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新型コロナ 世界ではなにが起きている?

放送日

5月7日(木)「生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議」をもとにした記事です

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新型コロナ 世界ではなにが起きている?
新型コロナウイルスをめぐる課題を、障害者などマイノリティーの立場から考える第2弾。今回は世界7か国の障害者たちをつなぐテレビ会議を開催!コロナ禍で最も弱い立場に置かれがち(Vulnerable)な人たちが、各国の障害者の生活や医療をめぐる現状、当事者としての不安を共有する。また医療がひっ迫するなかで起こりうる「命の選別」、障害者の命が軽視されてしまうことはないのか?世界から、日本の障害者の未来が見えてくる!

内容

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真1

障害者を始め、現在の新型コロナ禍で最も弱い立場に置かれる(Vulnerableヴァーナラボー)な人たち。今回は「新型コロナ V7★世界テレビ会議」と題し、アメリカ、イギリス、イタリア、インドなど世界の障害者7人をつなぎ、生活や医療をめぐる現状と課題を報告してもらいました。健常者とは別次元の不安を抱えている人たち。その声をご紹介します。

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真2

■ヘルパー利用が困難に


バリバラの元レギュラーで、現在アメリカで障害学を学んでいる大橋ノアさん、「二ヶ月の間、小さな部屋から一度も外に出ずに引きこもっています。3月に州知事が自宅待機を呼びかけたので、ヘルパーたちが実家に戻ってしまいました。ふだん私を介助してくれている8人のうち6人が辞めてしまい、私はパニックになりました。1日に12時間以上の介護が必要な私は、残った2人がもし感染したり来られなくなったら、どうやって生きていけばよいのか、わからない」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真3

熊本でヘルパー派遣事業所の運営に携わっている平野みどりさん、「私の事業所には40人以上のヘルパーがいますが、みなさん複数の障害者を介助して回るんですね。だから、もし誰か感染したら、一気に広がってしまうかもしれません。とても恐ろしいです」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真4

首のケガで四肢がマヒしているナディア・ハダドさん(ベルギー)、「ベルギーではヘルパーを派遣する地域サービスがストップしてしまいました。幸い、私のところには代わりに母が来てくれました。でもね、言うのも悲しいですが、76歳の年老いた母が47歳の娘を介助するのです。とても普通じゃありません。こんなことあってはならないんです」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真5

脊髄損傷で下半身がマヒしているヴィラリ・モディさん(インド)、「残念だけど障害者はソーシャル・ディスタンスを取ることができないんですよね。私たちは誰かの助けを頼って生きているから。それで感染リスクが高くなってしまうんです」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真6

筋ジストロフィーで人工呼吸器ユーザーのジョン・ハスティーさん(イギリス)、「心配なことがあります。地方自治体の中では財政が厳しいところもありますから、(外出規制のなかで障害者サービスを抑制した)現状をきっかけにして福祉サービスが削減されてしまうのではないか、ということです」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真7

■障害者施設で相次ぐ集団感染


ベルギー在住で障害者運動のリーダーであるナディア・ハダドさん、「私にも施設に住んでいる友人が大勢いるのですが、彼らは外に出ることが一切できません。多くの職員が感染して人手が足りなくなったからです。部屋から出ることすら許されないし、他の活動も制限されてしまいました。彼らが、なんて言われたか知っています? 『戦争中みたいなものだから慣れてください』、ですよ。機械的に抗鬱剤を投与する施設もあります。少なくとも障害者のメンタルヘルスが改善されて、必要な支援を受けられるようになってほしい」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真8

イタリア政府コロナ対策委員会のメンバーで、車いすユーザーのジャンピエロ・グリッフォさん、「イタリアではシチリアや北部の施設が厳しい状況です。亡くなった人の半数は、隔離された施設の高齢者や障害者たちなんです。ひどいです、本当に残酷です。もし地域の中に暮らしていたら、もっと守られたでしょう。でも施設の中となると、どんな状況なのか、誰にも分かりません。障害者は見えない存在とされているのです。みんなが大変な状況の下では、誰も障害者のことを気にかけなくなるのです」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真9

アメリカはテネシー州ナッシュビルに住むジッポラ・アリエルさん、「問題は障害者や高齢者施設にとどまらないですよね。刑務所にいる多くの人たちも同じですよ。アメリカは世界で最も多くの人を収容しています。それに移民収容所にもたくさんの人がいます。とても小さな施設に押し込められているのです」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真10

参加者に衝撃を与えたのは、ヨーロッパ自立生活ネットワークの共同議長をしているナディア・ハダドさんによる、ルーマニアの精神障害者施設でおきた事件の報告でした。

「感染した職員は地元の病院にかかることができました。でも障害者は感染していても施設の中に残され、何の医療支援もないまま隔離されたのです。地元の病院は小さく、全員は治療できないから、と職員だけが優先されたのです。そして精神障害のある多くの人々が亡くなったんです。SNSで衝撃的な記事が拡散されて報道されるまで、誰も助けに来ませんでした。このような例はヨーロッパ全体に広がっていますが、報告されているのはほんの一部です。とても多くの人が施設の中で突然亡くなってしまったというのに、その理由もあきらかにされないままなんです」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真11

これを受け、DPI(障害者インターナショナル)日本会議の議長を務める平野みどりさんはこう語ります。

「日本でも何人の障害者が感染して亡くなったのか、データがないんですね。感染した人や重症化した人のうち、障害者はいったい何パーセントにのぼるのか。調べなくてはいけないと思っています」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真12

■トリアージで障害者は後回しにされる?


トリアージとは、災害などで多くの人がケガをしたときなどに行われる「命の選別」「優先順位付け」のこと。新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大で医療がひっ迫したとき、現場の医療関係者がどの人を優先的に助けるか、その順位づけの基準となるガイドラインをめぐり、世界各国で問題が起きています。

例えば、イギリスの国立医療機関が発表したガイドラインでは、『障害者のように身の回りのケアを他人に頼る人は優先順位が下がる』ということが書かれていました。現在の新型コロナ禍において、障害者の命を軽視する考え方が浮かび上がってきているのでは? その不安を世界中の当事者が感じています。

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真13

このガイドラインへの違和感をインターネット動画で配信。BBCに取り上げられたことから、大きな話題を呼ぶことになったのが、イギリス在住の人工呼吸器ユーザー、ジョン・ハスティーさんです。

「このガイドラインだと、もし私が感染して回復に時間がかかりそうだと判断されたら救命処置がなされないでしょう。怒りを通り越して恐怖を感じます。私の命にも価値があります。私たち障害者は治療のチャンスすら与えられずに、死ねと言うのですか? 優先して、とは言いません。ただみんなと同じようにチャンスがほしいんです。私たちを切り捨てないでください」

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アメリカに住む大橋ノアさんは、病院で自分の人工呼吸器を取り上げられる危惧を表明します。現実にアラバマ州などアメリカのいくつかの州では、今回の新型コロナ感染拡大を受けて、障害者の治療を後回しにする内容のガイドラインを作成。これらは後に撤回されましたが、州によっては、いまでも“重度障害者が所有する人工呼吸器もトリアージの際には取り上げる”と解釈できるガイドラインが生きているからです。

「アメリカでも状況は似てますね。例えば、私が人工呼吸器を付けたまま病院に行ったとしますよね。そしたら病院では、私の呼吸器を外して他の人に使われかねないんです。怖いです。呼吸器がないと私、死んじゃうので」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真15

ヨーロッパ各国の事情に詳しいナディア・ハダドさんもいくつかの例を挙げました。

「オランダでは福祉の担当大臣が、『70歳以上の国民は後回しになる。なぜなら彼らは社会の役に立たないのだから』と話しました。『障害者はどうか?』と聞かれて、『相当に体が丈夫な人だけを助けるべきだ』と答えました。この発言に多くの人が反発し、大問題となったのです。ベルギーでも問題がおきましたよ。ダウン症の男性がお兄さんに付き添われて病院に行き、検査で陽性になったのに『家に戻って家族と一緒にいてください』と集中治療を拒否されたんです」このダウン症の男性は、亡くなってしまいました。

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真16

■新型コロナ禍で浮かび上がる「優生思想」


新型コロナ感染拡大のなか、アメリカで次々と持ち上がった障害者の命をめぐる議論。大橋ノアさんは、「“誰が生きるべきで、誰が生きるべきでないか”という考え方って、以前から社会の中にあったと思うんです。それが新型コロナによって表面化してきたんじゃないかな。ナチスの迫害を受けたおじいさんを持つジッポラさんの意見も聞きたいな」

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祖父がナチスによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)を生き延びたというジッポラ・アリエルさん、「人間の命って生産性があるとか、どれだけお金を稼げるとか、そういうものを遥かに超えたものだと思うんです。“障害者はあまり社会の役に立たないから不要なものとみなす”ってナチスの主張と根っこが同じですよね。障害者はお荷物で、ただの“穀潰し”、障害があるということだけで生きる価値がないというナチスの考え方です」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真18

障害者の地域生活や社会進出が進み、インクルーシブ先進国とされるイタリア。そこでも、障害者の命を軽視するような議論があったと、政府の新型コロナ対策委員会のメンバーでもあるジャンピエロ・グリッフォさんは言います。

「イタリアの集中治療学会が出した提言はこうでした。『選別は残り寿命。つまり年齢やいくつかの障害のあるなしで判断すべきだ』と。それに対して私たちは、『もしもトリアージが行われるのであれば、患者ひとりひとりの臨床状態をきちんと評価しなければとダメだ』、という意見を政府に伝えました」

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イギリス在住のジョン・ハスティーさんは、新型ウイルスに関わるトリアージ基準は、合理的な体裁を整えて登場するが、実はそもそも科学的根拠がないのだと指摘します。

「私が嫌なのは、トリアージの基準が科学的根拠に基づいていないということなんです。まだ(新型コロナウイルスについての)データがない状況なんです。どんな人が回復するかも回復のスピードもわからない。確かに、“助からない命に医療資源を割くのは無駄だ”というのもわかります。でも、(助からないと)判断する根拠はなんなのでしょうか?」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真20

インドに住み、外出できない日々の生活を動画配信しているインフルエンサーのヴィラリ・モディさん、トリアージをめぐる議論には、大きな前提が見落とされていると指摘しました。

「私たち人類は、これまでにいくつもの伝染病を経験していますよね。スペイン風邪、ポリオ、はしか、天然痘、水疱瘡、エボラ、いっぱい思いつくでしょう? 実は、パンデミックに備える時間は、これまでにたっぷりあったんです。医療資材や人工呼吸器を揃えることができたはずなのに、なんで今、足りないのか? なぜ障害のある人や人工呼吸器を必要とする人が、“誰が生き残り、誰が死ぬか”、なんて話になっているのでしょうか?」

生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議 写真21

ジョン・ハスティーさんは、トリアージの議論に入る前に、立ち止まって考えてほしいと訴えました。

「トリアージありきの議論は危険です。受け入れていることになりかねません。トリアージは、本当に最後の最後の手段です。私が気になるのは、いくつもの機関が早々にガイドラインを出してきたことです。ガイドラインは、障害者を切り捨てる口実を与えているようなものです。障害者への偏見は今もあります。偏見をもとに、命を選ぶ判断がなされかねないのです」

議論を振り返り、平野みどりさんは、2006年に国連で採択された障害者権利条約の根本にある考え方をスタジオから発信しました。
“私たちの事を私たち抜きで決めないで”
“Nothing About us without us”

※この記事はバリバラ 2020年5月7日放送「生放送 新型コロナ V7★世界テレビ会議」に関連して作成しました。情報は放送時点でのものです。