ヘルパーのお仕事② ヘルパーもつらいよ アンコール
放送日
10月15日(木)夜8:00
再放送10月18日(日)0:00(土曜深夜)
出演者
大島美幸(森三中)ほか

内容
出演者
- 大島美幸さん (芸人・森三中)
- 渡邉琢さん (ヘルパー・コーディネーター/介助者の労働環境などを研究)
- 江島光男さん (寝たきり芸人「あそどっぐ」のヘルパー)
- 【電話出演】
- クロさん (番組にメールをくれたヘルパー)
ヘルパーさんの“モヤモヤ”

今回の企画のきっかけになったのが、視聴者から送られてきた“お悩み”だ。投稿してくれたクロさん(30代 ヘルパー)に電話で話を聞いてみることに!クロさんがまず“モヤモヤした”というのが、「電動車いすユーザーと道を歩いていて自分がついて行けなかったときに、その利用者にムッとされたり舌打ちされたりした」という経験。電動車いすで進むスピードは歩く人が早足でやっとついて行けるくらいのもので、坂道や長い距離を同じ速さでついていこうとすると結構大変だ。そんな中でムッとされると、「ヘルパーも人間なのになぁ」と、やるせない気持ちになるという。

もう一つは、「どこまでヘルパーがサポートすべきか」ということ。例えば、「自分が寝ている間にゴミ出しや洗濯をしておいて」という指示に疑問を感じるという。クロさんが最初に働いた自立生活センターでは、「ヘルパーは当事者の手足となって、本人ができないことを代わりに行うのが基本スタンス」と教わった。しかし、その原則から外れている実態も多いというのだ。「自分が寝ていてヘルパーが家事をするのだと、実家と変わらないのでは」「家政婦とは違うのに・・・」と疑問に思うと同時に、重度訪問介護で見守りが必要な利用者だと、寝ている間に目を離してしまうことの怖さもある。あそどっぐのヘルパー・江島光男さんも「朝起きる時間だと伝えても起きないとき、起こし続けるべきか放っておくべきか迷う」とのこと。また京都で介助に携わりながらヘルパーの働く環境について研究も行う渡邉琢さんによると、「クロさんのような『これって“自立”なの?』というモヤモヤは、ヘルパーの中でも結構話題になる」という。
ヘルパーを使った地域での暮らし 広がる中で課題も?

なぜこんなことが起きているのか?渡邉さんは“自立生活の広がり”との関係を指摘。障害者の地域生活をヘルパーが支えるというしくみが始まった20年前くらいには、サービスを受けるのは自立生活プログラム(ヘルパーとの接し方など障害者が自立生活に必要な心構えや技術を学ぶ)を受けるなどした限られた人だったためやってこられたが、制度が整い利用者が増えていく中で、「“自立していること”や“主体性”が地域で暮らすための条件ではないから、ヘルパーが戸惑うことも当然でてくる」のだという。

一方、障害者の自立生活を支援してきた玉木さんは、「生まれつき障害があって親や先生が助けてくれるのが当たり前で、言ったことは何でもしてもらえるという感覚でいると、ヘルパーとのつきあい方もピンとこないのかも」と指摘。クロさんが話していた電動車いすの件も、物心ついたころから電動車いすを使っていると、それがその人のスピードだから、一緒に歩く人にとっては大変ということに思い及ばないのでは、という。こうした前提をふまえた上で、「こういう対応をしたらヘルパーがどう感じるか」や「ヘルパーとどうコミュニケーションをとるか」など、利用者が学ぶ機会を作っていく必要があると語った。「今回の話は”耳が痛い“」と言うのは、自身もヘルパーを使って一人暮らしをする東さん。自分らしい豊かな暮らしと、ヘルパーの働きやすさを両立させるために、「(ヘルパーに)『遠慮』ではなく、『配慮』することが大事なのでは」と話していた。
「自分が望む暮らし」と「ヘルパーの働きがい」を両立させるために

実は、全国的にヘルパーは不足している。その中で、どうすればなり手を増やせるか、考え続けているのがALS患者の岡部宏生(ひろき)さんだ。NPOを立ち上げ、学生への啓発などヘルパー不足解消のための活動に取り組んでいる。制度ができても、ヘルパーがいないために地域で生きることを選択できない人を多く見てきたからだ。岡部さんのように、たんの吸引や胃ろうなど医療的ケアが必要で、さらにコミュニケーションの難しい重度障害者のケアをできるヘルパーは少ない。(写真は文字盤という透明な五十音表を使い、言いたいことを1文字ずつ目線で伝え読み取ってもらう方法。)現在は、自身が立ち上げたヘルパー事業所の職員に加え学生アルバイトなどを活用し、24時間介護を受けられる体制を維持しているが、これまでヘルパーの確保に悩んできた。

信頼しているヘルパーに「やめたい」と言われてしまった経験から、自分の思っていることを言えなくなったこともあったという岡部さん。自分が望む暮らしと、ヘルパーの働きがいを両立させるために、ヘルパーへ“寄り添う”ことも必要だと考え、言葉がけや自分よりヘルパーの食事時間に気を遣うなど、彼らを大事にすることを徹底してきた。そうした中、学生ヘルパーを卒業しても職員として介護を続けたいという人も出てきた!岡部さんは、「こんな難しいケアをしなくても、いくらでも仕事があり、しかも難しいケアをしてもお金に反映されない。介護者がどんなに高いスキルを必要とされているか、報酬がともなわない中でどうしてその人を抱えてリスクを背負いながら介護をやっているのかを、利用する側が考えて感じることが必要だ。」と語る。

岡部さんの考えを聞き、渡邉さんは、「(ヘルパーを利用する障害者が広がる中で、)知的障害や精神障害があり、落ち着いて自分のことを理解して人に何かを伝える・指示を出すこと、また相手(ヘルパー)のことを考えることが難しい人もいる。そうしたケースにも、ヘルパーは立ち向かって行かなきゃいけない。そのときに、ヘルパーが孤立してしまったら身も心もやられてしまう。それをどう支えていくか、またヘルパーの生活をどう向上させていくかが、ものすごく大事な課題だ」と指摘。みんなで考えてこの課題に取り組んでいくことが、さまざまな障害のある人たちの暮らしを支えていくには不可欠だと確認しあった。
玉木幸則のコレだけ言わせて
