これまでの障害者ドキュメンタリー番組のイメージを覆したい!

バリバラ

毎週日曜[Eテレ]後7:00

障害者にまつわるテーマに切り込む情報バラエティー「バリバラ」。2016年4月からは、障害者に限らず「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティー」にテーマの幅を広げ、その鋭い視点が多くの反響を呼んできました。番組には毎回、さまざまな立場の意見が寄せられます。ワタクシ変わりネタ〔PR555号〕も「当たり前だと思っていたけど、そう言われると……」と考えさせられることばかり……。

そんな「バリバラ」は、一体どんなきっかけでスタートしたのでしょうか? そして、番組が目指す目標とは何なのでしょう?? 番組を担当する真野修一チーフ・プロデューサーに聞いてきました!

「障害」があるのは、個人ではなく社会

──「バリバラ」誕生のきっかけは?

もともと福祉番組「きらっといきる」(1999年4月~2012年3月)の番組内企画として、2010年4月からスタートしました。

当時、チーフ・プロデューサーを務めていた日比野和雅さんによれば、これまでの障害者ドキュメンタリー番組では、「感動した」「勇気をもらった」という健常者からの声は多く届く一方、当事者からは「頑張っているエリート障害者ばかりが出ている」という意見が寄せられ、どうすればそのイメージを覆すことができるのだろうかと議論を始めたことが、誕生のきっかけになったとのことです。

例えば、恋愛をするとか、喫煙をするとか、日常の“リアルな姿”や、素の面白い部分を伝えられていない。ドキュメンタリーではそうした部分をきちんと描けないのではないか。そんな思いから、彼らの等身大の姿を伝える方法を模索する中で、バラエティーの手法を取り入れて番組をつくろうとなったそうです。


──毎回の番組づくりで、気をつけていることはありますか?

立ち上げ時の基本的な精神を引き継ぎ、当事者の目線で考えることを大切にしています。当事者にとって本当に必要な情報を伝えるため、企画をつくる際には玉木幸則さんはじめ、出演者の皆さんから意見を伺うこともあります。そして、健常者も当事者も関係なく、それぞれが感じていることを、きちんと本音で話すことが一番大事だと思っています。

また番組としては、「障害」があるのは社会の側であって、当事者はそれを乗り越えるための努力が強いられているという考えが基本にあり、その気づきを与えられるように気をつけています。健常者の側から見ると、障害者は“頑張っている人”となりますが、当事者からすると“頑張らざるをえない”だけなんです。

かわいそうだ、頑張れ、ではなく、頑張らないと生きていけない“社会”にバリアがあるから、そこを変えることでバリアフリーにする。そんなメッセージを送っていきたいと考えています。

番組を引っ張る「バリバラ」のレギュラーメンバー。左から、大西瞳さん、玉木幸則さん、大橋グレースさん、山本シュウさん。
番組を引っ張る「バリバラ」のレギュラーメンバー。左から、大西瞳さん、玉木幸則さん、大橋グレースさん、山本シュウさん。

──番組から投げかけたメッセージに対して、反響はいかがでしょうか?

最近だと、相模原市の障害者殺傷事件を取り上げた際に、これまでで一番多くの反響がありました。普段は当事者や関係者からのメールが多いのですが、この時は本当に様々な方から意見が寄せられました。番組で紹介した東京大学の福島智教授の「私たちと容疑者が全く無関係ではない」というメッセージが響いたのではないかと感じました。

ほかにも「こういう問題も取り上げてください」というご意見や、ときには「私も出たいです!」というご要望をくださる方もいらっしゃいます。

多くの人を「ドキッ」とさせる番組にしていきたい

──番組を担当されるなかで、新たに気づかれたことなどはありますか?

この番組は、収録前の打合せがとにかく“熱い”ですね。疑問点や、当事者目線になっていない部分については、出演者だけでなくスタッフ全員でトコトン話し合って本番に臨みます。そんな熱があるからこそ、この番組が出来ているんだと感じます。

また、これまでドキュメンタリー番組を担当してきたので、ゴールに向かって物語を紡いでいくという方法論が染みついていたのですが、この番組は理想論ではなくちゃんと踏み込んで本音で議論をしていくことを大切にしているので、起承転転という構成でもいい。そうすることで視聴者に考えてもらえるということも一つの気づきです。

マイノリティーにまつわるジャーナルな話題も、バラエティーの土壌に載せることでより身近に感じられるので、「演出」がより重要になっている番組でもあります。例えば、今年施行された「障害者差別解消法」をどうしたら興味を持って理解してもらえるかとか、「障害者虐待」の問題をどう身近に感じてもらえるかといったことがあります。


──最後に、今後の番組の展望や目標について教えてください。

番組がスタートして今年で5年目。4年をひとつの区切りと捉え、今年度から次の2020年に向けては「多様性」をキーワードにしています。

これまでは「障害者のための」とうたっていましたが、対象を「すべての生きづらさを抱えたマイノリティー」へと広げたので、「みんなちがって、みんないい」を合言葉に、今後は貧困や虐待、在日外国人の問題などにも積極的に取り組んでいきたいと思います。

また、“表現”もより多様な手法に挑戦していくつもりです。これまでも情報バラエティーとして、人気番組のパロディー的な演出やドラマなど、当事者が抱える問題をさまざまな表現で伝えてきましたが、それに加えて社会問題などジャーナルな分野でも敷居を低く、見ている人が考えるきっかけとなるよう表現や演出を工夫していきます。「どうやったらより多くの人をドキッとさせ、考えてもらえるか」を考えていきたいです。

最近の試みとしては、たとえば、バリバラ内で放送したドラマ『アタシ・イン・ワンダーランド』では、主人公の横田美紀さん以外は、登場人物全員がその施設の利用者や関係者の皆さんが演じました。舞台も本物の障害者施設を使用し、ドキュメンタリーとドラマの間のような実験的なドラマに挑戦しました。

そして引き続き、マイノリティーにまつわる事件や法律など社会の動きにも触れつつ、時には当事者によるリポートを行うなど、“ならでは”の視点を大切にしながら、視聴者をドキッとさせる番組をつくっていけたらいいなと考えています。

見過ごされがちな人々や問題をそのままにするのではなく、「バリバラ」はそういったことをあらゆる手法でワタクシたちにぶつけてきて、“考えるきっかけ”を与えてくれます。

取り上げた番組はこちらです!

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