ノアのちょっとずつ猛進日記

多発性硬化症という難病で、視覚障害もある「バリバラ」レギュラー出演者ノア
(グレースより改名・現在アメリカに留学中)が、日々の生活の中で感じたことを綴っていきます。

まさかここもバリアフリー!?

  • 2019年6月21日
5月下旬、(ちょっと過激な)障害者団体「ADAPT」の抗議活動に参加した
アメリカの障害者に関わる重要法案を通すことが目的で
ワシントン D.C.で5日間にわたって行われた

  • 「早朝、抗議活動に向かう途中の写真。30名以上の車椅子の団体が、一列になって道路を横断している。付き添う健常者の手には大きなアメリカ国旗がはためいている」

    <議員会館に向かうメンバーたち>


  • 「議員会館に入る前に、市民にも法案のことを知ってもらうために、沿道でスピーカーを使い説明している様子。同時に、ビラを配ったり、旗やサインをもつメンバーも。メディアも駆けつけ、翌日のニュースにもなった」

重要な法案というのは
現在、施設にいる人たちが地域暮らしていくために
医療や介助、住宅の制度などを整えるというもの

300人以上の当事者を19のグループに分け
知事のオフィスを直接訪問し、法案を通すための賛成票を取りつけていく
法案には「障害者の隔離を終わらせ、市民権を確立させる」とはっきり明記されていて
どれほど重要な法案なのかを説明しながらまわっていった
「そんなに重要なことだったのね」とすぐに賛成のサインをしてくれる人もいたけど
中には、快く思わない人もいて、4時間以粘り強く説得
ようやく思いが伝わって、最後は強いハグを交わすことも

こうやって地道活動を続け、4日間で37人賛成票を集めることができた
私のチームは、7人の議員と交渉し、そのうちの5人から票を勝ち取った

しかしながら、全く分かり合うことができない人や、居留守を使って出てこない議員も…
それでも私たちは粘り続け、とうとう会館が閉まる時間に!!
すると、スタッフが警察を呼び、迷惑行為だとして逮捕される結果になってしまった

  • 「会館の中で抗議を続けるADAPTのメンバーたち。エントランスの前に8名ほどの車椅子の人とその介助者が居座っている。奥には警察官1名が背を向けて立っている」

    <会館の中で抗議運動を続けるADAPTのメンバーたち>


と言っても、アメリカのデモ活動の際の逮捕は少し変わっている
日本でいう、駐車違反の時のようなシステムで
逮捕されると書類手続きをし、チケットが渡されるのだ
そして翌日、5千円程度の罰金を払えば許してもらえる
その罰金も、金銭力のある無しに関わらず活動に参加できるようにと「ADAPT」 が支払ってくれる仕組みだ

私は、初日と2日目にチケットを切られたものの
毎朝出頭して支払いをしていたので、特に問題なく活動を行なっていた

しかし…!!
3日目に切られたチケットの書類手続きが遅れたため
4日目の昼以降でないと罰金が支払えなくなってしまった
その間も時間が惜しいので、お金の支払いは後回しにして議員との交渉開始
それが予想以上に難航してしまい、なかなか警察に出向けずにいた
私の他にもまだ罰金を支払えていないメンバーがいたので「どうする?」とソワソワ!!
ADAPTの弁護士と相談した結果、「罰金はいつでも払えるけれど、議員を説得できるのは今だけ。交渉が終わったら警察に行こう」ということに


ところが…!!
交渉の途中で、私達にイラついた議員が警察を呼び「ここから出て行け」と主張してきた
「いやいや、それはおかしいでしょ。5時間もこのオフィスにいて、私達と話もしなかったのに…。議員は市民の意見に耳を傾ける責任があるでしょ?」と反論
「この法案はとても大切で、それに賛成しないということは、人権を無視する議員だと思われてしまいますよ」などと、みんなでなるべく冷静に、かつ丁寧に説明した

その間にも、手錠をかけられて、次々と逮捕されていく仲間たち

私も自分が施設にいた頃の経験を踏まえて思いを伝えたけど
最終的に拘束されて、逮捕。所持品も全て没収されてしまった

  • 「逮捕され、警察官の前で書類審査を受けている私。路上に長机が並べられ、警察官が2名パイプ椅子に座って書類を書いている。その向かい側に、車椅子に乗り、呼吸器をつけてサングラスをかけた私の姿。水色のTシャツを着ている。警察官の質問に答えている」

    <逮捕され、書類審査を受ける私>


正直、逮捕されたことより、法案の大切さを伝えきれなかったことの方が悔しかった


でも逮捕されたことで、アメリカの新しい一面発見してしまった

警察官に誘導されながら電動車椅子で進んだ先には、大きなバスが待ち構えていた
そして、後部座席からウィーンとリフトが降りてくるではないか!?
バスの中は座席が取り外されており、車椅子のまま乗れるようになっている
私の他に3人の車椅子ユーザーと、全盲や聴覚障害など計7名の障害者がバスに乗せられ、移送されていく

ちなみにアメリカでは、介助者は希望するものしか逮捕されない(多くの場合は、逮捕を避けるため、警告が出された時点で、その場を離れるよう指示している)
だから逮捕時と拘留中は、警察官がガイドヘルパーや介助者の役割を果たすのが通例だ
手話通訳も、警察署内に専門の部署があるので、そこから派遣されてくる

あらゆるところがバリアフリーでとても驚いた!
留置所内は段差が1つもないので、車椅子のまま移動ができる
介助が必要な時は警察官が行なってくれるし、呼吸器の扱い方などを覚えてくれる親切っぷり

全盲の人を手引きする時もすごく丁寧
手錠をかけたからって無理に引っ張ったりせず
「案内するので、私の肘につかまってください」とか
「前方、3歩進んだところに、ベッドがあるのでそこに座ってください」など
口頭でちゃんと説明していた
視覚障害者のことをちゃんと分かってなければできない技だった

指紋採取の機械も、車椅子の高さまで上下に動く仕組みで
私は手が拘縮していたので、トライしたものの採取できず、苦笑いで免除された(笑)

思わず、「なんでここまでバリアフリーなの?」と警察官に尋ねたところ…
「アメリカにはADA 法があるので、公的機関である警察署はその決まりを守らなければならない」とのこと
そのため、建物はバリアフリーに作られているし、警察官も障害者に対応できるよう定期的にトレーニングを受けているのだそうだ
特にワシントン D.C.はデモが多く、障害者が逮捕される割合が高いので、自然とそうなっていくというわけ

「でもね…」と話を続ける警察官
「障害者も健常者も同じ人間。リスクを冒して自由を主張するのも権利だけれど、もし悪いことをしたら捕まえるのが警察の役割。そこに差があってはいけないと思うんだよ。じゃないと、逆に障害者差別が生まれるし、どこかで、障害者には悪い人はいないという先入観が生まれる」
と、自分の信念を語ってくれた

リスクを冒すのも自由。だけど逮捕された時は、健常者も障害者も関係ない
逮捕されて、「障害があるから。施設がバリアフリーじゃないから」という理由で
すぐに病院へ連れていくのは、実は平等ではないのかもしれない
人権について、改めて考えを深める経験になった


そんなドタバタの毎日ですが
来月末に日本に一時帰国します~!!
でもその後は、もう一度渡米し、アメリカの障害者事情やバリアフリー事情を現地からもっと発信したいと思っています!!
  • 「微笑むノア。サングラスをかけ、呼吸器をつけている。黒いアウターの下にはグレーのTシャツが首元からのぞいている。背景には、霞みがかったビル群が見える」