映画監督たちを俳優として起用
ヴィム・ヴェンダース監督の傑作犯罪映画

アメリカの友人【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

10月13日(土)[BSプレミアム]前0:15(金曜深夜)

がん作の絵を扱うトム・リプリーは、ハンブルクで額縁職人のヨナタンと出会います。重い病で死の不安に揺れるヨナタンを高額の報酬で犯罪に引きこもうとするリプリー。2人は奇妙な友情で結ばれていきますが…。
今回ご紹介するのは、ヴィム・ヴェンダース監督の傑作犯罪映画「アメリカの友人」(1977)です。

ヴェンダースの敬愛する映画監督たちも出演!

原作はアメリカの女性作家パトリシア・ハイスミス。人間のダークで複雑な心理をクールに描いた小説は次々映画化されており、なかでも、アルフレッド・ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」(1951)、アラン・ドロンの出世作で、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」(1960)は広く知られています。ハイスミスは、ドロンが演じたトム・リプリーが主人公の小説をシリーズで執筆しており、この作品でリプリーを演じるのはデニス・ホッパーです。アメリカ映画を刷新した傑作「イージー・ライダー」(1969)で脚本・監督・出演をてがけた、名優で映画作家でもあるホッパー、この作品では、カウボーイハットをかぶり、心優しき犯罪者を演じています。
ヨナタンを演じるブルーノ・ガンツはスイス出身、アドルフ・ヒトラーを演じた「ヒトラー~最期の12日間~」(2004)や、ハリウッド映画にも出演、国際的に活躍する名優です。この作品では家族を思い、犯罪に手を染めていくヨナタンを繊細に演じています。

さらに「いとこ同志」(1959)のジェラール・ブラン、「ポケットの中の握り拳」(1965)のルー・カステルといった名優に加え、熱烈な映画ファンのヴェンダース監督は、敬愛する映画監督を俳優として起用しています。贋作を描く画家は「夜の人々」(1948)「理由なき反抗」(1955)で知られるニコラス・レイ。マフィアを演じるのは「ショック集団」(1963)「裸のキッス」(1964)のサミュエル・フラー。2人はヴェンダース監督の師匠ともいえるアメリカの名監督です。さらに「ラ・パロマ」(1974)「ヘカテ」(1982)といった個性的な映画を作り続けたスイスのダニエル・シュミット、ドイツのペーター・リリエンタール、「ママと娼婦」(1973)「ぼくの小さな恋人たち」(1974)をてがけ、42歳で亡くなったフランスの伝説的映画監督ジャン・ユスターシュといった映画作家たちが、強烈な存在感を発揮しています。

赤い自動車、黄色いレインコート、ハンブルクの雨にれた街並み…。ヴェンダース監督と名コンビの名撮影監督ロビー・ミューラーの鮮烈なカラー映像と流麗なカメラワークも見どころです。秋の夜長、クライム・サスペンスの傑作をじっくりお楽しみください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「アメリカの友人」
10月13日(土)[BSプレミアム]前0:15〜2:23(金曜深夜)

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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