ばく大な価値を持つ鷹の彫像をめぐる事件に巻き込まれ…

マルタの鷹【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

12月16日(土)[BSプレミアム]前0:15(金曜深夜)

舞台はサンフランシスコ。スペードとアーチャーの探偵事務所に、妹の行方を捜して欲しいと、美しい女性が訪れます。ところが、アーチャーは何者かに殺害され、スペードはばく大な価値を持つとされる、鷹の彫像をめぐる事件に巻き込まれていきます…。今回ご紹介するのは犯罪ドラマ「マルタの鷹」(1941)です。

名匠ジョン・ヒューストンの監督デビュー作

原作は1930年に出版されたダシール・ハメットの小説。ハメットは、実際に探偵として働き、その体験をもとに、当時の社会を背景に、感傷を排した即物的でドライな物語と文体でミステリー小説を刷新、いわゆるハードボイルド文学の始祖とされています。3度目の映画化となったこの作品、脚本・監督はジョン・ヒューストン。これが初監督作ですが、原作のエッセンスを凝縮した演出は高く評価され、主演のハンフリー・ボガートとは深い友情で結ばれました。

ボガート演じる、じょう舌で機転とウィットに富み、物事の先を読んで行動するサム・スペードは、その後のハードボイルドの探偵像を決定づけました。ロマン・ポランスキー監督の「チャイナタウン」(1974)は、この映画に大きな影響を受け、ヒューストン監督を俳優として登場させ、オマージュを捧げています。

共演者も魅力的です。色香を放ち、事件の鍵を握る女性を演じるメアリー・アスター、見るからに怪しい男・カイロを演じるピーター・ローレ、でっぷりとした体で葉巻をくゆらせるシドニー・グリーンストリート、小心さと凶暴さが同居する男を演じるイライシャ・クック・ジュニアと、強烈な個性の名優ばかりです。

1906年生まれのヒューストン監督は、ハーマン・メルビル原作の「白鯨」(1956)、ジェームズ・ジョイス原作の「ザ・デッド/「ダブリン市民」より」(1987)、スティーブン・クレインの『赤い武功章』を映画化した「勇者の赤いバッヂ」(1951)、マルカム・ラウリー原作の「火山のもとで」(1984)、カーソン・マッカラーズの『黄金の眼に映るもの』を映画化した「禁じられた情事の森」(1967)、フラナリー・オコナーの『賢い血』を映画化した「Wise Blood」(1979)、レナード・ガードナーの『陽の沈む街へ』の映画化「ゴングなき戦い」(1972)、テネシー・ウィリアムズの原作戯曲「イグアナの夜」(1964)、さらには『旧約聖書』をもとにした「天地創造」(1966)まで、文学史上名高い傑作・名作を次々に映画化しています。お酒に喧嘩と、破天荒な数々の伝説的エピソードを残すヒューストン監督ですが、大変な読書家で文学青年だったのだと思います。

ハードボイルド・ミステリーの古典、じっくりお楽しみください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「マルタの鷹」
12月16日(土)[BSプレミアム]前0:15〜1:57(金曜深夜)

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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