暗殺者の暗躍と激闘!個性の違う3作品

ボーン・アイデンティティー ほか【渡辺祥子のシネマ温故知新】

プレミアムシネマ1月の注目作品

今月はスリリングな殺しのサスペンス『ジャッカルの日』(1973)と、アクション・サスペンスのファンを圧倒した『ボーン・アイデンティティー』(2002)、そして続編の『ボーン・スプレマシー』(2004)にぜひご注目を。共通するのは暗殺者の暗躍と激闘だが、同じ殺しのジャンルでもこんなにもテイストがちがう映画になるのか、と驚かされる。

イギリスのジャーナリスト出身フレデリック・フォーサイスが1971年に発表、世界的大ベストセラーになった後に『真昼の決闘』(1952)『地上より永遠に』(1953)などで知られる反骨の監督フレッド・ジンネマンによって映画化されたのが『ジャッカルの日』。カルロスという実在のモデルが存在したというジャッカルは、依頼を受けてフランスの大統領シャルル・ドゴールの暗殺を企て、着々と彼に迫る。しかしドゴールは暗殺されていないはず。にもかかわらず、映画を見ているうちにさてどうなるのか、とドラマにのめり込み、ついに訪れるその瞬間を息をつめて見守ってしまう、というのがこの映画の見所。ジャッカルは自分を護るために接触した相手は決して生かしてはおかない、というのもスリルを煽り、狡猾なジャッカルにあの手この手で利用される人々がどうなるのかが見もの。

そんなジャッカル役を演じたエドワード・フォックスは、王立演劇アカデミーを卒業後、舞台俳優として活動中にジャッカル役に抜擢されてスターダムに躍り出た。以後はアクの強さを持つ性格俳優として映画と舞台で活躍が続く。地味な俳優陣の中の紅一点デルフィーヌ・セイリグは1960~70年代フランス映画界で活躍したエレガントな女優。両親ともフランス人だが、第2次大戦中は父親が駐米大使館の文化アタッシェだったところからアメリカで暮らしてアクターズ・スタジオに学んだ。アラン・レネ監督のヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作『去年マリエンバートで』(1960)の主演に起用されて人気が出た。

【放送日時】
プレミアムシネマ「ジャッカルの日」
1月10日(木)[BSプレミアム]後1:00~3:24

もう一方の『ボーン・アイデンティティー』はロバート・ラドラムの「暗殺者」が原作。重傷を負って記憶喪失になっていたため、何も知らずに腕に埋め込まれたマイクロチップによって銀行口座からお金を引き出したことから、CIAの殺しの手がのびるというのがマット・デイモン演じる暗殺者ジェイソン・ボーン。続編の『ボーン・スプレマシー』はラドラムの「殺戮のオデッセイ」が原作。その続編が「最後の暗殺者」を原作にした『ボーン・アルティメイタム』(2007)だが、この3作ができたところでラドラムが亡くなり、別人によって書かれたのが『ボーン・レガシー』(2012)でマット・デイモンは出演していない。ラドラムの3作には大きな役ではないのだが女性が知的で行動的に描かれているのが印象に残る。『ボーン・アイデンティティー』のマリー(フランカ・ポテンテ)をはじめ、CIAの職員の一人、ニッキー(ジュリア・スタイルズ)、CIAのエリート職員パメラ(ジョアン・アレン)と骨のある役を硬派の演技派女優が演じて頼もしい。

【放送日時】

プレミアムシネマ「ボーン・アイデンティティー」
1月14日(月)[BSプレミアム]後1:00~2:59

プレミアムシネマ「ボーン・スプレマシー」
1月15日(火)[BSプレミアム]後1:00~2:49


渡辺祥子

【コラム執筆者】渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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