「イエスの塔」の構想が明らかに!
光と色に込められた思い

NHKスペシャル

1月6日(日)[総合]後9:10
1月9日(水)[総合]後11:55 ※再放送

130年以上も建設が続いている建物、サグラダ・ファミリア。

未完の世界遺産であるこの教会の最大のシンボル、「イエスの塔」の建設が2018年秋に始まりました。この教会の建設を考案したのは、90年以上も前に亡くなった天才建築家、アントニ・ガウディ。実はガウディの建築資料は内戦で焼失しているため、彼が思い描いたイエスの塔の壮大な構想は未だ謎に包まれています。

今回のNHKスペシャルでは、イエスの塔の建設に密着。工事用のクレーンにカメラを取り付け、110メートルもの高さの石の塔を撮影したり、巨大なステンドグラスによって色彩ゆたかな光が注ぎ込む大聖堂の内部を日本のメディアとして初めてドローンで撮影したりして、今まで見られなかった映像をお届けします。

「色」と「光」にこだわっていたガウディ。その思いを汲みとりながら40年以上サグラダ・ファミリアで彫刻を続けてきた日本人彫刻家の外尾悦郎さんと親交があり、撮影を担当した上泉美雄カメラマンに、撮影のこだわりや工夫を聞きました。

上泉美雄カメラマン

4Kカメラで撮影するサグラダ・ファミリア

──上泉カメラマンがサグラダ・ファミリアの取材を始めたのはいつからですか?

2011年に、4カ月ほど主任彫刻家の外尾さんに密着取材をさせていただき、そのご縁で今回も僕が撮らせていただくことになったんです。久しぶりに見たサグラダ・ファミリアは塔の形も変わり、建物が進化していて感動しました。

──今回の撮影にはどのくらいの日数をかけたのでしょうか。

2018年4月に2週間、6月~7月に6週間、10月に3週間なのでトータル3ヵ月弱です。サグラダ・ファミリアはご存じの通り世界屈指の観光名所で、午前9時には観光客が大勢やってくるので、教会内の撮影はだいたい朝の7時から9時までの間に集中して撮影することが多かったですね。教会の外の建築現場は日陰が無い場所も多かったので、7月の撮影はすごく暑くてみんな汗だくでしたし、10月は雨が多く、ごく限られた時間での撮影になったのでとてもハードでした。

また今回は4Kカメラで撮影したんですが、とにかく高精細なので、大画面で見た時、三脚を立てずに担いで撮った映像は画面が揺れてしまい、酔うんです。そのため、どこをどうやって撮るのかという映像設計をより緻密に考え、計算して撮影しました。

──どの場所をどのように撮るのかというのは大事なことなんですね。

そうですね。特にガウディは「光」と「色」を大切にしていたので、そこはとくに気をつけました。たとえば建物の東側にある「生誕の門」は、イエス・キリストが生まれたときの物語が彫刻で掘られているので、朝日が当たる光をどのタイミングでどの角度から撮ると一番「生誕の門」の意味が表現できるのかを考えました。ステンドグラスの部分も、朝焼けの「青」と陽が上ったときの「赤」など、ガウディが表現している色のメッセージを映像でもできるだけ伝えたいと思いました。

イエスの塔の構想

──ガウディの構想が残されていない「イエスの塔」の内部デザインは、どのように作られていくのでしょうか?

外尾さんは「イエスの塔」の内部で、神様と人間との繋がりを表現しようとしていて、デザインはもちろん、色をどうするかというのを深く考えています。外尾さんがおっしゃっていたのは、「ガウディは自然から学んでいる。自然には境目がなく、神様は境界線を作らないのではないか。だからきっと色にも境界線がなく、グラデーションのように変化していくのではないか」ということでした。そのなかで「紫」という色がキーポイントになってくるんですが、その紫はどんな紫色をしているのか、紫からほかの色に変わるグラデーションをどのように表現するのかにとても悩んでいました。その外尾さんが考える色の設計をできるだけ僕も忠実にお届けしたいと思っています。

イエスの塔の内装打ち合わせする外尾さん

──映像でその色を出すために、どのような工夫がされているのでしょうか。

4Kカメラは、カメラに収めた映像の「色」を再現する幅が、これまでの2Kカメラに比べると倍以上あるんです。ただ、普段僕らが持っているデジカメのように、撮ってすぐにその色が見られるわけではありません。4Kカメラで撮影しても最初は色味がないので、あとからどういう色をつけていくかを決めていかなければいけないんです。

ですから僕らカメラマンは、現場で青空を撮ったなら、その青の色をきちんと記憶しておくことが大切になってきます。とはいえ、たとえその色をそのまま正しく再現できたとしても、例えばきらびやかな光ばかり長く見ていたら疲れるでしょうし、キレイな色でもずっと見ていたら慣れてしまうかもしれません。そこで、番組の中で見せる映像には色味や明るさの強弱をつけるようにしています。

さらに、シーンごとに何を伝えたいかを考えフォーカスすることも大事です。今回、そこまで極端に色を変えることはないですが、サグラダ・ファミリアの何にフォーカスしたいのか、その意味を考え、映像で構成し、表現することが僕の役割だと思っています。

帰国後、映像の色彩を調整

ガウディの世界観とサグラダ・ファミリアの目指すもの

──サグラダ・ファミリアを取り上げた番組はこれまでにもありましたが、今回の番組では、ほかの番組では見られなかった映像もたくさん楽しめそうですね。

ひとつは、外国メディアとしては世界で初めて入れた現場で、4Kカメラでの空撮やドローン、工事用クレーンにカメラをつけて撮影しており、「生誕の門」などもかつてないほど間近で撮っています。

でもこの番組で何を一番伝えたいかというと、ガウディの世界観とサグラダ・ファミリアが目指しているものなんです。ガウディは、サグラダ・ファミリアが貧しい人たちもお祈りできる場所となり、バルセロナのシンボルになってほしいという思いを抱いていました。イエスの塔の設計図がなくても、そういうガウディの思いが弟子たちに受け継がれ、今日よりも明日、もっといいものを作ろうと繋がっていく。僕もその考え方を尊敬していますし、番組を通して伝えたいことですね。

──ガウディの願いが感じられる映像になりそうですね。

ガウディだけではなく、サグラダ・ファミリアはバルセロナ市民、カタルーニャ地方の宝です。実寸大の模型を作る人たちも、タイルを焼く職人も、サグラダ・ファミリアに携わる人たち全員が誇りを持って取り組んでいます。彼らの熱も感じてほしいですし、物づくりで奮闘している外尾さんたちの姿が余韻で残るような映像になっていたらうれしいです。

中村メイコさんにもインタビュー!

中村メイコ

番組の案内役は、サグラダ・ファミリアの入り口に鎮座する石像のカメ。そのカメに声を吹き込んだのは、俳優の中村メイコさんです。サグラダ・ファミリアにも何度も足を運ばれているという中村さんに、ナレーション収録後、お話を伺いました。

最初にサグラダ・ファミリアに行ったのがもう何年も前で、実際に自分の足で歩いたんですけど、もう感動しました。息子(長男で画家の神津善之介さん)が長くスペイン暮らしですから、「メイコさんはスペイン詳しいでしょ」と思っていただくことも多いんです。なので今回は、どんな良い女ぶって喋るのかと思ったら、「私はカメよ」だなんてね(笑)。NHKはこういう人間以外の役を演じるお仕事が多いんですけど、でも私、こういう役も好きなんですよ。

──どんなカメをイメージしましたか?

本当の生きているカメだったら、もうちょっとヌメっとした声でやった方が良いと思うんですけど、ガウディ自身が作った石のカメというのをどう表現しようかと思って、すこし気品のあるカメさんをイメージしてみました。日本でいうと、村のお地蔵さんのような、そんな感じにしたいな、と思ったんですけど。長くその村の歴史を見てきましたっていう視点でね。

──番組をご覧になる方へメッセージをお願いします。

この番組は、ガウディがどうのこうのって、まったく詳しくない方が見ても、年齢を問わず楽しめるんじゃないかなと思います。お正月にご家族そろって楽しく見ていただけたら嬉しいです。ただ私も家族がいるので、彼らが私の石像のカメの声を聞いたらどうなんでしょうね(笑)ちょっと怖いですけど。


建物そのものの美しさはもちろん、完成に向けて熱い思いを持っている職人のみなさんの姿にも注目です!

NHKスペシャル「サグラダ・ファミリア 天才ガウディの謎に挑む」

【再放送】1月9日(水)[総合]後11:55

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