わせて何を準備しておけばいいかとか、先を読んだり、逆算したりするのが楽しい。味も大事ですけれど(笑)。

  • アナウンサーとして大切にしていることは?

    思っていないことは言わない。ちゃんと自分で調べて納得したこと以外は言わないということです。カメラの前に立つと、どうしても意識の底でカッコつけたり装ったりしがちですが、自分が感じたこと、考えたことをそのまま伝えようと思っています。いつだって、できる限りの準備をして、自信をもって語れる情報だけを伝える。そのことはずっと大切にしています。

  • 今後、やってみたい仕事や番組は?

    生放送に携わりたいと思っています。生放送は生き物です。いくらこちらが綿密な台本や構想を練っていても、想定外のことが起こるものです。でも、そこが、おもしろいし魅力だと思います。
    たとえばゲストから思わぬ発言が飛び出したとき、どう対応するか、どうフォローするか?そこで、アナウンサーとしての本当の実力が試されるような気がします。あのときのフォローの言葉はよくなかったなとか、あの間合いはもう少し取ったほうがよかった、と反省することは多々ありますが、それでも生放送にこれからも挑んでいきたいですね。

  • ほかにもやってみたいことはありますか?

    いろんなことにチャレンジしてみたのですが、ナレーションの仕事をもっとやってみたいですね。
    先日、NHKスペシャルのナレーションをはじめて担当しましたが、難しくてかなり悩みました。正解がひとつではないというのが難しいところかもしれません。でも、自分の声で作り上げた世界を届けることができるのは魅力だし、アナウンサーならではの仕事だとも思います。

  • 最後にアナウンサー志望の人にアドバイスを。

    NHKの場合、技術的なことは、研修期間に教えてもらえます。ですから今は、アナウンサーになるためにこれをやろうというより、いろいろな経験をして自分の幅を広げてほしいと思います。
    たくさんのことに好奇心をもって、さまざまなものの見方や、多様な考え方を養ってほしいですね。アナウンサーになったとき、それが必ず自分だけの武器になるはずです。

    ありがとうございました。

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