少女漫画の“美”に迫る!ディレクターインタビュー

美の壺

毎週金曜[BSプレミアム]後7:30〜8:00
再放送 毎週金曜 後0:00〜0:30

「少女漫画」! みなさん、読んだことはありますか? 戦後、その名の通り“少女向け”として登場した少女漫画。いまでは、歴史からSF、音楽などジャンルの幅を広げ、大人の女性や男性読者をも魅了するまでに成長しました。

暮らしの中にあるさまざまな“美”の選び方や鑑賞法を、3つのポイントに絞ってわかりやすく解説する美術番組「美の壺」。7月27日(金)の放送では、少女漫画に影響を受けた著名人とともに、少女漫画の魅力に迫っていきます。担当した山中康祐ディレクターに番組の見どころを聞きました!

──「少女漫画」にスポットを当てようと思われたきっかけは?

僕自身は、そんなに少女漫画を読んでいるわけではないのですが、瞳がキラキラだったり背景に花が散りばめられていたりと、表現方法が独特だなとは思っていたんです。そもそも少女漫画の定義は「少女向け雑誌に掲載されている漫画作品」なのですが、そのほとんどを女性漫画家の方が描いているのが、また興味深いですよね。

調べてみると、“女性漫画家たちによる、女の子向けの漫画”がここまで大きなジャンルとして発展しているのは、世界的に見てとても珍しいんです。そんなところも気になって、日本独特の文化のひとつである少女漫画について掘り下げたいと思ったんです。

──毎回「美の壺」では、“目利きになるための鑑賞ポイント(ツボ)”を3つ挙げていらっしゃいますが、「少女漫画」がテーマの今回は?

「表現」、「ヒロイン」、「ジャンル」の3つです。1つ目の「表現」のコーナーでは、キラキラの瞳や散りばめられた花など、少女漫画独自の記号的な表現法にスポットを当てています。

キラキラの瞳については、その元祖と言われる高橋真琴さんを取材しました。現在83歳で、今でも現役の画家としてご活躍されています。高橋さんは、終戦を迎えた11歳頃に、アメリカから来た少女を初めて見たそうです。金髪で、青い目の少女のニコッとした笑顔を見たときの衝撃……。やがてその面影をもとに描き始めたのが、キラキラした瞳の女の子の絵だったんです。

高橋真琴さん(左)と、高橋さんが表紙を手がけた漫画雑誌。

なお、少女漫画雑誌の創刊期には、手塚治虫さんや楳図かずおさんなど、すでに活躍していた男性漫画家が駆り出されていました。高橋さんもそのころ少女漫画を描かれていた方です。それを読んで育った女性たちが、その後女流漫画家として少女漫画界を担っていく、というのが少女漫画の歴史なんです。

花については、「ガラスの仮面」で知られる美内すずえさんにインタビューしています。美内さんは最初、花を“描かされていた”そうです。当時は「少女漫画といえば、花」と考えられていたとのこと。美内さんは「ここに花を描いて、意味があるのだろうか」とぼやきながら描いていたと。

やがて美内さんは、どんな風に描けばこの「花」で自分の作品を盛り上げることができるのだろうかと考え始めます。そこで見つけたのが、キャラクターの性格に合わせて花を描き分けるという方法だったそうです。

「ガラスの仮面」は登場人物の人間関係が特徴的ですが、その中心となるのが北島マヤと姫川亜弓のライバル関係。それを表現するために、華やかな世界を生きてきた亜弓の後ろには大振りなバラや洋ランを描き、平凡なマヤの背景にはマーガレットやチューリップのようなあどけない、かわいらしい花を描くようにしたのだとか。漫画家さんによって、花の使い方が違ったりするから、その点も面白いんですよね。

美内すずえさん(左)と、花で覆われた「ガラスの仮面」のヒロインたち。©美内すずえ/白泉社

──2つ目の「ヒロイン」のコーナーでは?

ここでは、少女漫画を研究している明治大学の藤本由香里教授へのインタビューをもとに、時代によるヒロイン像の変遷にスポットを当てています。例えば、少女漫画の初期の1960年代に支持されたのは、スポーツなどに打ち込む情熱的でドラマチックなヒロイン。1970年代後半に主流になったのは、読者が自分を投影できる“等身大の女の子”というヒロインでした。

女性が男性と同じように社会の中で活躍しはじめる、90年代以降のヒロインとして象徴的なのが「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎですね。うさぎは、“セーラー戦士”という同僚とともに、“悪を倒す”仕事をします。そんなうさぎを未来の夫である“タキシード仮面”と、“ちびうさ(未来の子ども)”がサポートもしてくれる。いわば仕事も家庭も両立しているようなヒロインなんです。

やがて2000年代になると、それまでマイナスの印象を持たれていた“個性”を、むしろ魅力として受け入れられるようなヒロインが登場します。「のだめカンタービレ」ののだめや、「海月姫」の月海がそれです。そうやって、年代ごとにヒット作のヒロインを見ていくと、なんとなく時代とリンクしているように見えてきますよね。

──3つ目の「ジャンル」でひもとくのは?

少女漫画というと、“小さな人間関係の中での恋愛物語”というイメージを持たれているかもしれませんが、実際はたくさんのジャンルがあるんです。スポ根、歴史もの、ホラー、SFなどなど、読者の日常とはかけ離れた設定のものもたくさんあります。「ジャンル」のコーナーでは、共感しづらい作品でいかに読者を作品の中に引き込むのか、という部分での漫画家の葛藤をひもといています。

インタビューしたのは、「ベルサイユのばら」で知られる池田理代子さんです。“ベルばら”は、フランス革命時のフランスを舞台にした歴史もので、誰もが知る一大ヒット作。ですが発表当時は、「史実を元に描く作品は少女漫画の読者に受けるはずがない」というのが少女漫画編集部の通例だったそうです。

池田理代子さん(左)と、男装の麗人・オスカル。©池田理代子プロダクション

当初の構想は、王国軍の隊長で、やがて市民側に寝返る決断をした軍人とはどんな人だったのだろうと想像してオスカルというキャラクターをつくったそうなのですが、当時池田さんは24歳。雄々しい軍人の内面なんて、想像もつかなかったそうなんです。だったら思い切って「その軍人は実は女性だった」という設定にしてみようということで、スタートしたと。結果として、フランス革命に向けてどんどん歴史が動いていく流れと、オスカルの恋愛物語が絶妙に絡み合って、大ヒットしました。

──改めて、少女漫画の魅力はどういうところだと思いますか?

番組では「マーガレット」や「りぼん」など、昭和、平成時代の少女漫画雑誌をすべて集めた少女漫画館という場所にも取材に行きました。そこに来られる方々にお話を聞いてみたところ、若いころに自分が読んでいたものを読むと、少女だった時代に戻ることができるとおっしゃるんです。

恋愛はもちろん、友達との付き合い方、さらに言ってしまえば人生観をも、少女漫画から学んだ部分が大きいと。そんなお話を聞きながら僕が感じたのは、漫画家の皆さんにとっても、読者の皆さんにとっても、少女漫画は“読み物という媒体”以上の存在なんだということ。読者である少女たちに、少女漫画がいかに大きな影響を与えたのかということを知りました。

タレントの西村知美さんは、少女漫画への愛を熱く語ります!

番組には、誰もが「読んだことある!」と思えるような作品ばかりが登場します。逆にこれまで馴染みのない方には、「少女漫画ってこういうものなのか」と知っていただけると思いますね。その一方で、かつて少女漫画のファンだった方には、当時を振り返るきっかけになればいいなとも思っています。

「少女漫画」を取り上げるのは7月27日(金)、BSプレミアムで後7:30から放送です! 少女漫画の世界に、どっぷり浸かりたいですね♪

取り上げた番組はこちらです!

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