争いが生んだ “心の傷”に寄り添う日本人たち

♢明日世界が終わるとしても

3月15日(水)[BS1]後9:00
3月16日(木)[BS1]後9:00

2011年から続く内戦で、国外に逃れた難民は約490万人──「今世紀最悪の人道危機」と言われる中東のシリア。そして、23年前、政府とフツ過激派によるツチの「虐殺」が起こり、約80万人が犠牲になったとされるアフリカのルワンダ。

日本から遠く離れたこれらの土地で、個人で支援活動を行っている2人の日本人がいます。隣国のヨルダンに住み、家族ぐるみでシリア難民の支援を行う田村雅文さんと、ルワンダで10年以上も現地の人々と向き合う佐々木和之さんです。

3月15日(水)、16日(木)に放送する「明日世界が終わるとしても」では、世界が直面する課題に現地で真正面から向き合う彼らの姿を、2夜連続でお届けします。

近江真子プロデューサー、そして現地へ取材に行った三浦茉紘(まひろ)ディレクター、加藤 麗(うらら)ディレクターに、番組への思いやシリアとルワンダの現状を伺いました。

「強い信念」を持ち続ける人を追いかける

──「明日世界が終わるとしても」は、どんな番組ですか?

近江:番組タイトルの「明日世界が終わるとしても」はドイツの宗教改革者であるマルティン・ルターが残した言葉とも言われますが、“たとえ明日世界が終わっても、私はりんごの木を植える”──つまり「自分がやるべきこと、やりたいことをやる」というメッセージが込められています。

その言葉のままの生き方を実践している“人物”にスポットを当てたドキュメンタリー番組です。登場するのは、「世間に認められなくても自分の信念を貫く」という強い信念を持って困難に取り組む姿勢が、周囲に共感や感動を与えている、そんな方を取り上げています。

モノで解決できない、傷ついた人々の心を救う道を模索

──まず3/15(水)放送の「シリア」の回ですが、登場する田村雅文さんはどんな方ですか?

三浦:田村さんは個人的に支援団体を立ち上げて支援を行っています。平日の昼間はサラリーマンとして働き、夜や週末は支援活動をしている、エネルギーの塊のような方ですね。

10年前に青年海外協力隊としてシリアで活動しており、土地柄に魅了されたと伺いました。その後、2011年に内戦が始まり、「シリア人のために何かしたい」という気持ちを胸に現地へと向かったそうです。現在、シリアには入国できないので、シリア南部に隣接するヨルダンで活動されています。

田村雅文さん
田村雅文さん

──シリアやヨルダンは今、どのような状況なのですか?

三浦:1月23日に和平協議が行われ、国際連合は一部紛争の収まった地域から復興を始めていこうという指針を示しました。これは、アサド政権が圧倒的に優位な立場で内戦6年目の大きな節目を迎え、“戦後”の話をする段階になったことを意味します。政権の迫害や空爆で祖国を追われたシリア人にとって、ある意味では、もう国に帰れないという現実を突きつけられた“決定打”でもあるんです。

ヨルダンは戦闘地域ではないので、明らかな身の危険を感じることはありませんでした。しかし、6年間続いた戦争の疲れが人々から活気を奪っていることは確かです。また、“証言が生死に関わる”という怖い状況もあり、“政治を語れない”という独特の雰囲気を感じました。

取材を通して出会ったシリア国内に在住の30代シリア人女性の「この世界に正義はない、ただ平和を望むことが私の正義」という言葉が印象に残っていますね。「愛すべきシリアを実現するために何をすべきか」──そんな話をするなかでの言葉です。複雑を極めるシリアの内戦は、多くの人が涙を飲み、怒りを抑えることでしか平和を望めないのです……。

シリアの街並み
シリアの街並み

──そんな状況で、田村さんはどのような活動をしているのでしょう?

三浦:戦争は、形式上は調印などで終結できますし、物資などの支援もできますが、「調印」や「支援」では傷ついた人々の感情を癒すことはできません。私は2017年1月に三週間ヨルダンに滞在し、田村さんの活動を取材しました。

田村さんは5年間、対話を通して市民に寄り添い本当に必要なものを探し求め、小さな幸せを少しずつカタチにしています。奥さんもシリアにいた経験がある方で、家族ぐるみで現地の人々と交流し、本音を聞き出せる関係を築いていらっしゃいます。

アフリカの奇跡・ルワンダ、和解から生まれた“ひずみ”

──3/16(木)の放送は「ルワンダ」ですが、現地の状況はどうでしたか?

加藤:「ルワンダ虐殺」の印象が強く、「危険な状況が続いているのでは?」と考える方が多いと思います。ですが今、ルワンダの治安の良さはアフリカ随一と言われており、国外からの信頼も厚く、海外からの投資も活発です。国内では情報通信産業に力を入れ、経済復興を目指している状況ですね。

現地のルワンダ人と話していても「その辺に荷物を置いても大丈夫。誰も盗まないから!」と言われるくらいです(笑)。虐殺から23年が経ち、和解も進んで、今はとても平和な国です。

しかし皮肉にも、和解ムードのかげには“ひずみ”が隠れており、番組では焦点を当てています。

ルワンダの子どもたち
ルワンダの子どもたち

──“ひずみ”とは、どういうことですか?

加藤:ルワンダ政府は、被害者と加害者の和解を積極的に呼びかけてきました。しかし、被害者はいまだに後遺症やフラッシュバックで苦しんでいます。さらに加害者が同じ村に再び戻ってきていて、被害者の隣が加害者の家という場合もあります。その結果、被害者は「和解して、相手を許さなくては」と言い聞かせながら生活しているんです。

加害者側も「服役したし、虐殺に参加しなければ、自分や家族が殺されていたからしょうがない」と自分に言い聞かせている人が非常に多いんです。お互いにわだかまりが残ったままなんですよ。その状況を乗り越える道を模索しているのが、番組に登場する佐々木和之さんです。

──佐々木さんは、ルワンダでどのような活動をしているのですか?

加藤:セミナーなどを通して、被害者と加害者がお互いに自分の気持ち打ち明けあう機会をつくっています。時間をかけて、静かに耳を傾けるという姿勢ですね。

「ルワンダ虐殺」の内実は、人口約800万人のうち、およそ80万人が被害者。数が多く、心のケアまで手が回らないという実情があります。そんななか、佐々木さんは信念として「被害者と加害者がお互いの心からの気持ちを伝えあわなければ、本当の和解は成立しない」と言っています。

佐々木和之さん
佐々木和之さん

その土地で生きる人々の暮らしと、日本人の奮闘ぶりを届けたい

──視聴者の皆さんには、どのように番組を見ていただきたいでしょうか?

近江:シリアとルワンダ、どちらも一見すると重いテーマですが、決して暗い内容ではありません。番組に登場する人々の姿を見て、「自分がやるべきこと、やりたいこと」を見つめ直すきっかけにしていただきたいです。

三浦:私はシリアの現状と、田村さんの姿をぜひ見ていただきたいですね。シリアの難しい情勢を、現地の人々に近い目線で伝えられればと思います。また田村さんの活動は、専門的な技術や知識を必要としない“誰にでもできること”でもあります。たとえ1人でも、行動すれば誰かを救うことができる──「泥臭くがんばることは無駄にならない」というメッセージを届けたいです。

加藤:ルワンダは日本から遠く離れた地域ですし、「隣人同士の殺し合いがあった野蛮な土地」というイメージがあるかもしれません。しかし、ジェノサイドは“人間の心の弱さ”が起こした悲劇です。
佐々木さんの活動の結果、当事者同士がきちんと向き合い、虐殺のトラウマから解き放たれた人々も現れています。ルワンダの人々が持つ未来への希望を、佐々木さんの活動を通して伝えたいですね。

三浦ディレクターと加藤ディレクターは、そろって最後に「その土地で生きる人々は、私たち日本人と変わりませんよ」とも話してくれました。「ニュースで耳にするけれど、内情をきちんと知らない」という方も、現地で活動する日本人の生き方に共感できる部分があるのではないでしょうか。

「明日世界が終わるとしても」は、3月15日(水)・16日(木)の2夜連続放送です! ぜひご覧ください。

取り上げた番組はこちらです!

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