開発の現場には“非常識”を貫いたストーリーがあった

ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」

11月23日(木・祝)[総合]後11:00

世界を変えた、知られざる日本人に迫るシリーズ特番「ブレイブ 勇敢なる者」。第3弾となる11月23日(木・祝)の放送に登場するのは、日本が世界に誇る半導体記憶媒体「フラッシュメモリ」の生みの親、元・東芝社員の舛岡富士雄(ますおか・ふじお)さんです。

……と言っても、「フラッシュメモリってなに?」とピンとこない方が多いかもしれません。しかし、アナタが今まさに見ているパソコンやスマートフォンにも、フラッシュメモリは使われているんです!

ほかにもエアコンや冷蔵庫などの電化製品、自動車、交通系ICカードやクレジットカード──今や私たちの生活になくてはならないあらゆる製品に、フラッシュメモリは使われています。電源を切ってもデータが保存され、小さくて軽く、消費電力の少ないフラッシュメモリ。しかし、その開発者である舛岡さんの名前は、日本ではほとんど知られていません。

その理由とは? そしてフラッシュメモリはどのように生まれたのか……? この番組を担当した佐々木健一ディレクターにお話を伺いました。

舛岡さんは日本のスティーブ・ジョブズ!?

──今回、舛岡さんをとりあげた理由を教えてください。

最初にお伝えしておくと……今まさに東芝の動向が世間をにぎわせていますが、だから取材したというわけではありません。

「ブレイブ 勇敢なる者」は私が企画した番組で、知られざる偉業を成し遂げた“異端”の日本人をとりあげています。数年前のある雑誌の『世界に誇る100人の日本人』という特集で、フラッシュメモリの開発者として紹介されていた舛岡さんの記事を見つけました。さらに調べたところ、「古巣・東芝を相手に裁判を起こした」という事実もわかり、興味をもったんです。

最近、東芝が注目されたことで、たまに舛岡さんをメディアで拝見するようになったのですが、ほとんどが「東芝に恨みをもつ人物」というような扱い方でした。なので私も「舛岡さんは東芝を恨んでいるんだ」と思って舛岡さんのもとを訪れたのですが、第一声で「東芝をあまり悪く描かないでほしい」と言われたんです。「東芝への恨みはなく、むしろ感謝している」と。そんなこと、どのメディアも報じていなかったので、「舛岡さんの真意は、世間に正しく伝わっていないのでは?」と、さらに興味を持ちました。

また、今これだけ東芝が注目されているにも関わらず「フラッシュメモリは何がすごいのか?」を詳しく伝えているメディアもありませんでした。ですから、舛岡さんの功績をちゃんと伝えたいという思いもありました。実際に取材してみると、そこには大企業のサラリーマンから逸脱した、“非常識”を貫いた人々のとってもおもしろいストーリーがあったんです。

現在は、仙台の外資系半導体コンサルティング会社の研究所にいる舛岡さん

──舛岡さんは、どんな人物なのでしょうか?

昔はすごく厳しい方だったようですが、今はとても“ちゃめっ気”がある方です。話していると、ご自身の自慢と自虐が往復したりするんです(笑)。たとえば取材に訪れた際、ご自身の掲載されている記事を広げて受賞した盾や賞状なども見せてくださるのですが、「この研究所にはほかに誰もいないから、自分で用意しました」「日本では全く評価されていない」などとおっしゃる(笑)。

ただ、ご自身のことを語るのはあまり得意ではないようで、フラッシュメモリ開発当時の舛岡さんについては、かつての部下の方々に語っていただきました。すると、誰もが口をそろえて「(舛岡さんは)説明がうまくない」「結論だけ言うから(ほかの人には)理解できない」とおっしゃるんです。まるでスティーブ・ジョブズのように、「こうしよう!」という大きな目標を掲げて、周囲ががんばってそれを実現させるという感じだったようですね。

一方で、天才肌の舛岡さんの能力は周囲も認め、一目置かれていたようです。むしろこれくらい個性的な方だったからこそ、当時としては“非常識”だったフラッシュメモリを開発できたのだと思います。

舛岡さんのマネジメント力で、個性豊かなメンバーが一致団結

──部下だった方々に集まってもらってお話を聞いたとのことですが、皆さんいかがでしたか?

舛岡さんの話題は尽きず、3時間以上も話が止まりませんでした(笑)。こうして盛り上がれるのも、この開発チームだからなのでしょう。まるで町工場を舞台にしたドラマのように、実にキャラクターの濃い、個性的な面々がそろっていたんです。

重要なのは、当時の東芝は際立った個性が許される非常に自由な社風だったということ。常識にとらわれない“はみ出しエンジニア”を抱えつつ、世界中の誰もが毎日使うモノをつくりあげた会社なんです。

ちなみに今回、開発チームの一人で現在、東芝メモリ・メモリ技術研究所の所長である百冨ももどみ正樹さんが「この機会に舛岡さんの功績がきちんと伝われば……」と尽力してくださり、東芝もこの企画を了承してくれて取材ができました。

中央の赤いキャラクターが百冨さん! 番組では、フラッシュメモリ開発秘話をインタビューとアニメでわかりやすくご紹介します。

──取材を通して、舛岡さんの「ここがすごい!」と感じたところはどこでしょうか?

技術者として天才的なひらめきをもつ方ですが、一方で「マネジメント能力」の高さに感服しました。自分の得意・不得意をわかっていて、苦手なことは部下に任せるのがとてもうまい方だったんです。

たとえば、開発メンバーの中で最も重要な人物の一人である白田理一郎さん。舛岡さんと同じく天才肌で非常に頭の良い方ですが、事務作業などは苦手で、元々は人事評価も低かったそうです。おまけに、上司にいちいち口出しされるのは嫌いなタイプ。舛岡さんとも反りが合わなかったようですが(笑)、舛岡さんはそんな白田さんを開発リーダーにするんですね。自身のやりたいことはほかのメンバーを通して間接的に伝えながら、白田さんのやりたいように開発をやらせて、チーム内で自由にアイデアを言える雰囲気にしていました。

こうしたマネジメントによって、開発チームはとても自由闊達かったつに意見し合えるムードだったそうです。「個性があふれているのにチームとしてまとまっている」なんて、組織として理想的ですよね。

舛岡さんはワンマンだと思われがちですが、“人を大事にする人”だと思います。フラッシュメモリがこのチームから生まれたのは偶然ではなく、舛岡さんのマネジメント能力があったからこそだと、取材を通じて確信しています。

開発チームの人物相関図を電子回路で表現! 斬新!

技術立国・日本で、技術者をいかに評価すべきか?

──最後に、メッセージをお願いします!

日本は「技術立国」と言われてきたにも関わらず、それを支えてきた技術者の評価はあまり高くないと思います。番組では、舛岡さんを尊敬しているアメリカ・シリコンバレーのエンジニアが登場しますが、彼らは非常に高い評価を受けて大豪邸に暮らしています。日本ではあまり考えられませんよね……。

でも、舛岡さんが「これは人情の話。“ありがとう”と、ひとこと言ってもらえれば終わりなんです」とおっしゃった言葉が強く心に残っています。舛岡さんも開発チームのメンバーも「たくさんのお金」ではなく、仕事に対する「正当な対価」と「リスペクト」がほしかったのです。

今回の番組は、「東芝の経営問題の実態は!?」といったスキャンダラスな内容を期待して見ると、期待ハズレかもしれません(笑)。むしろ、世の中を支える技術を開発したエンジニアたちの誇りや尊厳の物語です。

「東芝を相手取った裁判」でイメージが定着した舛岡さん。その秘められた真意に胸が熱くなります。

佐々木ディレクターは最後に、「舛岡さんにじっくりとお話を伺った結果、私が抱いた人物像は、番組タイトルにも掲げた“硬骨”の2文字でした」と語りました。「硬骨」とは、意志が強く、容易に自分の主義・主張をまげないこと(『新明解国語辞典』より)。孤独な戦いを続けた技術者たちの熱いヒューマンドラマを、どうぞお楽しみに!

また、11月19日(日)(※土曜深夜)には、総合テレビで過去の「ブレイブ 勇敢なる者」シリーズを連続で再放送! こちらもあわせてご覧ください♪

「有罪率99.9%」に挑む今村核弁護士(左)と、「謎の墜落事故」の解明に挑む気象学者・藤田哲也(右)

ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」

【放送予定】11月23日(木・祝)[総合]後11:00

[再]ブレイブ 勇敢なる者「えん罪弁護士」

【放送予定】11月19日(日)[総合]前1:20〜2:09 ※土曜深夜

[再]ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード 〜気象学で世界を救った男〜」

【放送予定】11月19日(日)[総合]前2:10〜2:59 ※土曜深夜

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