ガン闘病中の大林監督が、映画を愛する人たちに伝えたいこと

最後の講義「映画監督・大林宣彦」

3月11日(日)[BS1]後9:00

もし人生の最後なら、どんなメッセージを残しますか――?

「最後の講義」は、知的最前線に立つスペシャリストたちが「もし今日が最後だとしたら、何を語るか」という問いのもと、講義を行ってもらい、それを番組にしたものです。今回、登壇するのは映画作家の大林宣彦さん(80)。『時をかける少女』『さびしんぼう』『転校生』など数々の作品で日本の映画界をけん引してきた大林さん。ガンで余命3か月の宣告を受けた後も、映画作りに打ち込んでいます。人生の最後を意識した今、映画を志す者たちに全身全霊で語り残したメッセージとは……?

今回は、制作裏話や講義当日の様子を、長澤智美プロデューサーに聞いてきました。

講義のテーマは3つ!

──大林さんにオファーをしたのはいつごろですか?

2017年の夏ごろでした。実際に番組収録が行われたのは、2017年12月20日です。それまでに打ち合わせをしましたが、大林さんって本当に話したいことが膨大なんですよね(笑)。映画作りでご自身が貫いてきたこと、映画の本質、そして映画の未来のことなど、次々に話が展開していくんです。

これは、できる限り大林さんの話したいことを現場で話していただき、私たちは書籍の編集者のように、テーマの章立てを作って番組をまとめていこうという方針でいこうということになりました。

──それは、どんなテーマだったんですか?

テーマは3つあって、1つは「映画とは“フィロソフィー(哲学)”」。作り手側が“伝えたい哲学”を明快に持って、しっかり表現することが大事であるというお話です。これは、番組全体の大きなテーマとなっています。

2つめは、「自分の中の平和孤児」。日本敗戦のとき、大林さんは7歳。敗戦で世の中がひっくり返ってしまい、「平和というものがよく分からなくなった。僕らの世代は平和孤児だ」と、ご自身の経験を踏まえたお話をしてくださいます。

3つめは、「100年後に分かる映画」です。大林さんは、ご自身の作る映画のことを“シネマゲルニカ”と呼んでいます。“ゲルニカ”とは、1937年にピカソがスペイン内戦を描いた象徴的表現の絵画です。おばあちゃんの目が真横に並んでいるような描き方です。大林さんは、「もしあれがリアルに描かれていたらたぶん後世まで残らなかったんじゃないか」「象徴的だからどんな意味があるんだろうと考える」と感じているそうで、だから映画も、「今分かるような映画じゃだめだ。100年後ぐらいに分かればいいんだ」と思っていらっしゃるようでした。講義はこの3つを中心にして展開してくださいました。

映画へのモチベーションが高い人たちの前で話したい!

──実際に講義が行われるまでにはどのような行程があったのでしょう?

まずは、講義の場所です。いろいろな場所が挙がりましたが、映画制作へのモチベーションが高い人たちの前で話したいという大林さんのご希望もあって、早稲田大学が伝統的に映画サークルとか映画同好会などが盛んだという話が挙がりました。大林さんもそこがいいんじゃないかということで場所が決定しました。

さらに時期ですが、「早稲田映画まつり」という毎年行われているイベントがあるということで、そのイベントの一環としてもやってみたらどうかという話になって、日にちも決定していった感じです。

このイベントにご協力してくださったのは、全ての大林映画を同時代に見てきた早稲田大学名誉教授の安藤紘平さんと、ドラマ概論や映画概論を今、学生たちに教えている早稲田大学演劇博物館の岡室美奈子先生です。それから、映画まつりの実行委員会でもある学生さん方も、「大林さんのお話を今聞けるんだったら、こんなにうれしいことはない」と言っていただき、本当にあっという間に講義の場が整っていきました。

──当日の様子を教えてください。

当日は、学生さんだけではなく、実際に映像の仕事をしている方々もいらしてくださいました。みなさん、一言も逃すまいという姿勢で真剣にお話に聞き入っていました。

講義の中では、質疑応答の時間もありました。中でも印象的だったのは、「今は映画館のイスやスクリーンが稼働するなど、エンターテイメント性の高い映画が多いが、そんな中でどんな映画を作っていったらいいのか」という質問です。大林さんの第一声は、「映画というのは科学技術によって生まれたものだから、どんな新しい技術も否定しない」というものでした。でも、映画には“フィロソフィー”が大事だから、どんな技術を使ってもそこは忘れてはいけないともおっしゃっていました。

実際、講義は3時間近く行ったのですが、大林さんはずーっとノンストップです。ここで終わりですと言ったから終わりましたけど、言わなければまだまだ続いていたでしょうね(笑)。それぐらい、しゃべりたいことがたくさんあるんだと思います。

ナレーションは門脇 麦さん!

──この番組はナレーションも話題の方を起用していますが、今回はどなたですか?

去年放送した「VRのパイオニア、ランディ・パウシュ教授」では、ももいろクローバーZの百田夏菜子さん。「ロボット工学の世界的権威・石黒浩教授」は、俳優の山田孝之さんをナレーションをお願いしました。

今回は、門脇 麦さんです。

大林さんの映画『花筐/HANAGATAMI』にご出演されていますし、この番組の世界観をさらに増幅させてくれると思ったからです。大林さんも、門脇さんがナレーションを務めてくださることにとてもよろこんでいらっしゃいましたし、門脇さんならではの感受性で、番組がより豊かなものになったと思います。

──どんな方々にご覧いただきたいですか?

若い人にも見てほしいですし、大林さんと同じ世代の方々にも見てほしいです。番組を作ってみて、私自身も大林映画への受け取り方がより深まりました。ぜひみなさんも、この番組を通して「人間の情熱」を感じ取っていただければうれしいなと思います。

「大林さんは、映像が浮かぶような話し方をされる」と語った長澤プロデューサー。大林宣彦監督の講義を、ぜひ番組でご覧ください!

【放送予定】3月11日(日)[BS1]後9:00

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