空間演出にもご注目!マン監督が描く異色西部劇

シャロン砦【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

3月1日(木)[BSプレミアム]後1:00

今回ご紹介するのは、アンソニー・マン監督の西部劇「シャロン砦」(1955)です。
狩猟をしながら山で暮らすジェドたち3人は、シャロンとりでの騎兵隊の偵察係として雇われますが、指揮官のマーストン大佐は、自分の名誉を第一に考え、無謀な先住民襲撃を決行しようとします。ジェドは襲撃を止めさせようとしますが…。

ジェドを演じるのは、ビクター・マチュア

1913年生まれのマチュアは、ジョン・フォード監督の傑作西部劇「荒野の決闘」(1946)でドク・ホリディを演じて注目されましたが、大柄な肉体美を生かし、「サムソンとデリラ」(1949)や「聖衣」(1953)など、とりわけ史劇で活躍しました。アーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンの大先輩、といったところでしょうか。この映画では、武骨で素朴、正義感のあるジェドを存在感たっぷりに演じています。

共演者の中でも印象的なのは、アン・バンクロフト。「奇跡の人」(1962)でサリバン先生を演じ、アカデミー主演女優賞を受賞、「卒業」(1967)のロビンソン夫人などでも知られていますが、この作品では、まだ20代半ば、初々しい美しさが魅力的です。

数々の映画作家が、マン監督の演出に魅せられた

アンソニー・マン監督は1906年生まれ。40年代から低予算のフィルムノワールを監督、強烈な光と影に彩られた傑作を次々発表します。50年代には名優ジェームズ・スチュワート主演で「ウィンチェスター銃'73」(1950)や「裸の拍車」(1953)などの西部劇の名作を監督しました。スチュワートとは名コンビとなり、西部劇だけではなく「グレン・ミラー物語」(1954)など8本の映画を作っています。戦争映画「最前線」(1956)、歴史スペクタクル「エル・シド」(1961)など多彩なジャンルの作品をてがけ、60歳の若さで亡くなりましたが、ジャン・リュック・ゴダール、クリント・イーストウッドなど、数々の映画作家が、その演出に魅せられています。

マン監督の演出で魅力的なのは、縦の構図や視点を生かした、類まれな空間演出です。この作品でも、砦の高いところに立つジェドと、砦のなかの騎兵隊、外の先住民たちを、俯瞰ふかんショットと仰角のショットとを絶妙に連鎖させた編集で表現し、下から上へと動くクレーンショットで、砦という空間の広さと閉鎖性を横長の画面を生かしながら見事に描いています。しかも、そうした演出が、単なる映像だけの効果ではなく、マチュア演じるジェドの孤立感を一層引き立てています。

マン監督の映画ならではの演出にほれぼれしてしまう傑作、ぜひご覧ください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「シャロン砦」
3月1日(木)[BSプレミアム]後1:00~2:39

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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