
日常的には、プロ野球のベンチリポーターとして、試合の途中で選手や監督の談話を伝えることを担当しています。
たまに『さわやか自然百景』や『Nスペ5min.』などの短いナレーションを担当したり・・・。冬には、フィギュアスケート関連の番組、NHK杯総集編などのナレーションもさせてもらっています。
NHKアナウンス室の中では、スポーツグループに所属していますが、去年のコロナ禍でスポーツがなかったときはニュース担当をしたこともありました。自分としては、いろいろなことにチャレンジしたいと思っていますが、軸はスポーツというのは変わらないと思います。
やはり、ワクワクするというのが一番の魅力だと思います。試合や競技が始まってみないと、本当に何が起こるかわからない。誰も想像していなかったドラマティックな結末が待っていることもよくあります。そこがスポーツの魅力であり、醍醐味だと思います。
あとは、「私も頑張ろう!」というポジティブな気持ちや勇気をもらえるところ。明るく前向きになれるニュースが少ない中、スポーツにはどんな競技でもプラス思考の熱気みたいなものが感じられます。たとえば、水泳の池江璃花子さんの復活と活躍には多くの人が勇気をもらったはずです。
もちろん応援しているチームや選手が負けて落ち込むこともありますが、「次がある!」と思わせてくれるのもスポーツのチカラだと思います。
スポーツもそうですが、それが行われる競技場が大好きでした。中学3年生のときにはじめて甲子園球場で高校野球を観戦したのですが、満員のスタンドは華やかで、グラウンドの緑の芝と土のコントラストは美しく、青空もより鮮やかに輝いているように見え、まるで別世界にいるようでした。
その後も、メジャーリーグやヨーロッパのサッカーを見に行きましたが、どのスタジアムも本当に魅力的でした。そして、観客の盛り上がりによってスタジアムの表情は生き物のようにどんどん変わっていきます。
スポーツ実況者は、そんな場所を仕事場にできます。私にとっては、この上なく楽しい職場です。
高校時代はボート部で、地元の琵琶湖で毎日ボートを漕いでいました。
大学では、アメリカンフットボール部のスタッフをやっていたのですが、私は授業と部活の両立がうまくできず、1年で退部しました。
ただその後も、アメリカンフットボールも仲間も大好きで、試合の応援にはよく行きました。
大学で募集があって参加しました。自動車整備士養成校の学生たちとチームを組んで、「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック2012」という大会に出場しました。
ヒストリック部門とは、簡単に言えばクラシックカーでのラリーです。30年以上前のレースに出場した車と同じ車種の古い車を見つけて、エンジンをオーバーホールしたり、劣化した部品を取り替えたりしてレースに耐えうるクルマに仕上げて参戦しました。
私たちの大学は主にマネージメントを担当し、その中で私は、部品や資金を調達するという役回りでした。カーレースに興味を持ってもらえそうな企業にアプローチして支援や部品の提供をお願いするんです。たくさん断られましたが、なんとか踏ん張って大会に出場できる資金や部品を調達することができました。
ドライバーは、元プロの方にお願いして乗っていただいてのですが、過酷なレースなので目標は完走でした。橋の欄干にぶつかるというアクシデントもありましたが、なんとか完走できました!
資金調達などのお願いでいろいろな企業を回ったのは、貴重な経験になりました。どのようにプレゼンすれば、私たちのプロジェクトに魅力を感じてもらえるか?そこで、自分の思いを伝えることの難しさを学んだし、その経験は今の仕事にもつながっています。
きっかけは、アナウンサーの先輩である野村正育さんです。大学時代に、さまざまな年代の卒業生が集まる高校(滋賀県)の同窓会があって、そこに高校の先輩でもある野村さんも参加されていました。
それまで、自分がアナウンサーを目指すことになるなんて思ってもいなかったのですが、野村さんから話を聞いて「私もやってみたい!」と思ったんです。
アナウンサーの仕事は本当に幅広い。ある日は、農家の方に話を聞いて、次の日は政治家や芸能人にインタビューしたり、あるいはスタジオでニュースを読むことになるかもしれない。自分で企画を考え、取材に行き、それを番組にしたり、自分の言葉で伝えることもできる。
そういう話を聞いているうちに、もうワクワクしてきて、「自分もそういう仕事がしたい!」と。私、おもしろそうだと思ったら、もう一直線なんです(笑)。
入局して2年目の春に、初任地は沖縄でしたが、春の選抜高校野球に仕事で行かせてもらいました。アルプススタンドからリポートをする仕事だったのですが、それ以外のときはラジオのディレクター業務もします。そのとき、先輩がラジオ実況している姿を見て、「すごいなあ、私もやってみたい」と思ったのがきっかけです。
ラジオなので、事細かに一つひとつのプレーをわかりやすく描写し、目の前で起こっていることに臨機応変に対応していく。同時に解説者の方と野球のおもしろさや魅力を紐解いていくのを間近で見ていて、すごいと思ったし、いつか自分も実況をしてみたいと
時折開かれる「野球実況研修」に参加させてもらったり、あとは沖縄の球場でスコアブックをつけながら、ひとり実況をしたり・・・まわりの人たちには「なんだ、あの人は?」みたいな目で見られながら(笑)。
ただひたすら、研修で学んだことを繰り返し練習していました。
3年後の2018年です。そのときは沖縄から名古屋放送局に移動になっていました。名古屋では、プロ野球やオリンピックで実況されている上司がいて、その方から本当に多くのことを勉強させてもらいました。
スライダーは、ボールをこう握って、こう投げるから、こういう曲がり方をするんだということなど、1日ワンテーマでいろいろなことを丁寧に教えてもらいました。
当たり前ですが、ものすごく緊張していました。同時に集中もしていて、実況中に目に前の資料にぽとんと汗が落ちて、そこではじめて自分が汗をかいていることに気付きました。でも、その一方で客観的に自分を見ている自分もいて、とても不思議な感覚でした。
それでも、そのときの自分の実力は出せたかなと・・・できないことも多く悔しさでいっぱいでもありました。とは言え経験が何より大事なので、焦らずじっくり積み上げていこうと思いました。
大きな大会では、2014年のサッカーワールドカップのブラジル大会、2016年のリオデジャネイロ五輪、2018年のサッカーワールドカップのロシア大会で、キャスターを担当させてもらいました。
これらの経験はとても大きかったし、アナウンサーとして鍛えられました。細かく決まった台本がない中で、実感を持ってどんなことが言えるか?どれだけ準備をして、それがいかに自分のものになっているかで、とっさに言えることも変わってきます。
ですから、まだまだ多くの勉強と経験が必要だと思っています。
まずは、甲子園(高校野球)のテレビ実況です。それが、直近の目標です。
そのほかにも実況というカタチでいろいろなスポーツにチャンジしたいのですが、自分が実際に経験しているボートとアメリカンフットボールはぜひやって担当してみたいです。
これは、遠い先の目標ですが、いろいろなゲストの方に話を伺うラジオ番組をやってみたいですね。でも、これをするにはまだまだ自分の人生経験が足りないと思っています。
できるのは、10年後、20年後かもしれません。それまでにアナウンサーとして、ひとりの人間として、女性として、楽しいことや大変なことをたくさん経験して、自分の引き出しを増やしたい。
そうなってはじめて、いろいろな人と深い話ができるのではないかと思っています。
宇宙旅行に行きたいです(笑)。
小学校の卒業式で自分の夢を発表したとき「宇宙飛行士」と言ったんです。それとはまったく違う分野で働いていますが、いつか宇宙から地球を見てみたい。非現実的な夢ですが、胸に中にはずっと置いておきたい夢です。
宇宙飛行士はハードルが高いですが、あと何十年かすると、格安宇宙旅行プランみたいなのが登場するかもしれませんから(笑)。
学生時代は、いろいろなことに挑戦して、なるべく多くの経験を積んでほしいですね。それは、豊かな想像力にもつながるはずです。アナウンサーになれば、さまざまな分野の人に取材することになります。そのときに、いろいろな経験をしていれば、相手の思いや言いたいことを、言葉よりも深いところで共感できたり理解できたりするかもしれません。
そしてそれは、その人ならではの個性や武器になるはずです。
多彩な角度からスポーツを楽しむこと。たとえば、コロナ禍の今は難しいですが、野球場でビールを飲みながら、同じチームのファン同士で盛り上がったり。選手の細かい動きは見えないけれど、あえて一番上の席から球場全体の雰囲気を楽しんだり。逆に、ネット裏で選手やベンチからの声に耳を澄ませたり・・・。
そのスポーツがもたらす、あらゆる面を知って放送席に座ったほうが、出てくる言葉も描写の表現も、よりリアルで共感されやすいものになると思います。