これまでの放送

いまこそ薬物依存を考える

放送日

12月12日(木)夜8:00

再放送12月15日(日)0:00(土曜深夜)

出演者

いまこそ薬物依存を考える
有名人の薬物所持・使用が相次いで社会問題となっている。そのなかには、薬物依存症であることをカミングアウトし、当事者の立場から発信を続けてきた田代まさし氏も。「やっぱりクスリをやめるのは無理なのね」「裏切られた」などの声に、ますます疎外感を深めているのが、薬物依存症の当事者たち。依存症からの回復、社会復帰へ向けて、社会にはなにが求められるのか?いまあらためて、薬物依存症の当事者たちの声から考える!

内容

出演者

  • 近藤恒夫さん  (薬物依存症リハビリ施設「日本ダルク」代表)
  • 松本俊彦さん  (精神科医)
  • ジョージさん  (薬物依存症当事者(薬物をやめて10年))
  • リョウベエさん (薬物依存症当事者(薬物をやめて16年))

薬物依存を考える 写真1

11月、元タレントの田代まさし氏が、覚醒剤の所持・使用容疑で逮捕された。その4か月前、バリバラに出演し、「今日1日だけ、とりあえずやめる努力は怠らないってことはみなさんにお約束したいと思います」と語っていた田代氏の逮捕。あらためて薬物依存について考えたいと、バリバラは田代氏が通っていた薬物依存回復施設「日本ダルク」を訪問。ともにリハビリに取り組んできた人や専門家たちと、薬物依存からの回復について話し合った。

薬物依存を考える 写真2

田代氏の逮捕について感想を聞いたところ、薬物をやめて16年になるリョウベエさんは「寂しいですよね、一緒に頑張ってきたのに」。薬物依存の専門医・松本俊彦さんは「依存症の人たちが治療プログラムを受け、安定した断薬の状態に至るには、平均7~8回の再発がある」と指摘。「田代氏は、ダルクで仲間に支えられながら、自分の問題と向き合い、一定の効果は出ていた」と語った。

薬物依存症ってどんな病気?

薬物依存を考える 写真3

以前、バリバラに出演した田代氏は、薬物をやめ続ける難しさについて、「捕まるたびにファンをがっかりさせ、家族に心配をかけ、2度とやっちゃいけないと強い意志を持つ。それが目の前に薬物を出されたり、つらいことがおきると、魔力が勝ってしまう」と語っていた。

薬物依存を考える 写真4

松本医師は、徐々に薬物の量が増えていく、禁断症状が起こるといった“身体依存”は、クスリをやめて時間が経てば元に戻っていく。一方で、薬物を使ったときの快感や苦しみから解放された感じが脳にインプットされ、なかなか忘れられないのが“精神依存”。こちらは特効薬もないため、治療に長い時間がかかると指摘。「梅干しをしばらく食べていなくても、目の前に出されると、つい唾液が出るのと同じ感じ」と解説した。

薬物依存を考える 写真5

薬物を使用しても依存症にならない人はいる。しかし薬物使用時に、しんどい状況を抱えていたり、心身のどこかに痛みを抱えていたりすると、薬物の快感が脳にすり込まれやすくなるのだという。日本ダルク代表の近藤恒夫さんも「39年やめましたけど、しょっちゅうやりたくなります。それは(脳が)覚えているからしかたない」と言う。
玉木氏は「ドラッグストアとか病院でもらえる薬に依存しているケースが増えてきている」ことにも言及。「薬物依存の問題は、ただ違法薬物のことだけ考えればいいのではない」と指摘した。

薬物依存症の治療とは?

薬物依存を考える 写真6

薬物依存回復施設ダルクでおこなっている治療とはどんなものなのか。回復プログラムの中心においているのは1日3回の“ミーティング”。参加者は全員が薬物依存の当事者、ルールは他人の話を否定しないこと。安心できる場で、薬物をやりたい気持ちや自分の弱さなど、外では言えない本音を吐き出す。
薬物をやめて10年になるジョージさんは「自分のことを正直に話して、誰かがちゃんと理解してくれたと納得できたときにすごい安心感が来る」と語る。
そもそも近藤恒夫さんが「ダルク」をつくったのも、「1人ではやめ続けられない、仲間が必要だと思ったから」なのだそう。

薬物依存を考える 写真7

松本医師は、「依存症になる人はアルコールや薬物など、化学物質だけに依存して、自分を抑えて生きているうちにコントロールを失っている気がする」と言い、依存症とは“安心して人に依存できない病”だと指摘。だからこそ、仲間と話すことは、非常に治療的な行為なのだと評価する。

依存症の根っこにある「生きづらさ」

薬物依存を考える 写真8

依存症になる人の根っこには「生きづらさ」がある。7月、バリバラに出演したときの田代まさし氏は、バラエティー番組に引っ張りだこだった時代、過剰なプレッシャーに押しつぶされそうになったときに薬物と出会ったのだと話していた。「犯罪やからアカンと思わなかった?」その質問には、こんな例え話を語っていた。
「芸能界の荒波で一生懸命泳いでいました。もうこれ以上疲れて泳げない。このままだと溺れて死んでしまうかも。そこに“この浮き輪は違法です”と書かれた浮き輪が流れてきた。つかまっちゃおうかな?でもつかまったら捕まっちゃうな。でも死にたくないから、また離せばいいやと思った。自分はやめられると思っていた」

薬物依存を考える 写真7

田代氏とともに回復プログラムを受けてきたジョージさんは、「誰にもわかってもらえないと思っていたときに、クスリを使うと慰めになった」と語る。また松本医師は、女性の薬物依存者では、DVなどの暴力を受けてきた人が少なくないという。加害者が、その人がいないと生きていけないような存在だったとき、辛い関係に耐えるために依存症になってしまうケースがあるのだ。人から大事にされない経験を積んでしまったため、自分は人に助けを求めるに値しないと思い込んでいたり、「助けを求めても、人はかならず裏切る。しかしクスリは裏切らない」と考えてしまうことも。海外では薬物依存症の人にとっての薬物を“ケミカルフレンド”と呼ぶこともあるのだという。

いまこそ薬物問題の考え方を変えていくとき

薬物依存を考える 写真8

話題はメディアのありかたにも及んだ。著名人の薬物使用が報道される際、覚醒剤のイメージとして白い粉を落とす映像が使われることがある。16年間薬物をやめているリョウベエさんは、こうした映像を見るたびに、「クスリやりてぇ、なんでテレビで映すんだろう」と思うのだと言う。実際、松本医師の診療現場でも、大々的に薬物事件が報道されるたびに、患者の再発・再使用が増えるという。

また、玉木幸則さんは、田代まさし氏が逮捕された直後、バリバラのホームページから、7月放送「教えて★マーシー先生」の番組要旨(サマリー)がいったん消えたことを指摘。「依存症は病気ですよ。繰り返す可能性もありますよ。だからみんなで見ていこうね」と伝えていくべきところ、逆効果なことをしていると思ったと語る。

薬物依存を考える 写真7

松本医師は、薬物依存症の治療という観点から、刑務所に長期収監されることは、「たくさんの人間関係を失い、戻る場所も減ってしまう」と指摘。現在の制度では、依存症の人を逆に孤独に追い込んでしまい、治療を中断させてしまっていると訴える。玉木さんは「しんどさを1人で背負うことはできない。みんなでしんどさを分かち合い、誰も孤立しない社会をつくる」ことが大切だと語った。海外、とくにヨーロッパでは、地域の中で支援につなげる流れが生まれているという。そろそろ薬物依存症者の回復について、みんなで考えるべき時期が来ているのかもしれない。