松岡修造が語る錦織 圭との秘話
そして2017年の注目選手

NHKウィンブルドン2017

7月2日(日)[BS1]後7:00 ほか

7月3日(月)から始まるテニスのウィンブルドン選手権。NHKが放送を始めてことしで30年となります。

そこで、視聴者の皆さんに「もう一度見たい選手」を投票で選んでいただきました! 7月2日(日)の「ウィンブルドン 感動再び!レジェンドたちの熱き戦い」では、その投票結果と共にアーカイブ映像から歴史を彩った名勝負をたっぷりとご紹介します。出演は松岡修造さん、沢松奈生子さん、福井 烈さん。なかでも松岡さんは95年の大会で、日本男子として62年ぶりにベスト8入りした日本テニス界のレジェンド。ウィンブルドンの舞台裏や当時の心境、そして2017年の見どころを語ってくれました。

“自分自身”と戦い抜いた、伝説のジョイス戦

――率直に松岡さんにとって“ウィンブルドン”とは何ですか?

僕にとって“ウィンブルドン”は小さいころからの憧れ、そして夢の舞台でした。だから、正直その舞台、特に“センターコート(※1)”に立てるとは思っていなかったんです。それまで日本の選手はなかなか世界と戦えず、ましてウィンブルドンで戦うことは現実的じゃなかったんですね。だからこそ、小さいころからテニスの最高峰は“ウィンブルドン”だと思っていました。

※1 センターコート…ウィンブルドン選手権が行われるテニスクラブのコートの中でも、センターコートはテニスプレーヤーにとって特別な存在。“ウィンブルドン”期間中の2週間しか使用されないのです!

プレースタイルはビッグサーブを軸にしたサーブ&ボレー。

――ウィンブルドンでいちばん印象に残っている試合を教えてください。

いちばんプレッシャーのあった試合が1995年の対マイケル・ジョイス戦だったと思います。この試合は大きなチャンスだったんですよ。なぜなら、ベスト8に向けた4回戦で、しかも相手が僕よりランキングが下だったから。だからこそ、大きな重圧がありました……。あと、僕にとって“人生最後のチャンス”という意味もありました。そのころは病気やケガが続いていて“引退”ということも考えていた時期でしたから、僕のテニス人生すべてを賭けた試合だったんです。

――その中でも第3セット、“5-4”で迎えた第10ゲームはどんなゲームでしたか?

一言で表すなら“松岡修造が奇跡のテニスをしたゲーム”です。自分でも「あの試合はうまかった!」と思いますね。今でも、あの最後の“5-4”というシーンを、ずーっと心の中で戦い続けているんです。誰と戦っていたかというと“松岡修造”なんだと思います。テニスというスポーツは試合相手も敵ですけど、“自分”も敵になるんです。プレッシャーも含めて弱い自分が心の中にたくさん出てくる。そんなときはいつも「この一球は絶対に無二の一球なり」という言葉を叫んでいるんです。でも実は僕、ウィンブルドンでの試合が終わってから、そのほかの大会も含めて自分のテニス映像を一切見ていないんですよ。

――それはなぜですか!?

この試合に勝ちはしましたが、相当危ないところが結構あるんです。周りは気づかないと思うんですけど、「このポイントを失っていたらガタガタと負けてしまう」と思うような場面があるので、勝っているとわかっていても「あー負けちゃう」という気持ちが見ながらこみあげてくるんじゃないかと。だから見ていなかったというのが正直なところです。

僕は、周りに対しては前向きな態度をとりますけど、スポーツ選手のなかで最も後ろ向きに捉える人なんですよ。だから試合中にも「もしこのゲームを取られたら」とか、逆に「もしこの試合に勝ったら」とかいろんな思考が出てきてしまったんです。それを思えば思うほど、試合から逃げたくなるから「大丈夫だ!」「できる!」と叫ぶしかなかった……。当時の“松岡修造”はガラスの体と心を持った選手だったんです。

実は“苦しみ”ばかりだったジュニア時代の錦織選手

――2017年のウィンブルドンでは錦織 圭選手にも注目ですが、松岡さんだからこそ知っているジュニア時代の錦織選手とのエピソードを教えてください。

基本的に彼はいつも苦しんでいました。『修造チャレンジ(※2)』に参加していた当時はまだ11歳だったので、グループの中では最年少でしたし病気やケガも多く、全てにおいて弱かったんです。でもテニスに関しては“天才”だった。だから僕はテニスに関してはタッチすることができなかったんです。それは「僕が教える=彼は僕で終わる」ということを意味しています。それが錦織 圭に対する第一印象ですね。

その後、頭角を現してきた圭は13歳でアメリカ留学を希望します。でも彼は自分の思いを表現する力が世界で通用するレベルではなかった。だから“心”の部分について、僕は徹底的に指導しました。あのときの僕は本当に怖かったので、今でも圭は当時の僕を嫌いだと思います。ところがある大きな大会の最後に彼が駆け寄ってきて、「修造さん、ずっと言ってきてくれた“表現する”という力、僕はアメリカに行って身に付けてきます!」と言ってくれたんです。僕にとってはそれがいちばんの喜びだし、「本当に伝わっていたんだな」とうれしかったですね。

※2 修造チャレンジ…松岡修造さんが委員を務めるJTAの強化本部およびジュニア育成本部との共催で、世界を目指すトップジュニアを対象とした強化キャンプのこと。

――今大会で、錦織選手にとっての課題、活躍のカギになる部分は何だと思いますか?

僕は「錦織選手はグランドスラムで優勝する」とずっと言い続けています。全仏オープンを見てもその思いは一切変わらないですし、どちらかというとテニスは強くなっているんですよ。でも、疑問も出ています。このままだったらグランドスラムは勝てないかもしれない……。それは“心”の弱さが大きな理由です。最近の圭は集中力が途切れることがあるんです。グランドスラムは2週間戦わないといけないので、安定したテニスよりも“安定した心”が必要なんですね。本来、錦織 圭が持っている集中力が発揮されれば、ウィンブルドンでも充分チャンスはあると思います。

――男子の優勝争いという意味で、今年の見どころはどこですか?

僕は、ロジャー・フェデラー選手とラファエル・ナダル選手が復帰したのが本当にうれしいですね。特にフェデラー選手は今、ウィンブルドンでの優勝が目標、生きがいになっていると思います。一方で、ニック・キリオス選手のようなパワーのある若手も登場してきましたが、フェデラー選手、ナダル選手と同じレベルで安定的に勝てるところまでは到達していない。そういった意味でも、圭にとってこの大会はチャンスですね。

――最後に、松岡さんにとっての“レジェンド”な試合を教えてください!

1981年のジョン・マッケンロー 対 ビョルン・ボルグ戦ですね。ボルグ選手は僕が好きな選手のひとりなんですが、ボルグ選手が勝った年よりも負けた年の方が印象に残っています。「何でだろう?」と考えたとき、やっぱりボルグ選手はどこか守りに入っていて、マッケンロー選手は全部攻撃しているんです。「怖さなしだ!」という感覚がものすごくあったんです。だから僕は、ちょっとふつうじゃないのかもしれないですけど人の弱いところ、この試合の場合はボルグ選手の弱さを感じたのが琴線に触れたんでしょうね。

ボルグ選手(左)とマッケンロー選手

結局、ボルグ選手はマッケンロー選手に負けたんじゃなくて、ボルグ自身に負けたんだなぁって子どもながらに思いました。だから“ウィンブルドンの芝”は、そういう心のかけ引き、テニスへの思いが感じられる特別な舞台なんです。

松岡さんは引退後、次世代を担うジュニア選手の育成に尽力され、まな弟子でもある錦織選手の活躍はもはや説明するまででもありません。2017年ウィンブルドン選手権の栄冠は誰の手に!? 7月2日放送の特番、そして3日からの試合をお見逃しなく!

またNHK BS1では、下記の3試合をフルセットで放送します。

ナダル 対 フェデラー(2008年男子シングルス決勝)
【放送日時】7月1日(土)前0:50 (金曜深夜)

グラフ 対 ナブラチロワ(1989年女子シングルス決勝)
【放送日時】7月1日(土)後1:00

エドバーグ 対 ベッカー(1988年男子シングルス決勝)
【放送日時】7月2日(日)後1:00

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