火星移住実験に参加! カメラマンが語る裏話

CREW191 フツーの7人が挑んだ火星移住実験

7月14日(土)[BS1]後7:00~7:50

今、「火星への移住」が、現実に語られるようになっているのをご存じですか?
近い将来、火星に移住する計画が実際に動いているとか!
アメリカ・ユタ州の砂漠には火星での生活を疑似体験できる実験施設があり、世界各国のクルーが「火星で暮らすためには何が必要か」という調査をしているんです。
今回、日本の火星研究のチームが、その実験施設で「模擬火星生活実験」を行いました。
実験に参加したのは、エンジニア、WEBデザイナー、学生など、年齢も住んでいる場所もバラバラの7人。
実はこの実験にNHKの河村 信カメラマンも参加したのです!
河村カメラマンはその実験の様子を詳細に記録。7月14日(土)放送の番組、「CREW191 フツーの7人が挑んだ火星移住実験」で紹介します!

ふだんは「おはよう日本」「ニュース7」などの報道番組を担当しているという河村カメラマン。
なぜ実験に参加することになり、どんな生活をすることになったのか……。
気になる火星生活実験の内容と、番組の見どころなどをたっぷり教えていただきました!

本当に火星にいる気分に!

──まずは、なぜこの実験に参加することになったのか教えてください。

この参加チームのリーダー・村上祐資くんに、声をかけられたからです。村上くんは、南極やエベレストなど、さまざまな“極地”で生活した経験を持つ「極地建築家」なのですが、日本人で唯一、「火星移住模擬実験MA160(まーず160)」に選抜されており、“いま日本人で最も火星に近い男”とも呼ばれています。実は彼と私は、中学・高校の同級生なんです。彼は私がカメラマンであることを知っていたため、「ビデオジャーナリストとして実験中の様子を伝える役割を担ってほしい」と参加依頼の連絡をくれたことが始まりでした。

砂漠の中に実験施設があります。

──どんな施設で実験を行ったのですか?

アメリカ・ユタ州の広大な砂漠にある「MARS DESERT RESEARCH STATION(火星砂漠研究基地)」という実験施設で行いました。
火星着陸船をイメージした実験施設は、だいたい直径が8メートルぐらい。火星の大気はほとんどが二酸化炭素なので、外出するためにはエアロックというスペースで約20キログラムある宇宙服を装着し、気圧を調整する必要があります。実験期間中は外の世界が全てヘルメット越しになるため、本当に火星にいる気分になりました。内部は2階建てで、人がひとり横になって寝られるぐらいのプライベートスペースがそれぞれ確保されています。部屋は6つしかないので、私は屋根裏部屋で生活していました(笑)。
基地が設置されている砂漠は朝夕で氷点下にもなるので、暖房はあります。水は使用制限があり、シャワーを浴びられるのは3日に1度でした。

この施設の中で生活します!

──実験にはどんなものを持って行ったんですか?

ジュラルミンケース8個分の荷物を持って乗り込みました。中身はほぼ撮影機材ですね。日本で試運転をして厳選したカメラ約20台と、SDカードが100枚以上。現地では節電のため充電もあまりできないと考え、モバイルバッテリーも20個ほど持っていきました。あと持参したのは生活必需品と家族の写真、お守りだけです。そのほかの私物を入れる余地はほとんどなかったですね。

閉鎖空間で、人間の感情や精神状況は一体どうなる?

──火星移住実験の目的とは?

火星は地球との通信に、大体5~20分程度のタイムラグが起こると想定されています。そうすると、緊急時、地球からの指示を待っている間に隊が全滅する恐れもあることから、移住生活には自分で考えて状況を打破する力が問われます。また、移住メンバーとの人間関係は絶対に切り離すことができません。例えば現実の世界で自分とどうしても合わない人がいたら、どうにか避けてみる方法も可能じゃないですか。でも少数のメンバーで構成された火星移住メンバー間で決定的な断絶でも起こってしまったら、物理的に傷つけあうことになりかねませんよね。さらに、そんな状況下において、水や電気、食料など全て限られた閉鎖空間という要素も加わるため、常に緊張状態にさらされることは言うまでもなく…。そういった環境におかれた人間の感情や精神状況は一体どうなる?という点が、この移住実験のもっとも大事なところです。

──なにか特別な決まりはありましたか?

午後7~9時に地球(を想定した、実験主催者側の担当者)に送る、毎日の出来事・翌日の予定を事細かに記したレポートの提出が義務付けられています。通信はWi-fiで管理されており、1日の上限が500MBに設定されていました。それを超えてしまうと自動的に使用不可能になってしまう仕組みです。内容は、エンジニアであれば電力状況、水の残量、船外活動で使うバギーやローバーの状態の報告などです。私はフォトレポートだったのですが、画像送信はどうしても容量を使ってしまうので、毎日戦々恐々としていました。

楽しみは、食事でしたね(笑)。ごはんは、基地に初期設備として用意されているフリーズドライです。それを自由に組み合わせたり、それぞれが持ち込んだものを使ってみたりとおいしくいただいていました。

意外と中は広くて快適そう?!

──河村さんの任務「ビデオジャーナリスト」としての撮影はいかがでしたか?

実験中はあらゆることを出来る限り映像に残したくて、固定カメラをかなり使いました。そもそも今回、「テレビを見てくださる方が、本当に私たちと火星で一緒に体験しているような空間を撮ろう」というコンセプトを決めていたため、船外活動のときも、宇宙服のヘルメットにつけるカメラや手持ちカメラなどいろいろ持っていきました。これがまぁ、難しくて! 年季が入った宇宙服だからヘルメットが曇りまくって外が見えないんです。何度ふいたことか(笑)。手もグローブをしているから思うように動かず、イライラが募りました。また、基地の食卓の上には360度カメラを置いて、話し合いや食事の様子も常時撮影しました。それをまわし続けた結果、動作時間がメーカーの推奨スペックを超え、序盤はトラブルが続発してしまい…(苦笑)。
貴重な実験の記録がちゃんと撮れているかという不安、大量のSDカードの管理で最初はかなり疲労困ぱいに。私の場合、閉鎖空間に置かれていることよりも、これが何よりのストレスでしたね。

──制限ばかりの空間で同じメンバーで過ごした結果、どんな変化がありましたか?

メンバーとは、結構感情むき出しで話し合いました。普通、カメラを向けられると、どこかしらみんな猫をかぶるでしょう。ここでは、その余裕がはぎとられていく様子も撮れました。最初遠慮があっても、徐々に気を遣っている場合じゃなくなって、容赦がなくなっていくという。それでいうと、最年長のエンジニア・岡本さんの言動には、ぜひご注目を! 振り返ると、岡本さんはメンバーの感情の手綱を握っていた策士では?なんて思います(笑)。

さまざまなカメラで撮影! 没入感を楽しんでください

──最終日、基地から出たときの率直な気持ちは?

「これでSDカードの管理はもういいのか!」って思ったのが正直な気持ちです(笑)。
とはいえ2週間、実験生活を真剣に過ごせば過ごすほど、本当に火星にいる気持ちになっていたので、ヘルメットをせずに外に出たときは、実験終了というより「地球へ戻ってきたんだ、ただいま」という感慨深い気持ちになりました。この実験を番組にしようとしたとき、“火星移住がリアリティーを持つぐらい、地球の環境問題・人口問題がひっ迫していることを少しでも知ってもらえたら”なんて偉そうなことを思っていましたが、あらゆることに制限がある火星生活を行ったことで、自分がどれだけ資源を無駄遣いしていたかということにも改めて気づきました。今の自分自身を見つめるきっかけにもなったんじゃないかと感じています。

プロジェクトメンバーで記念撮影!(後列左)河村さん、(後列中央)村上さん

──最後に、番組の見どころを教えてください!

いろんなタイプのカメラを状況に応じて使い分けて撮影したので、現場のリアルさや没入感を楽しんでもらえたらと思います。火星という果てしなく遠い空間に行くことを想定した番組なんですけど、実は大事なことや課題は身近にあるんだということもわかっていただけるのではないかと…。だから、「自分は火星なんて縁がないや」と思わず、楽しく、気軽に見ていただけたらうれしいです。

慣れない生活の中で心の余裕が失われたり、飲料水として使っていた施設外にあるタンクの水が汚れていたりと、短い期間ながらもトラブルもあった2週間。7月14日(土)の放送を、お楽しみに!

「CREW191 フツーの7人が挑んだ火星移住実験」

【放送予定】7月14日(土)[BS1]後7:00~7:50

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