7月は横溝正史原作のミステリー3作を3日連続で!

犬神家の一族 ほか【渡辺祥子のシネマ温故知新】

7月25日(水)[BSプレミアム]後1:00 ほか

プレミアムシネマ7月の注目作品

今月は市川 崑監督による横溝正史原作のミステリー3作が3日連続で放送される。
最初の25日に放送されるのは、出版社が異業種である映画に進出して大きな話題を呼んだ角川映画の第1作「犬神家の一族」(1976)。この「犬神家の一族」の初の映画化は東映京都の映画でタイトルが少し違って「犬神家の謎 悪魔は踊る」(1954)。監督は渡辺邦男、金田一耕助役は片岡千恵蔵だった。市川 崑監督の76年製は2006年に同じ石坂浩二の金田一役でリメイクされている。
そんな「犬神家の一族」に続いたのが手まり唄の歌詞に沿って殺人が行われる26日放送の「悪魔の手毬唄」(1977)。そして俳句の季語の間違いが問題になる27日放送の「獄門島」(1977)。いずれも洗練された映像表現に特徴のある市川 崑監督らしさがよくでた映画だが、そこに横溝作品に特有のおどろおどろしさが絡まり、日本映画ならではの湿った不気味さが楽しめる探偵映画になっている。

横溝正史はまず手始めに金田一耕助が登場する『本陣殺人事件』を書き、それに続いて書いたのが『獄門島』だった。太平洋戦争が終わった後、進駐軍の兵士が帰国する際に売り払った本を読み漁るうちに、ヴァン・ダインがマザーグースの唄を使って書いた『僧正殺人事件』を読み、自分も童謡を使った殺人事件を書いてみたいと思ったそうだ。それでも、まねをするようで書くのをためらっていたところアガサ・クリスティが『そして誰もいなくなった』でマザーグースの唄を使っていたのを知って自分も童謡を使おう、と決意した。ところが残念ながら適当な童謡がみつからず、俳句に注目したのだそうだ。

この『獄門島』は、1947年1月から1948年10月まで雑誌“宝石”に掲載されていて49年にはじめて映画化されている。監督は松田定次、金田一耕助は片岡千恵蔵が演じた。その後、角川映画の第1号76年の「犬神家の一族」に続く第2作目として1977年に同じ市川 崑監督、石坂浩二の金田一耕助で誕生。これは77年の、これこそ手毬唄の歌詞に沿って殺人が起きる『悪魔の手毬唄』も同じ監督・主演。「獄門島」は原作小説と映画の結末が違い、そのため予告編では作者の横溝正史さんが登場、“金田一さん、私も犯人を知らないんです”と言っている。

【放送日時】
プレミアムシネマ「犬神家の一族」
7月25日(水)[BSプレミアム]後1:00~3:26

プレミアムシネマ「悪魔の手毬唄」
7月26日(木)[BSプレミアム]後1:00~3:25

プレミアムシネマ「獄門島」
7月27日(金)[BSプレミアム]後1:00~3:22

ところで、今月はめったにお目にかかれない珍品が1本。
「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」は太平洋戦争下の1942年(昭和17年)の製作。当然、輸入されるはずもなく、戦後になって何度か公開の話があったがその度に立ち消えになっている。これは今世紀初めのアメリカで国民的ヒーローとして知られたたジョージ・M・コーハンの伝記。彼は1920年代のブロードウェイで絶大な人気を誇った俳優で歌手、ダンサー、作曲、作詞、劇作家で演出家という多彩な人物だった。ギャング映画「汚れた顔の天使」(1938)の大ヒットでギャング役者のイメージが定着したジェームズ・キャグニーがコーハン役を演じてアカデミー賞の主演男優賞を受賞。映画は8部門にノミネートされて録音賞やミュージカル映画音楽賞を受賞した。

【放送日時】
プレミアムシネマ「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」
7月20日(金)[BSプレミアム]後1:00~3:07

「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」(1942年)

渡辺祥子

【コラム執筆者】渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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