ストーリー
昭和の始めから戦後にかけて、きわめて制約の多い時代に、人生を自分の意思で選び取った一人の女性がいた。本を読むことが好きな文学少女、万亀(まき)。進学、就職、結婚という人生の岐路で、夢や希望が何度も現実の壁にぶつかりながらも、常に読書を心の支えに、ユニークな発想としなやかな強さで、明るくたくましく人生を生き抜き、故郷で小さな本屋を開くまでの万亀の半生記。
また、この物語は、万亀たち四人姉妹、彼女の母(老舗和菓子屋女将)、祖母の年代記を縦軸に描く、三代にわたる女達の家族の物語でもある。
不況の時代を生きる現代の若い女性たちに、知恵と勇気と優しさを与える主人公万亀のハツラツとした生き方を、ぶどう、桃などの季節の移ろう山梨、東京、福島の相馬を舞台に、描く。作家・林真理子の実母をモデルにした小説のドラマ化。
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各回のあらすじ
第1回「最高の夏休み」
昭和の始め、甲府に近いある町の和菓子屋・小川屋。女将の芙美(涼風真世)と旦那の隆吉(田村亮)の末娘・11歳の万亀(まき・斉藤奈々)は本を読むことが何よりも好き。ある日、良蔵(松方弘樹)のワイン蔵を訪ねた万亀は、良蔵の息子・末吉に「万亀の生まれ年仕込みのバースイヤーワインを、大人になるまでとっといてやる」と言われる。夏祭り、興業のために旅を続ける猿回しに、万亀は哀しさを覚え号泣。夏休みの作文「猿回し」を書く。
第2回「幸福の赤い鳥」
女将として苦労続きの母・芙美が、仕事をしない父・隆吉に不満を持たないのが、万亀には不思議だった。そんな父が死んだ。母は泣き崩れたが、強かった。「頼る父親がいないからこそ、子供達は自分で生きていけるようにしてやらんと」。そういう母・芙美を、万亀は素敵だと思う。万亀の作文が雑誌・赤い鳥に掲載される。数年後、葡萄畑で一人の女学生が本を読んでいる。15歳になった万亀(菊川怜)だ。
第3回「ワイン美人選考会」
友達の出来ない万亀(菊川怜)だが、何事にも縛られず自由に生きる艶子(原沙知絵)との交流が始まる。ワイン宣伝のために末吉が企画した「ワイン美人選考会」で艶子が優勝。一方の万亀は「本がたくさん読める」と進路に女子大を希望するが、校長の反対で東京の女子専門学校に決定。万亀が上京する汽車に、東京で一旗あげようという末吉、映画女優志望の艶子、ジャズを志し小川屋を飛び出た秋次も乗っていた―。
第4回「東京はパラダイス?」
万亀(菊川怜)の東京での学校生活が始まった。周囲のハイカラな雰囲気になじめず、戸惑う万亀を艶子が訪ね、東京に負けるなと励ます。トランペット吹きとしてステージに立つ秋次、田部葡萄酒・東京営業所を開設した末吉、それぞれの夢が動き始めるなか、万亀は孤独を募らせる。そして三女の朝美は、見合いの席から飛び出し、万亀の前で恋人と駆け落ちして行くのだった…。
第5回「さすらいの乙女」
駆け落ちした朝美と、相手の小林が帰ってきた。自分の力で人生を歩む朝美に対し、万亀(菊川怜)は自分が心もとない。卒業間近なのに進路を決めていない万亀に、花村校長は福島県相馬の女子青年学校教師の口を勧める。決心する万亀。東京を離れる前夜、艶子・末吉と乾杯の時、万亀への思いを胸に、万亀の気持ちを探ろうとする末吉。しかし、万亀は末吉の思いに気付かず…。
第6回「相馬のまんかめ先生」
万亀(菊川怜)は福島県相馬の女子青年学校教師となった。子供達に読書を勧める万亀だが、父母の一人・忠三郎が反発。本を買って貰えない子供達のために、万亀は読書会を開く。一方、小説家を目指す艶子は人間観察のためダンスホールでダンサーをはじめ、末吉は出版社社長の坂田に目をかけられ、ワインの販路を広げる。そんなある日、万亀をクビにしろと忠三郎が主張、授業のボイコット騒ぎが起こる。
第7回「赤い鳥逃げた」
「読書なぞ働くことの邪魔になる」という忠三郎は、「お金より大事なことが本には書いてある」という万亀(菊川怜)の説得を受け入れ、応援者になる。そんな万亀を末吉が訪ね、日本中にワインを広める夢のため、自分の妻になる人には朝から晩まで働いて貰うと言う。本ばかり読んでいる自分には無理、と応える万亀。やがて、末吉が婚約したとの報せが届く。時代は戦争の色を帯び始め、万亀の青春も終わりを告げようとしていた…。
第8回「万亀のお見合い」
万亀(菊川怜)のもとに芙美から、福が病気になり看護の手が足りないので、帰ってきてほしいとの手紙が届く。万亀は職を辞して帰郷する。そして、小川屋での生活を始めた万亀に見合いの話が整う。渋々と見合いをした万亀だが、先方から「学問がありすぎて恐れ多い」と断りが入る…。
第9回「運命の人」
上京した万亀(菊川怜)は、近所の食堂で高瀬(錦織一清)と再会する。二人は日曜日ごとにその店で顔を合わせる。そして万亀の働き口が、坂田の出版社に決定する。一方、艶子の父である仲川紡績産業の社長が亡くなり、艶子は自分が社長になると宣言、それを聞いた秋次も小川屋へ戻ることを決意する…。
第10回「葡萄は兵器?」
太平洋戦争が始まり、配給所となった小川屋で万亀は働いた。そして満州へ去った銀行員・高瀬が万亀の前に現れ、万亀にプロポーズ。しかし祝言の日、高瀬に赤紙が来る。「世の中が変わっても僕らは本を読もう」と言い、高瀬は出征した。そして水中音波探知機製造に必要な酒石増産のため、軍人が来る。反抗する末吉に良蔵は言った。「お国の役に立ってるから葡萄畑は潰されんのだ―」。ワインに石灰が混ぜられていった。
第11回「焼け跡の本屋」
昭和20年。万亀の夫の消息は知れなかった。そして、万亀の息子・重太郎が高熱を発し逝ってしまう。万亀を励まそうと艶子・末吉が集まったその時、空襲が始まる。そして終戦。闇市で生計を立てる万亀。一人の学生が、万亀の本を指し「それも売り物か」と訪ねた。「みんなお腹も空いているけど、心も空いている。カラカラの心に水をやりたい」。万亀は本屋を開いた。最初の客は、復員してきた夫だった…。