吉之助との対面シーンは、ドラマのだいご味

大河ドラマ「西郷(せご)どん」

吉之助たちの前に立ちはだかる井伊直弼。悪人として描かれることが多い井伊直弼 役との向き合い方について、演じる佐野史郎さんにお話を伺いました。

禅と居合を極め、茶人そして能楽師。井伊直弼って、本当に悪人なのか?

大河ドラマの記念すべき第1作は、井伊直弼を主人公にした「花の生涯」ですからね。責任重大の役柄です。「西郷どん」公式ホームページの「井伊さんぽ」に寄稿させていただいたように、彦根との個人的なご縁もあり、井伊家、彦根の皆さんに対して失礼のないようにと心がけて務めております。

井伊直弼公は、少年期から31歳まで「埋木舎うもれぎのや」で修練し、禅、居合、和歌などを極め、一時は仏門に入ろうとしたほどだそうです。また、能楽師でもあり、茶人としては千利休や松江藩の松平治郷はるさとにも通じる文武両道の人物。直弼公がつづった茶の本を読んでいても、いつも心を乱さず平穏で、客人が去ったあとも茶室でひとりその人を思うような境地の人ですからね。そんな人が、政となった途端に感情をむきだしにしたり、心を乱したりするだろうか?と思ってしまいます。

どうしても「赤鬼」のイメージで荒ぶるように描かれることが多いけれど、つとめてニュートラルに演じるようにしています。決して相手に対して悪意を抱くわけでなく、ただ自分の思う“人の道”に正直に、あるべき姿を貫こうという心境でいます。

ドラマとしては薩摩や水戸に対して邪魔な存在でなければならないのかもしれませんが、どうしても違和感を感じるところは演出や共演者の皆さんと相談しながら現場にのぞんでいます。探りながらシーンを作る作業が非常に楽しいですね。

単に何が正義かを問い、優劣を競う姿を追うのではなく、ご覧いただいている皆様が、さまざまな受け止め方をしてくださると、おもしろさがより膨らんでいくと思います。

井伊がもし吉之助と対面したなら…? そんな夢の場面も「一期一会」の精神で。

史実ではなかっただろう吉之助との対面シーンは、ドラマのだいご味と言いますか、もしも出会っていたら……というのはぜひ見てみたいですよね。

対面するのは茶室という空間ですから、ここでは対等である、ということを大切にしたいと思いました。井伊直弼は「一期一会」を伝えた人ですから、この言葉をセリフに加えさせてもらおうか、実はかなり迷ったんですよ。まぁでも、そこは出過ぎずに思いを飲み込み、口にするのをやめました。

ただ、その思いは一期一会。どちらにも優劣はなく、この時間を共に過ごす。吉之助がどんなに感情を荒げようとも、すべて受け入れたいと思いました。

最後に「世間の泥水をたっぷりむがいい。ここの茶のうまさが身にしみて、分かるであろう」というシニカルなセリフがありましたが、僕は西郷だけではなく自分にも言い聞かせるよう努めました。ここから大変なことが待ち受けているぞ、という自分への警告でもあり、それを受け止めようという覚悟の意味も含めてです。

この先、「安政の大獄」を経て「桜田門外の変」により井伊直弼は暗殺されることになります。命を落とす瞬間でも慌てふためくことなく、茶室にいるように一期一会の思いでありたい。斬り殺される瞬間、実はあるセリフを心の中で唱えています。井伊大老であれば、現在、何を思うだろうかと。

この時代に生き、やるべきことをやり、あとはただ単に死を受け入れるのみ……そんな境地になればと。さぁて、いかがでしょうか?

2018年(平成30年)大河ドラマ「西郷せごどん」

【放送予定】毎週日曜[総合]後8:00 /[BSプレミアム]後6:00

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