フレンチ・ミュージカルの名作を2日連続で放送!

シェルブールの雨傘 ほか【渡辺祥子のシネマ温故知新】

9月11日(火)[BSプレミアム]後1:00 ほか

プレミアムシネマ9月の注目作品

第89回アカデミー賞で史上最多13部門14ノミネートを果たした『ラ・ラ・ランド』(2016)、このときの2人組の作詞家コンビが歌詞を担当しているヒュー・ジャックマン主演『グレイテスト・ショーマン』(2017)、ブロードウェイの大ヒット舞台が原作の『マンマ・ミーア!』(2008)、ディズニー・アニメから舞台ミュージカルを経て映画になった『美女と野獣』(2017)…とミュージカル映画が話題で日本にも本格的にミュージカルの時代が来た、と騒がれる昨今。これらの映画の中でも『ラ・ラ・ランド』の監督デイミアン・チャゼル自身が大きな影響を受けたと発言しているジャック・ドゥミ監督の2本のミュージカル映画、『シェルブールの雨傘』(1963)と『ロシュフォールの恋人たち』(1966)が11、12日の2日連続で放送される。

ブロードウェイ・ミュージカルやハリウッド・ミュージカルにあるのとは少し違うロマンティックで甘美な雰囲気がステキなフレンチ・ミュージカルの2作の音楽を担当したのは、パリ国立音楽院でクラシックを学んだミシェル・ルグラン。彼はクラシックだけでなくニューヨークの名門ジュリアード音楽院でジャズ・ピアノも学んでいて、『シェルブールの雨傘』はジャズの影響が濃い。だから『ラ・ラ・ランド』だけでなく、その前の『セッション』(2014)からもわかるようにジャズ好みのデイミアン・チャゼルが夢中になり、大きな影響を受けたのも無理はないのだ。

とはいえ、『シェルブールの雨傘』が生まれた当時の映画界の話題はこれが画期的なミュージカル映画だったことだ。第17回カンヌ国際映画祭のパルム・ドール賞を受賞し、第37回アカデミー外国語映画賞の候補作でもあった。ちなみにこのときはイタリア映画の『昨日・今日・明日』(1963)が受賞している。それまでにも考えた人はいたのだろうが、実際には誰も試みたことのなかった形式、《オペラと同じように、台詞はすべて音楽のリズムに乗せて歌われる》になった現代劇がはじめて誕生した。オペラの場合は、歌をすばらしい声で聴かせることを重視しているため、どうしても演技は写実的ではなくなるが、『シェルブール』の登場人物は自然な演技でドラマに溶け込み、けっしてオーバーな演技はしない。だから台詞がいきなり歌になっても何分か後には何の不自然さもなく聴くことになり、ドラマは普通に進行していくのだ。

【放送日時】
プレミアムシネマ「シェルブールの雨傘」
9月11日(火)[BSプレミアム]後1:00~2:32

演技重視とは言っても歌は重要なので歌声はすべて本職の吹き替え、傘屋の娘ジュヌビエーブを演じたカトリーヌ・ドヌーヴの歌声はダニエル・リカーリが、恋人ギイ役のニーノ・カステルヌオーヴォの歌はジョゼ・バルテルがそれぞれ吹き替えている。『ロシュフォールの恋人たち』は、ハリウッドからジーン・ケリーとジョージ・チャキリスを招いてミュージカル・コメディ形式で作られているが、映画の姉妹を演じたフランソワーズ・ドルレアックとカトリーヌ・ドヌーヴの姉妹の歌声はどちらも吹き替え。母親役のダニエル・ダリューだけは本人の歌声なのが不思議だが、第2次大戦前は美人女優で鳴らしたダリューはのちにシャンソン歌手になるほどの歌上手だった。

【放送日時】
プレミアムシネマ「ロシュフォールの恋人たち」
9月12日(水)[BSプレミアム]後1:00~3:07


渡辺祥子

【コラム執筆者】渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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