自殺について語ろう

禧久 孝一(きく こういち)さん

奄美市役所で市民生活係長を務め、市民の借金、相続、離婚問題など生活に関わることはなんでも相談にのる。特に多重債務者からの相談は多く、禧久さんが18年間で受けた相談はおよそ6000件。しかし、キクさんの元に相談にきた後に、借金苦で自殺した人は一人もいない。禧久さんの取り組みは、多重債務対策や自殺対策のモデルとして、全国から視察が相次いでいる。
(2008年度掲載)

禧久 孝一さん(50代 男性)からのメッセージ

『救うことの出来る命がある』
「救う」という言葉を使うのを迷いましたが、あえて使わせていただきます。
私は奄美市役所で相談業務を担当し21年目になります。最も多いのが「多重債務」に関する相談です。
私のように長年相談業務に携わる者や弁護士・司法書士の皆さんのなかには「自殺」と直面した方がたくさんいます。それは、毎年7千人以上の方が「借金苦」で命を絶っているからです。

平成18年以降、全国から助けを求める電話や手紙が来ます。なかには自殺未遂者、既に遺書を書き終えていた方、電車に飛び込む寸前の方もいました。
私は、遠方の方には自分の携帯で対応します。債務の内容・収入・資産・生命保険の有無・家族構成・健康状態などを聞き取り、その日か翌日には相談者の近くの弁護士か司法書士を紹介します。

相談時に「いっそのこと死にたい」「死ぬことが出来たらどんなに楽だろう」などという方もいますが、多くの方は、債務整理が終わった後、電話や手紙で「命を救ってくれてありがとう」とか「絶望の中から抜け出し、希望を持つことが出来ました」などと報告します。

本当に死にたいという方は一人もいませんでした。
借金を整理する(債務整理)ことは、法律専門家のもとでは困難なことではありません。むしろ「この世で出来た借金で解決できないものはない」と思ってもらっても結構です。つまり、解決できることが原因で、命を絶つことはないということが言えるのではないでしょうか。

私の相談者のなかに、事業に失敗し、多額の債務を抱え、鬱病を患い自殺を試みた方がいますが、根本の問題を解決し、いつでも相談できるという環境を整えた結果、鬱病も治り、現在は服薬の必要もない方がいます。「生きたい」という命があるのであれば、その声に耳を傾け、理解し、解決のレールに迅速に導き、そして寄り添うことが大事だと思います。

「たった一つの命」その大事な命を保つために法律専門家も立ち上がっています。
救うことの出来る命が失われている、というのが今の日本です。
皆さん、大切な命を保つことができる社会をつくるために、それぞれの立場で、今私は何をすべきか、何が出来るかを考えてみませんか?

 
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