5月の映画はジャズのリズムと共に♪

恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ ほか【渡辺祥子のシネマ温故知新】

5月16日(水)[BSプレミアム]後1:00 ほか

プレミアムシネマ5月の注目作品

ピアノも歌もダンスも吹き替えなし。主演の俳優たちが歌い踊り、楽器演奏のシーンを自ら演じる、というようなことなども近年では珍しくなくなった。『ラ・ラ・ランド』(2016)も『美女と野獣』(2017)も、主演はミュージカルとは縁のない俳優たちなのにプロ並みの才能を発揮して楽しませる。でもかつては吹き替えが普通で『マイ・フェア・レディ』(1964)のオードリー・ヘプバーンの歌や『ウエスト・サイド物語』(1961)のナタリー・ウッドの歌声が吹き替えだったことはよく知られている。そしてじつは『フラッシュダンス』(1983)のジェニファー・ビールスの激しく踊る姿も、よくよく見れば別人であることがわかるはず。それでも、全然気にならないほどジェニファーはキュートでさっそうとしていて、日本の化粧品会社のCMにも起用されていた。

【放送日時】
プレミアムシネマ「フラッシュダンス」
5月14日(月)[BSプレミアム]後1:00~2:36

そんな吹き替えが普通の時代に生まれたのが『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(1989)。ここではボー・ブリッジスとジェフ・ブリッジスが演じるピアノ・デュオの2人は吹き替えなし。兄がボー(1941年生まれ)で弟がジェフ(1949年生まれ)のブリッジス兄弟は、ジョン・フォード映画の常連だったロイド・ブリッジスの息子。兄は地味で手堅い脇役俳優に成長、弟は『クレイジー・ハート』(2009)でアカデミー賞の主演男優賞を受賞するなど華のあるスター俳優になった。2人とも若いころからピアノを習っていたそうだが、『クレイジー・ハート』でカントリー歌手を演じたジェフは、役のために歌のレッスンに挑戦、プロも驚くベテランのカントリー歌手になって味のある歌声を聞かせていた。
ラウンジ・シンガー、ラウンジ・ミュージシャンと呼ばれ、歌を聴くよりおしゃべりや飲むことに夢中の客を相手にピアノ演奏をする2人は、腕は良くても地味過ぎるということで華を求めて女性シンガーを募集する。そこへ応募してきた歌手が撮影当時ハリウッドきっての美女と評判が高かったミシェル・ファイファーが演じるスージー・ダイアモンド。彼女の歌が絶品で兄弟はメロメロ。もちろん、ミシェルの歌は吹き替えなしの本物だった。映画の中で彼女が歌う「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」はジャズのスタンダード曲。最近ではイーサン・ホークが1960年代に活躍したトランペット奏者でボーカリストでもあったチェット・ベイカーの伝記『ブルーに生まれついて』(2015)の中で歌っていた。
1982年にブロードウェイ・ミュージカル『グリース』の続編『グリース2』のヒロイン役で歌い踊って観客を驚かせたミシェルは、ケネス・ブラナー監督の『オリエント急行殺人事件』(2017)に出演している。

【放送日時】
プレミアムシネマ「恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」
5月16日(水)[BSプレミアム]後1:00~2:55

ジャズと言えば今月は岡本喜八監督の『ジャズ大名』(1986)がある。ユニークなSF作家筒井康隆の小説が原作だから若い日の岡本監督も悪乗り気味。楽器が横笛、そろばん、琴、薩摩琵琶、鍋、釜・・・とユニークならピアニストの山下洋輔から状況劇場の唐十郎、タモリ(チラリ出演!)とゲストの面々がにぎにぎしく、ジャズと幕末当時に大流行した集団狂乱「ええじゃないか」が合体して狂喜乱舞の世界が出現する。

【放送日時】
プレミアムシネマ「ジャズ大名」
5月22日(火)[BSプレミアム]後1:00~2:26

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渡辺祥子

【コラム執筆者】渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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