雪深い鉱山町にやってきた流れ者のマッケーブは、男勝りのしょう婦・ミラー夫人と賭博場を開きます。共同経営で店は繁盛し、町はにぎわいますが、鉱山会社の買収を断ったため、命を狙われます。そして、降りしきる雪のなかで決闘が…。
今回ご紹介するのはロバート・アルトマン監督の「ギャンブラー」(1971)です。

美しい映像表現と印象的な音楽が作り出す “不思議な世界”

マッケーブを演じるのはウォーレン・ベイティ、ミラー夫人はイギリスの名女優ジュリー・クリスティ。クリスティは、この作品でアカデミー賞にノミネートされました。
そして、西部劇とは思えない、いてつくような寒さのなかで繰り広げられる物語の映像を手がけたのが、撮影監督ビルモス・ジグモンドです。

1930年、ハンガリーに生まれたジグモンドは、苦学して映画を学び、56年のハンガリー動乱でアメリカへ渡ります。このとき一緒だった親友が、のちに「イージー・ライダー」(1969)を手がける名撮影監督ラズロ・コバックスです。
渡米後、ドキュメンタリーや低予算の映画で撮影をしていたジグモンドがアルトマン監督と初めて組んだのがこの映画です。

ジグモンドは、少年時代からアメリカ映画に傾倒し、絵画の光と影も熱心に研究していました。この作品では、アメリカを代表する写実主義画家アンドリュー・ワイエスの絵画を参考に色彩を決めたということです。ランプの明かりの薄暗い室内や、泥にまみれた町、雨、雪、厳しい環境と向き合う暮らしを、自然の光を生かし、柔らかく、粒子の粗い手法で表現した美しい映像は、それまでのアメリカ映画にはなかったものと高く評価され、スタンリー・キューブリック監督も絶賛したということです。

この作品のあと、ジグモンドは2つのアルトマン作品を続けて担当し、スティーブン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1977)でアカデミー賞を受賞、「スケアクロウ」(1973)、「ディア・ハンター」(1978)など、数々の傑作を手がけました。その映像は、今も多くの撮影監督の指針となっています。

そして、カナダ出身の世界的シンガーソングライター、レナード・コーエンの音楽も印象的です。オープニングで流れる「ストレンジャー・ソング」、「シスターズ・オブ・マーシー」、「ウィンター・レイディ」、1967年のデビュー・アルバムに収められた、ささやくような歌声が、まるでおとぎ話のような、不思議な雰囲気をもたらしています。

鬼才アルトマン監督の傑作「ギャンブラー」。映像と音楽をじっくりご堪能ください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「ギャンブラー」
5月30日(火)[BSプレミアム]後1:00~3:02

そのほかの映画情報はこちら