これまでの放送

BLACK IN BURAKU ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~ 前編

放送日

2月6日(木)夜8:00

再放送2月9日(日)0:00(土曜深夜)

出演者

BLACK IN BURAKU ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~ 前編
メディアではタブーとされがちで、教育現場で教えられることも少ない「部落問題」。同じく被差別の歴史を持つアフリカ系アメリカ人たちが、大阪市内の部落をたずね、地域に暮らしてきた人たちの思いに触れる。その目に、現代日本の被差別部落はどのように映るのか? スタジオには、部落にルーツを持つ6名が出演、誇らしい部落内の濃い人間関係から、ネットの書き込みを見て受けたショック、結婚忌避に打ちのめされた悔しさまで、赤裸々に語る。

内容

出演者

  • (スタジオ)
  • 万次郎        (トランスジェンダー芸人)
  • バイエ マクニール   (コラムニスト)
  • イマニ スタンフォード (大学院生)
  • 管原 アリース     (ミュージシャン)
  • 角岡伸彦       (ノンフィクションライター)
  • 宮前千雅子      (大学教員)
  • 藤本真帆       (大阪府出身)
  • 中西匠貴       (大阪府出身)
  • るい(仮名)     (関西出身)
  • たま(仮名)     (香川県出身)
  • 秋山みき       (部落問題を学ぶ大学生)

  • (VTR出演)
  • 浅居明彦       (浪速部落在住)
  • 齋藤直子       (大学教員)
  • 谷口英代       (学習支援)
  • ほか

部落問題はタブー?アフリカ系アメリカ人の視点をかりて捉え直す

BLACK IN BURAKU ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~ 前編 写真1

いま、メディアにおいても、地域差はあるが教育現場においても、被差別部落のことに触れられることは極めて少ない。道行く人に話を聞けば、「今の日本には差別なんてない。」「部落問題は歴史の教科書の中の話。」といった、もう過去の話という認識が多くある一方で、「触れちゃいけない」「パンドラの箱みたいな感じ」など、タブー視する意見もあった。
この問題に興味をもったのが、人種差別を受けた歴史を持つアフリカルーツのアメリカ人たち。国籍も肌の色も同じなのに、なぜ差別があるのだろう?アフリカンアメリカンたちの視点をかりて、バリバラBLACK IN BURAKUスタート!

2020年、部落ルーツのひとたちが感じる生きづらさ

BLACK IN BURAKU ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~ 前編 写真2

ネット上では、部落について虚実入り交じった情報が飛び交う。「この地域を歩いてたら女の人はレイプされるし、男の人は暴行受ける」「ここの地区、車で走ったら、むっちゃ人出てくるんやろ?こわいんやろ?」―――当事者のいないところで、悪意ばかりが増幅していく。関西の部落出身のるいは、持って行き場のない思いをこう語る。「匿名でこんなん言って腹立つし、悔しいなあっていう思いはすごく持ちます。部落問題って昔の問題やんって思われがちなところを、いやいやいやと。若い世代かって、いろんな葛藤を抱いて生きてるんやっていうのをわかってほしい。」

繊細なテーマだからと放っておけば、正しい情報よりも誤った情報のほうが拡散しやすいこの時代。だからこそ、当事者が出て、自分の言葉でしゃべるこうした場が、事実を伝え、誤解を薄めることにつながって欲しいと番組コメンテーターの玉木は強調した。

BLACK IN BURAKU ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~ 前編 写真3

ここで、バリバラおなじみ、トランスジェンダー芸人の万次郎が登場、身分制度の固定化が進んだ江戸時代、賤民とされていた人びとについて、得意の講談調でレクチャー。部落民のルーツとなる「穢多(えた)」や「非人(ひにん)」とされた人たちが、社会の中での役割を果たしながら、武士や町人・百姓といった身分制度の外に置かれ、理不尽な差別を受けていたことを語った。トランスジェンダーで、時に心ない言葉をぶつけられながら生きてきた万次郎。差別される側の辛さ、悔しさを想像し、一分間、語り切った。角岡伸彦(兵庫県の部落出身・ノンフィクションライター)は、「(万次郎が説明した)身分制度は1871年に、いわゆる「賤民廃止令」(「解放令」)によって廃止されている。制度はなくなったのに、その後も意識のなかで残り続けた」と補足した。

※番組の紙芝居内で使用した絵画は2020年1月18日に著作権法第67条第1項の裁定を受け作成したものです。
※現代では差別的とされる表現も、歴史的意味および今回の番組趣旨を考慮しそのまま使用しています。

アフリカンアメリカンの視点「マイクロアグレッション」って?

BLACK IN BURAKU ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~ 前編 写真4

個性的なアフリカ系アメリカ人のふたりが、バリバラに登場。イマニ・スタンフォードは、京都の大学院に通う研究者。和食やアニメキャラクターをきっかけに日本の文化に惚れ込んだ。バイエ・マクニールは、日本における人種問題や多様性を鋭く洞察してきたコラムニストで、英字新聞や日本のオンラインメディアで人気連載を抱える。
早速ふたりは、大阪市内にある部落を訪問、地元で生まれ育った浅居明彦の案内で巡っていく。この地区では、駅のガードを境に、部落と一般地区とが隔てられているという。付近の人は、相手が、ガードのどちら側に住むかによって、微妙に接し方を変えることがあると浅居は言う。一般の日本人なら、気のせいでは?とやりすごしてしまうかもしれないが、アフリカンアメリカンのふたりは深い共感を抱く。米国でも、面と向かって侮蔑的な言葉を吐くような差別は無くなったが、インターネット上には差別的な言葉があふれ、マイクロアグレッション(microaggression:異なる出自の人に対し、自覚なく、悪意もないが、相手を傷つける言動)は、いまでもしばしば問題になるという。日本にはまだ馴染みない概念だが、多様性ある社会を考えていく上で大事な見方になるだろう。

部落半世紀――変わったこと、変わらないこと

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浅居が生まれ育った部落は、小学生の頃、その風景を大きく変え始めた。生活環境を改善するため、公営住宅がどんどん建てられたのだ。それ以前の環境は劣悪な所が多く、一歩路地へ入るとすれ違うこともままならない狭い小道で、火事が起きたときも、消防車は近づけないし、水道管は細いしで、延焼が進んでしまったこともあったそうだ(1969年、1972年)。とはいえ、悪い思い出ばかりではなく、近所の人が家族のように、ご飯を食べさせてくれるなど、助け合って暮らす温かいコミュニティーがあったことも、浅居は誇らしげに話す。マクニールはこの話に故郷ブルックリンの思い出を重ね、黒人のコミュニティーでも、近所のおばちゃんにご飯をごちそうになったり、悪いことをして怒られたりする、村全体が家族のようだったと懐かしんだ。

今、かつてのような人情にあふれたコミュニティーは、弱くはなっているものの、小中学生への学習支援など、さまざまな形で、脈々と受け継がれている。学習支援を運営する谷口英代は、「こうして一緒に勉強した子供たちは、ずっと友達でい続ける。差別とか部落への垣根は子どもから無くなるのかな、そうなっていって欲しいな」と思いを吐露した。

スタジオ出演者たちのムラ(部落)自慢

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スタジオ出演してくれた部落ルーツの人たちも、ムラ(部落)ならではの密な人間関係に愛着をもっている。るいの出身部落では、「近所の人が、勝手に扉を開けてみかんや晩ご飯のおかずなどを置いていく。」という。
そんな“ふるさと愛”を知ってか知らずか、部落の人に対してぶつけられがちなのが、「部落差別が嫌なら引っ越して、違う場所に住んたらどう?」という考え方。言うほうは、悪気はないのだろうが、大阪の部落出身の藤本真帆は「なんで私は好きな地域に住んでいるのに、差別されるからといって、そこを離れなあかんと言われるのか、よくわからん」と疑問を呈す。障害者取材にも力を入れてきた角岡伸彦は、社会参加を制約されている障害者に対して、ともにバリアフリーな社会を追求するのではなく、「障害を治せ」と言うのに似ているのではないか、と指摘した。

「愛する彼が部落出身者です」――番組に届いた悲痛な叫び

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再び街中の声。いまや部落差別は、「そんなにないよね」とは言いつつも、結婚に話題が及ぶと「世間体とか気にしちゃう」「親に絶対無理って言われる」とネガティブな反応が。自分はよくても家族や親戚に迷惑がかかる。そんな“思いやり”が時に当事者を深刻な状況に追い詰めてしまう。
取材を進める中、番組に、部落出身の人と交際しているという、のぞみんごさん(30代女性)からメールが届く。自分の家族に、部落出身の恋人との結婚を考えていると打ち明けると、両親は猛反対。「もし結婚したら、俺たちは周りから後ろ指さされて余生を生きていくんだぞ」「姪や甥の結婚がうまくいかなかったら責任とれるのか」と言われ、いま、恋人と両親のはざまで、深く悩んでいるという。

のぞみんごさんのお悩みに対し、結婚差別や家族の問題に詳しい大阪市立大学人権問題研究センターの齋藤直子特任准教授は、家族の態度変容の可能性などに触れ、長いスパンで幸せや祝福を考えてはどうかとアドバイス。

どうか独りで抱え込まないで

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スタジオ出演の中西匠貴にも、かつて結婚を考えた恋人がいた。ところが、彼女の両親に出自のことで大反対される。「うちの家系に、緑の血が流れた子は欲しくない」、信じられない言葉をぶつけられた。恋人は去り、癒えない傷だけが残った。るいや藤本は、「自分だけでかかえず、家族などに相談して」と言う。だが、中西にしてみれば「家族に相談しても、ムラの年寄りに相談しても、ショックを与えてしまう。そう考えると、当時は誰にも相談できなかった」。
部落ルーツで部落外に生まれ育った宮前千雅子は、自らの30年前の苦い経験を振り返り「家族はなかなか難しいので、学校の先生とかね、もっと身近な人で信頼できそうな大人っていたな、って今になると思うんですね。だからそういう人に、相談してみるとかっていう風なこともチャレンジしてほしいなって、すごく思います。自分達だけだと解決するのってすごく難しいので」と語った。

BLACK IN BURAKU ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~ 前編 写真9

さらに、アフリカンアメリカンの管原アリースは「自分のサポートシステムを作るのが大事。日本に来て10年だけど、最初は友達が誰もいなかった。5年前から、大阪に住んでいる黒人の友達グループを作って、みんなで会って話をしたり、イベントをしたり、それがほんとうによかった」と安心できる仲間とつながることが、辛さをやわらげたり、乗り越えるきっかけにもなると語った。
話が尽きない「BLACK IN BURAKU」、前編はここまで。後編に続く。

玉木幸則のコレだけ言わせて

玉木幸則のコレだけ言わせて

「“みんな”でどう分かち合えるか」

「私は部落です」ってわざわざ言わんでも生きていけるわけやん? でも、「実はまだまだ課題があるから」と当事者が出演してくれた勇気、それは強い。それと、バリバラは“みんなのためのバリアフリー・バラエティー”やけど、その“みんなの”という部分の本質が今回伝わったんちゃうかなと思う。これまで障害者差別解消法なども扱ってきたけど、その合理的配慮って、駅にエレベーター付けたら終わり、というだけの話じゃないやん? ほんとは生きづらさとか苦しいと思ってる状況をどう解消していくか?という話。その苦しさを“みんな”でどう分かち合えるか?ということ。今回はその点をようやく説明することができたと思う。