自殺について語ろう

桂城舞(かつらぎ・まい)さん (前編)

何でこんなに、遺された自分たちを
責めてしまうようになったんだろう。

3年前に、お父さんを自殺で亡くした桂城さんは、現在大学3年生。今年7月1日に開かれた「自殺を『語ることのできる死』へ ~自殺対策新時代 官民合同シンポジウム~〈注1〉」の第1部に登場し、自らの思いを語ってくれました。
(2008年度掲載)

ほかと変わらない
ごく普通の家族だった。

私の家族は、私、弟、妹、父、母の5人家族でした。子どものころは、まるで絵に描いたように仲が良くて、幸せな家族だったと思います。休みのたびに、キャンプや旅行に行っていました。父もすごくやさしくて、私がやっていたバスケの試合などでは、ほかのお父さんに負けないくらいすごくがんばってくれた、私の自慢のお父さんでした。
そのお父さんが有限会社を設立したのが1995年のこと。家族で新しいお父さんの事務所を見に行ったとき、「世界を駆けめぐるような、大きな会社にしたい」とうれしそうに言っていたのを、よく覚えています。2年後には、株式会社にまでなりました。
すべてが順調で、今にして思えば、あのころの私たちが一番幸せでした。

あんなに強かったお父さんが
自殺なんてするわけない。

私が高校3年生になった、その7月のこと。いつも通り授業を受けていたら、突然先生が飛び込んできて、「お父さんが亡くなったから、急いで家に帰りなさい」と。はじめは先生が何を言っているかわからず、とにかく家に帰る途中も「なんでお父さんが死んだんだろう。絶対ウソだ」とそればかり考えていました。
でも、家に帰ると親戚が集まっていて、お母さんが「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きわめいている。そこへ、親戚から連絡が入りました。「落ち着いて聞いてほしい。お父さんはね、会社の駐車場で、車の中で練炭を炊いて、自殺したんだよ」。それでも、私は、「何を言っているんだろう。あんなに負けず嫌いで、強いお父さんが、自殺なんてするわけがない」と思っていたのです。

最後に持っていたのは
小さなノートと2000円。

父は、ドライアイスの袋に入って、運ばれてきました。そんなお父さんを見ても、まだ信じられなくて、父の顔を見られなくて……。父はただ寝ているだけのようで、今にも起き上がって、声をかけてくれそうな気がしました。
お葬式のあと、私は父に何があったのかを知りたくて、父が持っているものを一生懸命に探りました。最後に持っていたのは、一冊のノートと2000円しか入っていない財布でした。
ノートに書かれていたのは、「7月4日、今日も山に来た。死にたい。でも死ねない。」「今日も死ねない。死ぬのがこんなに怖いのか」……。あの強かったお父さんがこんなことを思っていたのかと考えると、今でも胸が張り裂けそうです。2000円しか入っていない財布を見たときも、辛くてたまりませんでした。

〈注1〉自殺を『語ることのできる死』へ ~自殺対策新時代 官民合同シンポジウム~
自死遺族全国キャラバンをスタートするにあたって、今年7月1日に開かれたシンポジウムです。

「自死遺族全国キャラバン」とは……
2006年の「自殺対策基本法」、2007年の「自殺総合対策大綱」を受けて、自死遺族支援をテーマにしたシンポジウムを47すべての都道府県で開催していくプロジェクトです。

  • 自殺総合対策の理念を全国(それぞれの地域)に根付かせること
  • 全47都道府県で「自死遺族のつどい」設立のきっかけを作ること
  • 「1000人の声なき声に耳を傾ける」調査との連動により自殺実態を解明すること
  • 官民学の枠を超えた自殺対策関係者の連携基盤を各地域で構築することを目的としています。今回ピックアップした東京大会のほか、47都道府県で随時開催される予定です。

詳しくは、プロジェクトチームの事務局をつとめる「ライフリンク」のホームページ(別ウインドウ ※クリックするとNHKのサイトを離れます。)へ。

「自殺対策基本法」とは……
「自殺は、個人的な問題としてのみとらえるべきものではなく、その背景に様々な社会的要因があることを踏まえ、総合的な対策を早急に確立すべき」との方針で、2006年に施行された法律。自殺の防止や自殺者の親族への支援など、「自殺対策の総合的な推進」を図るとしています。

「自殺総合対策大綱」とは……
2007年6月に閣議決定された、政府が推進する自殺対策の指針のこと。「社会的な取り組みによって、自殺は防ぐことができる」ということを明確にしています。今後、国は地方公共団体や民間団体と連携しつつ、自殺対策を推進していくとしています。
「自殺対策基本法」「自殺総合対策大綱」全文は「自殺対策ホームページ(別ウインドウ ※クリックするとNHKのサイトを離れます。)」へ。

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