1937年、ロサンゼルス。私立探偵ギテスは浮気調査を依頼されますが、調査相手の水道局幹部・モーレイが死体で発見されます。事件を追うギテスは、やがて背後にある、水をめぐる陰謀と悲劇に巻き込まれていきます……。今回ご紹介する映画は、「チャイナタウン」(1974)です。

ハードボイルド・ミステリーの傑作

オリジナル脚本は、名シナリオライターのロバート・タウン。ロサンゼルスに生まれ、その歴史に関心を寄せていたタウンは、350キロにもおよぶ水路を建設し、砂漠に作られた小さな街を世界有数の大都市に発展させた、20世紀はじめに実在した人物・ウィリアム・マルホランドをモデルに物語の骨格を作りました。すぐれた都市文学でもあるダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーの小説を研究して、脚本を書きあげたということです。

軽口を叩き、世の中をシニカルにみながらも、もろくて貫きにくい正義を持ち続けようとするギテスを演じるのはジャック・ニコルソン。タウンは、最初から長年の友人だったニコルソンを想定して脚本を書いたということです。

監督は、鬼才・ロマン・ポランスキー。1933年生まれ、ユダヤ系のポランスキー監督は、第2次大戦下のポーランドでゲットーに入れられ、母親をナチス・ドイツに殺され、一人脱出するという壮絶な少年時代を送りました。その体験は名作「戦場のピアニスト」(2002)に反映されています。戦後ポーランドに戻って映画学校で才能を開花させ、次々に傑作を発表、84歳の今も現役、今年、新作が公開予定です。
ハードボイルド小説やフィルム・ノワールのファンだったポランスキー監督は、撮影監督のジョン・A・アロンゾ、プロダクション・デザイナーのリチャード・シルバートなどとともに、綿密な調査と時代考証を行い、欲望と権力が渦巻く1930年代のロサンゼルスを見事に表現する映像を作りあげました。

共演はフェイ・ダナウェイ。この映画での宿命の女・イブリンは、代表作となりました。さらに「マルタの鷹」(1941)の脚本・監督など、数々のノワールをてがけたジョン・ヒューストン監督が、政財界の大物を演じています。そして、アンジェイ・ワイダ監督の「世代」(1954)に出演するなど、もともと俳優だったポランスキー監督自身も、ギテスをナイフで脅迫する男を演じています。

深く印象に刻まれるラストは、ポランスキー監督の発案によるものだということです。
細部まで考え抜かれた物語と卓越した演出の傑作、じっくりお楽しみください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「チャイナタウン」
8月25日(金)[BSプレミアム]後1:00~3:12

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