山田洋次、天海祐希が語る「吉永小百合」

プロフェッショナル 仕事の流儀

10月26日(土)[総合]後7:30

国民的映画俳優・吉永小百合さん(74)が、異例の長期密着取材を受け入れた。最新作の映画撮影の舞台裏にカメラが潜入し、その一部始終を記録。衣装合わせに始まり、クランクアップ、さらにはプライベートに及ぶ、10か月にわたる密着取材…吉永さんの知られざる実像に迫る、全国民必見の73分スペシャル。

本編で「吉永小百合にゆかりのある人物」としてインタビューに応じている映画監督・山田洋次さん、そして新作映画で吉永さんと共演した天海祐希さんのインタビューをご紹介します!


 山田洋次 “映画俳優・吉永小百合” を語る

──吉永小百合さんはどんな俳優?

吉永小百合という存在は、日本に「労働者」と呼ばれる若者がいっぱいいた時代に、その働く若者たちの大きな希望になっていたんじゃないでしょうか。働いて、なけなしの賃金を手にして映画館に行って、スクリーンで吉永小百合を見て、よし明日もがんばって働こうという気持ちにさせる、本当に星のような存在だったんだと思います。だから僕の寅さんでも、いつかは吉永小百合をマドンナにしよう! と、僕も渥美 清さんもスタッフも全員が思ってましたね。

それで1972年についに吉永小百合さんの出演が決まったんですけれども、その時はいよいよ僕たちの「寅さん」シリーズに吉永小百合が登場するって、皆どんなにうれしかったかわからないですよね。撮影所じゅうの皆が興奮して彼女を迎えた記憶がありますから。だから本当に特別なんですよ。

──吉永さんご自身は「自分をプロだと思ったことはない」と仰るそうですが

小百合さんは、「プロフェッショナル」なんていうと一番抵抗を感じる方かもしれませんね。わたしプロじゃないわよ、なんて。むしろ、プロでありたくないって一生懸命思ってるかもしれないです。つまりアマチュアでいたいと。

この「アマチュアでないといけない」というのは、映画演技についてのひとつの考え方であって、それはセオリーとして彼女の中にあるんだと思うし、いつも素人みたいでありたいと思ってる小百合さんのことも僕たちは深く理解しているけれども、でもあの人と仕事をすると、本当にプロだと思うことがあるんですよね。それは、映画俳優としてプロということですね。映画スターとしてのプロだなあと思います。

──「映画俳優としてプロ」とは?

まずは相手の俳優がいて芝居してるんだから、相手の俳優をじっと見て芝居することが大事ですよね。自分の投げかけたせりふを相手がどういうふうに受け止めて、どういうふうに返してくれるか。小百合さんはちゃんと相手を見て、その相手も1人だけじゃない、3人も4人もいる場合もある。その中にいる自分が1人の俳優としてどう反応して、どう感動したり、悲しんだりすればいいかってことがよくわかってます。

さらにそれは、俳優だけじゃなくて、100人近いような大勢のスタッフも見てるわけですよね。特に僕の映画の場合はキャメラ1台で撮るから、全員がじーっと小百合さんの芝居を見てるわけです。そうすると、そこから見てる何かを彼女は受け止めるんじゃないでしょうか。いま皆が求めてる演技はこれじゃないかなっていうのが自然に出てくるというか。皆がとても大きな期待をもってじーっと見つめて、そこで俳優がステキな演技をすると、思わず涙ぐんだり、逆に笑ってしまったり、しんみりしたり。そういうふうにして映画って作っていくものだし、そういうものなんだっていうのを小百合さんはよくご存知なんです。それが彼女のプロたる所以ゆえんですね。

──吉永さんとの映画づくりではどんな喜びを感じられますか?

あのステキな人格に触れられるってことですかね。小百合さんの考え方、思想に触れられる。ステキな女優さんってたくさんいるけども、ちょっと別格の人ですからね。

美しいって顔かたちだけじゃなくて、彼女の感受性、思想、生き方も含めて。それから彼女のいろんな人間観察、人生観、そういうもの全て含めて現在の吉永小百合像があるわけで、小百合さんが小百合さんであることは日本中のファンが期待してるものだから、ご本人はいつもとても大きなプレッシャーの中で人生を過ごしていると思いますけど、そのステキな小百合さんにスクリーンを通して会えることが喜びですね。


 天海祐希が感じた “吉永小百合” のすごさ

──吉永さんの映画俳優としてのすごさとは?

吉永さんご自身が「女優・吉永小百合」という人物を一切邪魔してないっていうんですかね。皆さんが映像を通して吉永さんに抱くイメージをそのままお持ちの方ですね、本当に。そこにプラスするならば、もうちょっとお茶目で、もうちょっと可愛かわいらしい。それってすごいことだと思うんですよね。

私たち、お仕事をしてない時の自分が、表に出ている時の自分の足を引っ張ることって多々あるじゃないですか。私はちょっと「ブラック天海」が出る時があるんですけど(笑)、でも「ブラック小百合」はいないんですよね。表に出してるものと中身が一緒の方って、私あまり出会ったことがないですね。人としても女性としても、なんてすてきな人だろうと思います。本当にうそがない、ごまかしがない。

──うそがない、ということは演じる上でどんな良さに繋がるのでしょうか?

私たち、芝居する時にはたとえば「ここでこうしたいから今はこうしておこう」って計算して、段階を踏むんですけど、吉永さんはその瞬間瞬間、計算ではなくて、本気度が高いんですよね。

ご自分でもおっしゃってましたけど、「よーい、スタート!」の声が掛かると「このくらいにしておこう」ということができない。叩く芝居の時でも、テストから全力で叩いてしまう、だからケガしてしまうんですって。私なんかテストの時って、このくらいにしておかないと本番まで続かないなって思って加減してしまうんですけど、これだけのキャリアがある吉永小百合さんが、リハーサルやテストの時からこんな全身全霊でくるんだと思ったら、本当にごめんなさいって、己を省みました。

──吉永さん自身と役柄にもうそが無いと感じましたか?

私も含めですけど、役柄と自分にものすごく間がある役柄ってあるじゃないですか。でも吉永さんにはそれがないと思うので、ご自身に引き寄せてるのか、逆にご自分が寄ってるのかはケースバイケースでしょうけれども、そこと自分の境目にいられるって、すごいことだなと思うんです。大抵どっちかに必ず寄ってしまうんですよね。だからご自分であるときの冷静さをちょっと持って、そしてその役柄に対する没入感というんですかね、そういうものにちょっとだけブレーキをかけている。でもスタートがかかるとそれが制御しにくいみたいです。それでも、間にいるんですよね、小百合さんって。

今回の共演でその姿を間近で見られて、私の目を見てお芝居してくださって、小百合さんが見ている景色を両目で見られた気がして、とても幸せでした。すごく感激してしまって、吉永さんと映画が撮れたなんて信じられない心地ですね。

──吉永さんは映画界にとってどんな存在ですか?

レジェンドでしょうね。レジェンドでありながら、バリバリの現役でみんなを引っ張ってる感じ。もうこういう方は出てこないと思います。それは小百合さんが歩んでこられた時代や状況もあるでしょうけれど、小百合さんのような方はもう二度と現れないと思います。

今年74歳になられるなんて、信じられますか? あんなに可愛くてあんなに綺麗きれいなんですよ? 小百合さんを見てると、人間って心の美しさが出るんだなって思います。そこに気がつくことができた自分も幸せだなって思いますね。


さらに、近日中に吉永小百合さんのコメントもご紹介予定です! お楽しみに!

プロフェッショナル 仕事の流儀「吉永小百合スペシャル」

【放送予定】10月26日(土)[総合]後7:30~8:43

▶ 番組ホームページ

取り上げた番組はこちらです!

検索 NHKサイトでもっと探す

関連記事

その他の注目記事