潜水撮影歴25年のカメラマンが語る、過酷な撮影の裏側

♢NHKスペシャル

5月13日(土)[総合]後9:00
5月18日(木)[総合]前1:00(再放送)

ロシア・ウラル地方にある“世界一美しい”といわれる水中洞窟・オルダ洞窟。50メートル先も見通せるほど透明度の高い水で、地球上とは思えないほど神秘的な空間が広がっています。

NHKスペシャルでは、NHKの「潜水撮影チーム」が捉えた、水中洞窟内の映像とそこに隠された驚くべき秘密をお届けします。

気温がマイナス40度まで下がり、水温は5度という極寒の土地での撮影には、さまざまな困難があったとか……。現地で撮影に挑んだ、高野克彦チーフ・カメラマンに撮影の裏側を聞いてきました!

ベテランカメラマンも苦戦した、オルダ洞窟での撮影

――撮影前に、どんな準備をしましたか?

私は約25年間、潜水撮影の経験があるのですが、洞窟での潜水は海や川とはまったく違います。洞窟での撮影は大きな危険をともなうので、ライセンス(免許)を取得しなくてはいけません。まず日本で4日間の基礎訓練をおこない、その後アメリカのフロリダ州でさらに8日間の訓練を積み、それからオルダ洞窟の撮影に臨みました。

訓練は、まず陸上でおこないます。洞窟内では迷わないようにロープを岩に結びながら進むのですが、木を岩に見立てて同じように進む練習をします。それも、目隠しをして……。洞窟にはライトを持っていきますが、途中でライトが消えたり泥が舞い上がったりして視界が塞がれてしまう場合があるので、訓練も目隠しをしておこなうんです。また、洞窟内では空気残量も気にしないといけないので、決められた時間内で作業ができるよう何度も練習をして、ようやくライセンスを取得できました。なかなかハードな訓練でしたね。

――初めてオルダ洞窟を訪れたときはいかがでしたか?

とにかく寒かったです(苦笑)。ロシアにあるオルダ洞窟は、外気温がマイナス40度の世界。水温は5度ですが外気温が低く身体が冷えているので、とても寒く感じます。

潜るときにはドライスーツという特殊なスーツを着て、グローブも水が入らないものを使うのですが、ぶ厚すぎて命綱となるロープをつかむ感覚がほとんどなくて非常に困りました。そのため、ライトやカメラなどの機材の扱いも非常に難しく、ポケットから物を取り出す簡単な動作にも苦戦しましたね。これは現地で初めて分かったことだったので、とても戸惑いました。

また水から上がった瞬間にスーツが凍りついてしまうので、スーツを脱ぐにもお湯をかける必要があります。

現地に行ったあとも、問題なく撮影できるようになるまで徹底的に訓練し、本番に臨みました。

――ほかに、大変だったことはありましたか?

ほかの水中洞窟では見ることができない巨大な空間を撮影したのですが、どの角度から撮るべきか、どこからライトを当てるべきかを検討するため、何度も潜って下見に行きました。本番では我々とロシア人ダイバー合わせて12人が参加し、しかも全員が集まれるのは3日間だけと限られていたので、準備にはかなり時間をかけました。

水中では言葉をかわせないため、身振りでしかコミュニケーションを取れません。一人でも動きを間違えると失敗してしまいます。ロシア語と日本語で通訳を介しつつ意見交換をするためミーティングには6時間かかりましたね。

ダイバーたちとの打ち合わせ風景
ダイバーたちとの打ち合わせ風景

現地のロシア人ダイバーも驚いた、神秘的な光景とは

――オルダ洞窟での撮影の感想を教えていただけますか?

訓練で潜った他の水中洞窟と比べても、オルダ洞窟はとにかく水がきれいですし、洞窟内がとても広い。いままで潜ったどの洞窟とも違う、神秘的な空間でしたね。

ただ、潜っている間はやはり怖いです。大人がやっと通れるくらいの狭い隙間を進んでいくときは、底にたまった泥を舞い上げてしまうと視界がなくなるので、かなり神経を使います。さらに、撮影もしなくてはいけないので、常に集中した状態を維持しなければならないのです。

いちばん怖かったのは、撮影に集中しすぎるあまり先頭にいたダイバーたちから取り残されてしまったことです。ロープをたどれば帰れるのですが、もし呼吸するための機材が壊れたら仲間に助けてもらわなくてはいけないので、はぐれてしまうのは非常に怖いんですよ。

ロケが全て終わった後は、安心のあまり一気にチカラが抜けましたね(笑)。心の底から「生きていて良かった!」と思いました。

――いちばん印象に残っていることは何でしょうか?

やはり巨大空間の撮影ですね。あの暗闇を照らした瞬間は、今まで見た中でいちばん美しい光景でした。

撮影は基本的にカメラ1台、多くても2台でおこないます。というのも潜水中は撮影に集中するカメラマンがいちばん危険なので、サポート役が必ず一緒に潜るんです。カメラマンが増えるほどサポートも増やさなくてはいけないので、基本的にはカメラは1台で撮影していました。

水が冷たいため、潜水時間は限られます。その中でさまざまなカットを撮らなくてはいけません。失敗は許されない状況でした。

番組では真っ暗な広い空間にライトが灯っていくシーンがあるのですが、無事に撮れた瞬間は「やったぞ」(ガッツポーズ)と思いましたね。

圧巻の映像は、ぜひ番組で!
圧巻の映像は、ぜひ番組で!

――どんな映像が見られるか、非常に楽しみです!

番組でも詳しくご紹介しますが、洞窟内はいまも崩落が続いていますし、潜っているあいだも天井がパラパラと崩れていました。入り口付近も不安定な状況なので、オルダ洞窟はいつ入れなくなってもおかしくない洞窟なのです。

今回、これだけ大規模に撮影を行ったのはロシアでも初めてだそうです。長年オルダ洞窟に潜っているロシア人のダイバーたちも「洞窟のこんな姿は初めて見た!」と興奮していました。

ほかでは見ることができない映像を捉えられたと思いますので、放送を楽しみにしていただければと思います。

洞窟の入り口はこんな穴! まず降りるだけでも怖いです…
洞窟の入り口はこんな穴! まず降りるだけでも怖いです…

写真で見るだけでもすばらしい洞窟だとわかりますが、これを映像で見られるのがワタクシも楽しみです! 番組ではさらに、この知られざる洞窟の成り立ちや、ダイバーたちの物語もお伝えします。まだ誰も目にしたことがない圧倒的な映像美を、ぜひご覧ください!

【再放送】5月18日(木)[総合]前1:00

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