これまでの放送

人種差別、日本には関係ない!? アンコール

放送日

1月7日(木)「BLACK LIVES MATTER、そして日本は」をもとにした記事です

再放送1月10日(日)0:00(土曜深夜)

出演者

人種差別、日本には関係ない!?
黒人への人種差別に抗議するBLACK LIVES MATTERムーブメント。動きは世界に広がり、大坂なおみ選手や八村塁選手ら著名人も賛同。日本でもデモ行進が行われた。一方で、「日本には関係ない話。余計な問題を持ち込むな」といった声も聞かれる。番組では日本で暮らすアフリカルーツの人たちが自らの体験を語り合う。黒人差別の歴史やメディアの問題も交えながら、日本にとってのBLMを考える。

内容


出演者

ブラックルーツを持つ日本人ゲスト

副島淳  (タレント・俳優)

ユナイス (大学生)


日本に住むアフリカ系アメリカ人ゲスト

管原アリース Alyse Sugahara(米国バージニア州出身・アーティスト)

バイエ・マクニール Baye McNeil (米国ニューヨーク市出身・作家・ジャーナリスト)

ジョン・ラッセル John G. Russell(米国ニューヨーク市出身・岐阜大学教授)



日本には人種差別なんてありません!?


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6月、東京や大阪、名古屋、京都、福岡などでBlack Lives Matterマーチが行われた。テニスの大坂なおみ選手やバスケットの八村塁選手が賛同する一方、インターネット上では、「日本には黒人差別なんてないので、Black Lives Matter、関係ありません」といった主旨の投稿が多く見られ、感染症拡散への懸念もあいまって、余計な問題を持ち込むなといった意見が拡散した。

たしかに、日本では、黒人音楽の影響力は絶大だし、スポーツ界で活躍する黒人も人気だ。リスペクトこそすれ、差別心なんてない。人種差別は、遠い対岸の火事。そんな風に思っているひとも多いのではないか。でも、本当にそうか。それは、当事者の思いにしっかり耳を傾けないとわからない。バリバラでは、ブラックルーツを持つ5人をスタジオに招き、意見を交わす。



Black Lives Matter (B.L.M.)って何?


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Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)のはじまりは、2012年のこと。フロリダ州で、Trayvon Martin(トレイボン・マーティン)さんという黒人高校生が、夜、買い物をして帰る途中、自警団の男性George Michael Zimmerman(ジョージ・ツィママン)に、不審者と見なされ射殺された事件だ。マーティンさんは、銃などは持っていなかったが、ツィママンは正当防衛を主張、無罪になった。この件を機に、黒人の命があたかも軽いかのように考えられている社会の空気、そして司法の判断に疑問を呈す「Black Lives Matter」という言葉が、SNSで拡散していった。Black Lives Matterは、直訳すれば、“黒人の命は大切だ。”となるが、もちろん、黒人の命だけが大事だと主張する運動ではない。

そして、今年5月、George Floyd(ジョージ・フロイド)さんが、白人警察官Derek Michael Chauvin(デレック・ショーヴィン)に首を押さえつけられて殺される事件が起きた。残虐な行為が動画で撮影されていたこともあり、「Black Lives Matter」運動が再熱、基本的人権の尊重、人種差別への抗議の意味を込めたマーチが全米全州、そして海外にも広がった。ニューヨークタイムズ誌によれば、米国でマーチに参加した人は1,500万人から2,600万人に上り、米国史上最大の運動になっている。



ブラックルーツをもって日本に生きる


肌の色ゆえに、感じる生きづらさがある。それは、何気ないことから、悪質で差別的なものまで様々だ。


まずは、microaggression(何気ない差別的言動 しばしば無意識に行われる)について


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管原アリース「大きな差別より、ちっちゃな言葉が積み重なって傷つけられる感じ。毎回毎回、髪の毛はあれや、肌の色はあれや、ってそんなちっちゃい言葉で傷つけるというのを microaggressionという。1回だけなら、あんまり何も感じません。けどそれが続くというのが問題ですよ。1回だけ“肌が黒いわ”という話を聞いても“黒いですね”って自分も思うけど、繰り返し聞くと“だからなんなん? なんでみんな言うの?”ってどんどん気持ちが病んでくる。」

山本シュウ「こっちはほんまに友達や思ってしゃべってんねんけど、“そこいじってるだけやん”みたいな気持ちやねん。」


黒人へのステレオタイプ(偏見)が露呈するのが就職や仕事での場面だ


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ユナイス「アルバイトの面接に行ったら、ユナが働きたいと思っていた店は、そこに来るお客さんが、外国人の人が嫌いで、『店員に、“なんであんなんおんねん”って、言ってくるお客さんがおるから、ここの店舗よりかは、こっちちょっと家から遠いんですけど、ここの店舗どうですか』って言われたときに、『じゃあいいです』と。」

山本シュウ「すいません、それ優しさ?」

ユナイス「多分面接してくれた人は、ユナが傷ついてほしくないからと、お店的にも外国人の人はNGが出てるかもしれんけど、それはダイレクトに言われへんから、ソフトにオブラートに包んで、『ここの地域はお客さんがこういう人言ってくる人が多いから、こっちにしたらどうですか』とか。すごく悲しかったです。」


管原アリース「10年前の話なんやけど、芸能事務所入ってて、外国人が沢山出演するテレビ番組で、私の場合は“ビヨンセ知ってる? ビヨンセのお尻振りできる?”って言うて、その時はまだ日本にきたばっかりの時だったし、“いやあ、知ってるよ。できるよ”ってなんも考えずにやってたんですよ。でも今思い出せば、何で私がそんなことやらなあかんかったの?他の人そういう聞いてないでしょ?絶対に。白人に“セリーヌ・ディオンの真似できるの?”って絶対聞いてないのに、何で私がビヨンセの物まねしなあかんの?と思ってすごい悔しい気持ちになってますよ。」


日本でしばしば見られるのが、白人と黒人へのあからさまな態度の違いだ。


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ラッセル「アパートを探す時にも差別がある。私が覚えてるのが私が最初に日本に来た時に90年代のことなんですけれども、アパート探す時に不動産に電話して、私がアメリカ人だとわかったら大丈夫です。アメリカ人というと、アメリカ白人というふうに解釈する。しかし、私が不動産屋に行くと、私の顔見て、想像した白人ではない。あ、黒人だ。そして断られました。」


メディアでの差別を研究するラッセル教授はSNSでの暴言を指摘する。


ジョン・ラッセル「この数か月Twitterで大坂なおみ選手がBlack Lives Matterを支援することを発表したことで、インターネットの書き込みで彼女をゴリラとか、サルとかクロンボとかという投稿が結構出てきました。2015年、宮本エリアナがミスユニバース代表に選ばれた時には、同じようにインターネット上でこういうような投稿がありました。『日本人名乗る土人女。クロンボの合いの子。安心しろ、お前はニガ―だ。日本人ではない。そして、さっさと韓国にでも帰化したらどうなんだ。ゴミ、ニガ―、ビッチ』という投稿がありました。」

ユナイス「すごい傷つきました。今この話を聞いているだけですごい胸が痛くなりました。本当に・・・ひどくて怖い。」

副島淳「身体的な暴力よりももっとすごい凶暴性のある言葉の数々。聞いてて絶句してしまった。怖いです。」

ジョン・ラッセル「これが日本人全体を代表しているわけではないが、本当に理解しがたい。」



出演者の間でも意見が割れた“黒人への褒め言葉”


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今回の出演者5名には、ブラックルーツを持って日本社会に生きているという共通点があるが、当然、“黒人であること”のとらえ方は、ひとりひとり異なる。それが如実に出た場面があった。

ユナイス「(日本人と黒人の)ハーフとして生まれて、日本で育って、ちっちゃい時、やっぱめっちゃ(悪口を)言われたけど、大人になるにつれて誉め言葉が多くなった気がしません? カッコいいとか、髪の毛きれいだねとか。」

副島淳「多分、周りもどんどんいろんな文化に触れて、それこそブラックミュージック・音楽だったりとか。そういうスポーツの世界だったりとか、すごいそういうのに憧れてで、かっこいいって言ってくれる人いるんですよ。」

一方で

バイエ・マクニール「私だったら身構えてしまう。(身体的特徴についての)褒め言葉をそのまま受け取れない。出会ったときはお互い何も知らないはずだよ。偏見なく私を知ろうとしてほしい。」

管原アリース「確かに」

バイエ・マクニール「肌の色から何も判断しないでほしいんだ。ぼくは“クール”じゃない。全然“クール”じゃないよ。もちろん“危険”でもない。お互いの人となりって話しながら理解しあうものでしょう」

ジョン・ラッセル「落とし穴があります。例えば、スポーツ界でハーフの人たちがけっこう活躍してます。でも、誉め言葉としては“(ハーフだから)運動神経が優れてる。” 個人的な努力じゃなくて、“そうか、黒人の血が入ってるからスポーツがうまい”というように思われてる。やっぱり、まだステレオタイプの落とし穴が根深く残ってると思います。」

山本シュウ「それいうたらあれですね、僕の中に入っているわ、黒人さんていうだけで、バスケットうまいんかなとか、ブラックミュージック好きやけど、え、ちょっと待って! なんか大切なものをずっと置き忘れてきてるんちゃうか?っていうのを、今日はものすごい思ってる。」



5分でわかるアフリカ系アメリカ人の歴史


管原アリースさんは、米国バージニア州の海沿いの町の出身だ。そして、その生まれた場所のすぐ近くが、アメリカにおける長い黒人差別はじまりの舞台となった。放送後、「子どもにもわかりやすい。」「説明と気持ちが入っていて、心に響く」と反響の多かった管原さんによる紙芝居がこちら。


<紙芝居>



キング牧師とバリバラ


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番組の最後、Baye McNeil(バイエ・マクニール)さんは、Martin Luther King Jr.(キング牧師)の有名な言葉を引用する、“Injustice anywhere is a threat to justice everywhere”(どこか一カ所にでも不正義があるであれば、それは、全ての人にとっての正義を脅かす。)マクニールさんは、これを言い換え、“ある一つのマイノリティーが不当な扱いを受けているのであれば、他のマイノリティーも同じような不当な扱いを受けているのではないか”と話した。だからこそBlack Lives Matter運動には、黒人ではないLGBTQの人たちなどにも広がっているのだと。これを受けた番組コメンテーターの玉木幸則は、“(Black Lives Matter運動が)日本でも、やっぱり障害のある人とか在日外国人の人とか、アイヌの人とか、いろんな人が、いわゆる属性を越えて、人権の戦いとして大きく動いていったらいいな。” と続けた。


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番組収録直後、マクニールさんはディレクターにこう感想を言った。「前回の収録と、同じような話が多かったね。」前回の収録とは、「Black in Buraku ~アフリカンアメリカン、被差別部落をゆく~」(2020年2月6日・13日放送)のことだ。マクニールさんたちアフリカ系アメリカ人の視点をかりて、日本の被差別部落のことについて取り上げた。そこでも、結婚や家族にまつわる差別、周囲からうける無意識の差別的言動(microaggression)などが話にあがっていたのだ。いろんな出自のひとたちに対して、いろんな差別や偏見があるけれども、根本は似ているところも多いのかもしれない。

バリバラとしては、マクニールさんの言葉をさらに言い換えたい。“あるマイノリティーへの差別がなくなれば、ほかのマイノリティーだって生きやすくなるはずだ”