NHKアナウンス室

アナウンサー仕事の流儀

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インタビュー 新井秀和

自分の声で勝負したい。
10/09
「もっと自分の声を
大切にしてください」
  • 小さいころはどのような子どもでしたか?

    よく親に言われていたのは「大人の話に口を出すな」ですね(笑)。大人の話に混ざりたかったのか、大人ぶりたかったのか分からないですけれど、おそらく大人に自分のことを認めてほしかったのだと思います。同級生のお母さんにとてもカラオケの上手な方がいらして、その人に認めてほしくて歌を一生懸命に練習した記憶があります。幼稚園児か小学校の1年生くらいだったと思いますが、そのとき私がチョイスした曲がなぜかテレサ・テンさんの『愛人』でした(笑)。歌の意味が理解できないので、歌詞を覚えるのが大変でした!

  • 学生のころは何か部活をやっていましたか?

    中学校から高校2年までは吹奏楽部でトランペットを吹いていました。

    トランペットが好きだったんですね。

    いや、本当はサックスをやりたかった。でも、もう1人サックスをやりたいと言う女の子がいて、先輩が「じゃあ、サックスは君で」と女の子を指名したので・・・。先輩に「トランペットは目立つよ!」とか言われてその気になってしまいました(笑)。
    高校3年になってからは放送部に入りました。音楽は好きでしたが、放送部にはずっと興味がありました。高3のときにはNHKの『高校放送コンテスト』にも出場しました。その県大会で当時NHKの前橋放送局にいたアナウンサーに言われた言葉は今も胸に残っています。「コンテストだと、みんな同じような声を出して読もうとするけど、実際のアナウンサーはみんな声が違うでしょう。もっと自分の声を大切にしてください」と。 そうか、自分の声でいいんだ!と言うのは私にとって大きな自信となりました。

  • NHK入局後に、その方と会うことはなかったのですか?

    それが、再会しました!
    当時のことを話すと、僕のことを覚えていてくださって、とてもうれしかったです。

  • では、放送部での経験がアナウンサーになろう
    と思ったきっかけだったのですか?

    そうですね。そのころから少しずつ人前でしゃべることのおもしろさを感じるようになりました。
    あとは、大学生のころ地元のコミュニティFM局でアルバイトをしていました。主に2時間の生放送を担当していて、パーソナリティとして番組の構成から選曲、放送、時には機材の修理まですべて1人でやっていました(笑)。今、考えると勇気があったなと思いますが、それだけやりがいもありました。その経験もあり、アナウンサーになりたい!と考えるようになりました。

10/16
言葉だけでは伝わらないこと。
  • アナウンサーになったら、こんな仕事してみたい
    という希望はありましたか?

    若いうちに災害報道に関わりたいと思っていました。NHKでアナウンサーをやっていくからには、災害報道、緊急報道は欠かせない。だったら若いうちに学びたいと思っていました。
    初任地の高知では、台風中継に何度も行きました。夕方のニュースで桂浜から中継して、夜のニュースでは室戸岬から中継をすることも・・・。ずっと台風の現場にいると、台風が来る前の気配、台風の目に入ったときの状況、去ったあとの風向きなどを肌で感じられます。
    また、現場に入ると現地のいろいろな方に取材します。でも、長時間中継をしていると取材で見聞きした情報が尽きてきます。すると、その場でそのときに感じたことをコメントしなければならなくなるので、周りのちょっとした変化を見逃さないよう五感を研ぎ澄ますようになります。その経験は今でも役立っています。

  • アナウンサーとして成長するきっかけとなった
    仕事や先輩のアドバイスはありましたか?

    入局3年目に、夕方の情報番組のキャスターを担当しました。それが、1つの節目だったような気がします。1人でカメラを持って取材に行き、撮影をし、三脚にカメラをセットしてその前で話すということをやっていました。そして、局に戻って自分で編集もするのですが、このときに先輩方から多くのことを学びました。
    アナウンサーは何かを伝えるとき、どうしても言葉が先行してしまって、ついつい映像がおろそかになってしまう。でも、話がいくらつながっていても、映像に驚きや見ている人をひきつけるものがないと、それはいい番組とは言えません。ラジオも同じで、コメントだけでは伝えられることは限られます。そこに聞いている方の想像力をかきたてる音をのせることで、映像がなくてもより多くのことを伝えることが可能です。コメントと映像、コメントと音、それらがうまく重なり合うことで番組やコーナーはよりいいものになる。そういう私たちの仕事の基本を入局3年目で学べたことは大きかったと思っています。

  • 初任地の高知時代に体験したキャスターや番組づくりは
    大きな財産になっているのですね。

    そうですね。はじめてキャスターをやってからちょうど10年後、福岡局で再び番組キャスターを担当することになりました。土曜朝の「おはよう日本」の時間帯に、九州沖縄に向けて放送する番組をリニューアルするタイミングでの担当でした。10年の間に番組づくりの難しさや苦労をいろいろ体験していたので、最初にキャスターを担当したときよりも逆にプレッシャーは大きかったと思います。
    でもそこで、スタジオでプレゼンすることのおもしろさを改めて実感することができました。そしてその時の経験が今の「おはよう日本 まちかど情報室」や「チョイス@病気になったとき」に役立っているのかなと思っています。

10/23
誰かの健康や暮らしのために伝えたいことがある。
  • 現在、担当している「チョイス@病気になったとき」について
    話を聞かせてください。

    じつは以前から健康番組を担当したいと思っていました。みなさん興味があることはさまざまだと思いますが、自分の体や健康に興味がない人は少ないはずです。ですから、健康番組はどんな時代でも必要とされる番組だと思ったので、いつかは担当したいと思っていました。
    取り扱う内容によっては難しいものもありますが、それをできる限り分かりやすく身近に感じてもらえるようにやっています。誰でも病気になったりケガをしたりすることはあると思いますが、そのときにどう対処するのがベストなのか?いくつかある選択肢の中でどれをチョイスすべきかを知っていることはとても大切なことです。その情報や知識があるかないかで健康に大きな違いが出るとしたら、それを伝えないわけにはいかない、そんな思いで番組に取り組んでいます。

  • MCの八嶋智人さんと大和田美帆さんのコンビもすてきですね。

    お2人からは学ぶことばかりです。八嶋さんからは瞬発力とアドリブ力を勝手に学んでいます(笑)。番組の流れを崩すことなく、足りない情報をさりげなくフォローしてくださる技はさすがです。大和田さんからは、視聴者の視点に立つことの大切さを教えてもらいました。大和田さんはMCでありながらも常に、女性としての視点、母としての視点を持ち続けていらっしゃいます。番組を作る側の視点だけでなく、視聴者の皆さんの立場に立つことの大切さを学ばせてもらっています。
    番組では深刻なことを扱うことも多いのですが、お2人が楽しい雰囲気を作ってくださるので、きっと視聴者の方も楽しみながら学ぶことができているのではないでしょうか。

  • 「おはよう日本」の「まちかど情報室」はどのようなコーナーですか?

    全国各地のいろいろなアイデアとその効果を紹介するコーナーです。アイデアが生まれる背景には、誰かが困っている状況が必ずあります。以前、あるアイデアを紹介したときに、高齢者の方から「こんなのがあればいいなとずっと思っていたけど、やっと巡り会えました」というお便りをいただきました。これは、「まちかど情報室」としてはとてもうれしいことでした。
    ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、紹介するアイデアで誰かの暮らしが少しでも豊かになるのであれば、全力でそのお手伝いをしたいと思っています。

10/30
歌詞の解釈を変えて歌う。
  • 趣味は何かありますか?

    歌が好きなのでカラオケにはよく行きます。しかも1人で。自分が好きでよく歌うのは昭和の曲がメインで、しかもちょっと暗いのが多いので、みんなとカラオケに行っても場が盛り上がらないんです(笑)。それは、申し訳ないなと思って1人カラオケに行くようになりました。2時間くらい1人で歌い続けています。同じ曲でも、次はちょっと解釈を変えて歌ってみようかとか。じつは、「この歌詞の本当の意味は何だろう?」と友だちと語り合うのも好きなんです(笑)。これを言うと笑う人が多いのですが、いい曲の歌詞は本当に奥深くて、解釈によっていろいろな意味が浮かび上がってくるんです。

  • これはこじつけかもしれませんが、歌詞の解釈を考えたり、それによって歌うときの表現を変えたりすることは、ナレーションにつながるものがあるのかなと思っています。
    今、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」のナレーションを担当させてもらっていますが、ナレーションでは表現力が問われます。その表現力って何だろう?それは、アナウンサーそれぞれに答えはあると思いますが、私は歌ととても似たものではないかと思っています。カラオケでは、自分なりの解釈や声の出し方で歌います。同じ曲でも歌う人の声、歌い方、その曲をどのように解釈しているかによって違ったものになる。それは、ナレーションにも通じるのではないかと勝手に思っています(笑)。

  • なるほど、とてもよく分かります。

    昔、ある先輩から「あの歌手がどうしてあの人に自分の曲をカバーさせたか分かるか?あの人なら自分の曲の世界観を表現できると思ったからだよ。君もそう誰かに思わせるアナウンサーになりなさい」と言われました。この言葉はずっと心の中にあります。

    では、目指しているのは、
    表現力のあるアナウンサーということですか?

    声に名前が書いてあるアナウンサーになりたい、と常に思っています。たとえば、ナレーションの一言目で「あっ、あのアナウンサーだ」と分かってもらえるようになれればいいなと思います。

  • その話は、高校生のときにNHKのアナウンサーに
    言ってもらった言葉「もっと自分の声を大切にしてください」(第1回)と
    通ずるものがありますね。

    結局、そこからはじまっているのかもしれません。アナウンサーの世界では、スキルを身につけるために誰かを真似ることがあります。それは、それで大切なことですが、やはり最後は自分の声で勝負できるようになりたいですね。

    ありがとうございました。

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