NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 廣瀬智美

07/03
それが必死に頑張った結果なら、胸を張っていい。
  • 小さいころはどのような子どもでしたか?

    おしゃべりで、おそらく・・・いや、間違いなく目立ちたがり屋でした(笑)。

  • アナウンサーになりたいと思ったのは、いつごろですか?

    小学校の文集に、将来の夢はアナウンサーと書いていました。ですから小さいころから憧れていたのは確かです。でもまさか、その夢が実現するとは正直思っていませんでした。NHKに受かったときは、うれしさよりも驚きのほうが大きかったように思います。そして、誰よりも両親が喜んでくれました。両親はNHKが大好きで、家のテレビのチャンネルはいつもNHKでしたから。子どもの私としては、ほかのチャンネルも見たかったけど、NHKでしたね(笑)。

  • スポーツキャスターとしての印象が強いのですが、
    学生時代はどんなスポーツをやっていましたか?

    それがスポーツはあまり得意ではなくて・・・。中学生のときは卓球部でしたが、卓球に情熱を注いだというより、私はすぐに日焼けするので、父に「屋外でやるスポーツはやめたら?」と言われたのと、何となく楽そうだから入部したという感じでした。

  • でも、子どものころからスポーツ観戦は好きで、いろいろなスポーツを観ていたし、特に高校野球は好きでした。
    新人のころは、ニュースを読んだり、ステージの仕事をしたり、中継のリポートをしたり、さまざまな仕事をやらせてもらいましたが、私としてはスポーツに関わる仕事がしたいとずっと思っていました。
    自分はスポーツの経験はないので、技術面では経験者には及ばないかもしれないけれど、その選手の生き方や練習に取り組む姿勢など、人にクローズアップして取材を深めていきたい、と。
    アスリートの現役の何年間というのは、人生の縮図だと思います。一般の人たちの何十年間の人生をギュッと凝縮したような時間が、そこにあるように思います。栄光もあるけど、挫折や苦労もある。人が生きていく上で大切なこと、忘れてはいけないことをたくさん教えてくれる。それが、スポーツ選手だと私は思っています。

  • たとえば、惜しまれながら現役を引退された、なでしこジャパンの澤穂希さん。2011年のFIFA女子ワールドカップで優勝して、女子サッカーは一躍脚光を浴びました。そしてその中心に澤さんがいました。日本女子代表に澤さんが選ばれたのは15歳のときで、ワールドカップで優勝したときは30歳を過ぎていました。サッカーをはじめてからワールドカップで優勝するまでの十数年間は、どんなに活躍しても、世間から大きな注目を浴びることはなかった。それでも澤さんはピッチを走り回り、その背中で若い選手たちを引っ張ってきました。その生き方にとても感銘を受けました。
    2012年のロンドンオリンピックは、なでしこジャパンは決勝でアメリカに敗れました。前年にワールドカップを制していただけに期待度は高く、敗戦後の日本のメディアは一気にどんよりとした雰囲気に包まれました。なでしこの選手たちに直接インタビューする機会が多く、彼女たちのオリンピックに臨む気持ちを感じていただけに、現地で取材していた私も、やはり落ち込みました。
    ところが表彰式で、なでしこのみんなは全員で手をつなぎ満面の笑みをたたえながら入場して来ました。優勝はできなかったけれど、自分たちは全力を尽くしたという満足感と達成感が全員の笑顔から感じられました。
    たとえ目標は達成できなくても、それが必死で頑張った結果なら、胸を張っていいのだ、笑っていいのだ、ということを、澤さんをはじめ、なでしこジャパンのみなさんに私は教わりました。
    きっとそれは私だけでなく、会場にいた人、テレビの前にいた人の多くが感じたのではないでしょうか。

07/10
個性的なメンバーが集まった『4時も!シブ5時』。
  • 先輩の言葉や担当した番組で強く影響を受けたものはありますか?

    大先輩である小野塚康之アナウンサーに言われた「普段、しゃべらない人がテレビで急にしゃべれるわけがない」という言葉です。私が言われたことではありませんが、とても印象に残っています。 これは、しゃべる、しゃべらないということだけではなく、普段、できないことが、急に放送でできるわけない、ということだと思います。もっと突き詰めれば、日ごろ自分がどう生きているかがそのまま放送に出る、ということ。日常の大切さと、自分は自分でしかないという開き直りの精神を教えてもらったと思っています。

  • 現在、私が担当させてもらっている『4時も!シブ5時』という番組は、原稿があってそれを読むのではなく、共演者のジョン・カビラさんやハリー杉山さん、クリス松村さんとのやりとりがそのまま番組になっています。そういう意味では、本当の自分、素の自分が出てしまう番組です。 ふだん自分がどんなことを考えているのか、どんなことに興味を持っているのか、もっと言えばどんな生き方をしているのかが見えてしまう、ある意味、こわ〜い番組ですね(笑)。

  • 『4時も!シブ5時』では、個性的なメンバーと共演されていますが、 そのうちの1人、ジョン・カビラさんの素顔を教えてもらえますか?

    お会いする前までは、明るくて陽気で、周りをグイグイ引っ張っていく方と勝手に想像していたのですが、共演させていただいてまず感じたのは、思慮深さとあたたかさです。いつも穏やかで一歩引いて物事を深く考えていらっしゃる。
    スポーツや音楽に詳しいのはもちろんですが、それだけではなくて森羅万象さまざまなことに造詣が深い方です。しかも、皆さんご存知の通りナレーションは天下一品、言葉の引き出しが多く的確で、私は横にいて毎日勉強させてもらっています。
    声が良くて、男前で、優しい、ちょっとずるいですよね(笑)。

  • クリス松村は、どんな方ですか?

    クリス松村さんも博識な方です。特に芸能の分野に詳しくて、あふれんばかりの知識をお持ちです。たとえば、映画についてスタッフと打ち合わせしているとき、その映画についてクリスさんがあまりにも詳しくてスタッフがポカーンと聞いていることがよくあります(笑)。
    あとインタビューがお上手です。クリスさんがインタビューすると、話をされる方の表情がイキイキしてきて、すごく楽しそうなのです。インタビューされる方の気持ちを高めながらお話を聞くのがうまいなあといつも感心しています。
    そして、さまざまな社会問題に独自の意見を持っていらっしゃる。それに対して賛否両論あると思いますが、「自分はこう思う!」ということをはっきり発信する勇気があるし、時代に流されない確固たる自分を持っている方ですね。

  • では、最後にハリー杉山さんについて聞かせてください。

    ハリーさんは、女子に大人気です(笑)。修学旅行生がスタジオパークによく見学に来ますが、私を見てもシーンとしているのに、ハリーさんが登場するとキャー!という黄色い声が飛び交います。

  • でも、いくら人気があっても浮ついている感じはなく、表現者としてどうありたいとか、どうなりたいかをいつも自問自答しているような真面目で勉強熱心な方です。彼が制作スタッフやカメラマンと積極的にコミュニケーションをとっている姿にいつも刺激を受けています。
    カビラさんやクリスさんもそうですが、与えられたことをそのままやるのではなく、どうしたらより伝わりやすいかとか、どうすればより番組が良くなるかを常に考えています。
    出演者とスタッフが、その垣根を超えてさまざまな意見をぶつけ合いながら作っているのが『4時も!シブ5時』なんです。

07/17
パワーあふれる番組です。
  • 『4時も!シブ5時』では、出演者の中で廣瀬さんだけ、名前にカタカナが入っていませんね(笑)。

    そうなんですよ、スタッフからも「エミリー広瀬に改名すれば?」とか言われています(笑)。ただ、ほかの3人の方は海外生活の経験があるなどワールドワイドな方たちで、私は大分生まれで、大分育ちで、英語もしゃべることができませんから、カタカナの名前はちょっと無理があるなと思っています。
    番組がスタートする前は、私だけ世界観が違うなと心配していましたが、皆さん懐が深くてすぐに仲間に入れてくださいました。

  • 毎日、本番がスタートするまではどのようなスケジュールですか?

    お昼の1時から出演者を交えた打ち合わせがはじまって、2時からリハーサル、3時半に当日のゲストの方が入られて、4時から本番という流れです。
    打ち合わせは、制作スタッフからその日の番組の流れを聞くというだけでなく、その日のテーマについていろいろなディスカッションがあります。ジョン・カビラさんも、クリス松村さんも、ハリー杉山さんも、みなさんが自分の考えや意見をそこで言い合って、それが本番でも生かされています。
    また、スタッフも少人数なので、急に「ここは、こうしたい」と言っても柔軟に対応してくれます。出演者の意見が番組に反映されることも多いですね。

  • 具体的に、出演者のどんな意見が番組に反映されましたか?

    中国の伝統的な切り絵細工を紹介したときのことです。その作品をハリー杉山さんが持って紹介するのですが、台本を持っているので、リハーサルではハリーさんが片手で作品を持っているという演出でした。でも、ハリーさんが「僕は人が一生懸命に作った作品を片手で持ちたくない」と。立っていると台本も持っているので、どうしても片手になってしまいます。「もし良ければ、座って台本を横に置いて、両手で作品を持ちたいのですが」と言ったんです。それを聞いたプロデューサーをはじめスタッフ一同が「おーなるほど」となって、本番では座って両手で作品を持つという演出に変更されました。
    あと、料理コーナーにいくときにカビラさんのお腹が鳴るという演出があります。これも、打ち合わせのときに「お腹が鳴るとおもしろいよね」というカビラさんの一言から生まれました。先日、森昌子さんがゲストでいらっしゃったとき、「この音が聞きたかったのよ」と言ってくださったのはうれしかったですね。
    みんなで話したことが、「それ、おもしろいね。じゃあやってみよう!」と実現していく。そんなパワーあふれる番組です。また、出演者それぞれが普段思っていること、考えていることを等身大で話す、背伸びをしない番組でもあります。

  • 夕方の4時台は、家事も一段落して、夕食の準備にはまだ時間がある、ちょっとのんびりできる時間です。そのひと時を、私たちと一緒に笑いながら、あるときは私たちのおしゃべりにツッコミを入れながら、楽しんでもらえたらなと思います。

07/24
その声は私にはまだ届いていません。
  • 最後となる4回目は、
    廣瀬さんのプライベートな話を聞きたいと思います。

    いやあ、これと言っておもしろい話はないですよ。

  • 家に帰れば子育ても大変だとは思いますが、趣味はありますか?

    昔はゴルフの打ちっ放しだったのですが最近は行ってないし・・・美容と健康には興味があって・・・そうですね、ずっとダイエットはやっています。

  • すらっとしている印象ですけど・・・。

    いやいや、努力しています。NHKに就職が決まってから入局するまでの間に10キロ太ってしまうということがありました。初任地の鹿児島局の上司、面接の時の写真とあまりにも違うので驚いていました(笑)。
    食べることが好きですから、ついつい・・・。そうだ!コンビニでおいしいおにぎりを探すのが趣味です!

  • ・・・おにぎり探しですか・・・。

    あっ、忘れていました。最近はフラフープに凝っています。家で簡単にできるし、場所もとらないし、静かでいつでもできるので。
    あと、本屋さんに行くのも好きです。棚に並んでいる雑誌の表紙を見るだけでも、いろいろな情報を収集できますから。インターネットだと自分の好きなことや興味のあることしか見ないけど、本屋さんにはじつにさまざまな情報があふれています。5時間くらいいることもあります(笑)。
    これは、趣味ではありませんが、人の顔と名前を覚えるのは得意です。小さいころから引越しを繰り返していて転校も多かったので、そのたびにクラスの子の顔と名前を覚えなくてはいけなかったので、自然と覚えられるようになりました。
    先日も、最寄りの駅ですれ違った人がいて、どこかで会ったことのある人だと・・・そのときは思い出せなかったのですが、家に帰って「そうだ!」って。1度だけ行ったことのある調剤薬局の薬剤師さんでした。さすがに名刺交換をしていないし、向こうも名乗っていなかったので、名前までは分かりませんでしたが・・・。
    でも、この特技は仕事にも役立っています。スポーツの取材が多かったときには、選手はもちろんですが、たくさんいらっしゃる裏方さんの名前と顔を覚えるのが早かったので、すぐに親しくなれました。選手たちを陰で支えている方たちの声も、その選手を語る上ではとても貴重だったので。

  • 出産して、子育てをはじめて、
    以前と変わったことは何かありますか?

    子育てを通して知り合った方々は、それまで自分の周りにいた人とはまったく違う環境の方が多かったので、改めていろいろな考え方があることを知ることができたし、価値観や世界観がより広がったような気がします。
    あと、子育てをする前は、どこまでが仕事でどこからがプライベートか区別がつかないことがよくありました。家に帰っても仕事のことを引きずったりしていたので・・・でも今は家に帰ったら否応無しに母親モードに切り替わります。まだ、1歳9ヶ月なのでもう振り回されっぱなしです(笑)。でもそれが仕事をリセットするスイッチになっているのも事実で、それにより1日1日を新しい気持ちで迎えられるようになりました。
    また、お母さんになると、以前と比べてやさしくなったとか、柔らかい印象になったねという声をよく聞きますが、残念ながら、その声は私にはまだ届いていませんね(笑)。

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