“天皇の料理番”が仕込んだ、おいしさの秘策!

偉人たちの健康診断

10月31日(木)[BSプレミアム]後8:00

健康のヒントは歴史にあり!

「偉人たちの健康診断」は、歴史上の人物の日常生活や病歴、さらには健康へのこだわりから、現代の私たちが元気で長生きするためのヒントを探っていく番組です。

10月31日(木)放送回は、題して「天皇の料理番 即位の晩さん会“味覚”の秘密」。大正天皇即位の晩さん会で総料理長を任された料理人・秋山徳蔵の「料理の世界」を健康診断し、詳しく迫っていきます。井上和也ディレクターに話を聞きました。

 50年以上、天皇家の“料理番”を務めた秋山徳蔵

──10月22日、天皇陛下即位の晩さん会が行われましたね。

天皇陛下即位にあたり、「偉人たちの健康診断」でも何かの形で取り上げることができないかと模索していたんです。そこで、即位の晩さん会が開かれると聞き、“料理”という切り口から入るのはどうだろうと企画しました。

──どんな内容になっているのですか?

前半は大正天皇即位の際に開催された晩さん会のフランス料理、後半は昭和天皇が日々召し上がっていた料理を取り上げるのですが、そのどちらも担っていたのが、今回スポットをあてる料理人の秋山徳蔵です。秋山は実に50年以上、天皇家で“料理番”を務めた人物。小説やドラマでも題材となっているので、ご存知の方も多いかもしれません。

秋山徳蔵と昭和天皇

「偉人たちの健康診断」で取り上げる人物は、信頼できる史料があまり残っていないことも多く、毎回苦労するのですが、秋山の場合は特に難しく、勲章も授与されていて知名度のある方にも関わらず、伝記や評伝がほとんどありません。さらにいうと彼の作った料理に関する批評もなければ、顔写真も数少ないんです。それでも幸いだったのが、料理のイラストとメニューが残っていたこと。残っていた資料や秋山が執筆した著書を参考に、さらにご子息、専門家の先生方にご協力いただいて、内容を固めていきました。

 秋山が作った、晩さん会のコース料理を再現

──みどころを教えてください。

秋山は25歳で大正天皇即位の礼の晩さん会の料理長に抜てきされました。番組では、その晩さん会でふるまわれた10品に及ぶフランス料理のコースを出来る限り再現しています。当時の味を知っている方がいない中、重要な手がかりとなったのが、秋山がフランスで修業していたころの師匠・エスコフィエが出している分厚いレシピ本です。この本と残されていた料理のイラストを、フランス語堪能な料理研究家の方と照らし合わせて、料理の専門学校の協力のもと、仕上げていきました。

秋山徳蔵の晩さん会メニューの記録

──10品に及ぶコース料理、特に肝となったのは?

秋山はどんなコース料理にするか連日連夜悩んだそうで、なかでも最もこだわったと言われているのが、はじめに出すスープです。晩さん会を成功に導くため、賓客の心をつかみたい…秋山はそんな思いを込めたスープに「ザリガニ」を使いました。同じ甲殻類でもズワイガニや伊勢海老であれば入手しやすかったはず。そこであえてザリガニをセレクトしたのは、秋山が自分の直感と経験に基づき、人間が「おいしい」と感じる理由を悟っていたからのようです。
というのも、ザリガニは欧米のポピュラーな食材のひとつで、多くの外国からの賓客が食べ慣れた、いわば“なつかしの味”でした。実は現代の科学で、味覚には「幼少期からの食体験」が大きく影響すると立証されています。秋山が晩さん会の料理を作ったのは約100年も前なのに、そこをきちんと突いていたんです。番組ではちょっとした実験も交えつつ、秋山も実践していた「おいしさを感じる“味覚”の秘密」を明らかにしていきます。

「ザリガニのスープ」(左)イラスト、(右)再現

──スタジオ収録にもザリガニ料理が登場したんだとか。

ゲストのみなさんに「塩ゆでのザリガニ」を食べていただき、好評でした。私も初めて口にしましたが、個人的にカニとエビの間みたいな印象でしたね。ただ、驚いたのが食べられる部分が少ないこと。親指の先ぐらいしかなくて。晩さん会で供されたスープを再現する上で、ザリガニの身の部分は、一皿あたり4匹程度使っています。加えてエキスやミソをスープに生かすため、大量のザリガニを麺棒で潰していたとのことで、晩さん会のためにおよそ3000匹が捕獲されたそうですよ。

──ザリガニのスープのあと、晩さん会はどんな流れに?

魚と肉料理が4品続きます。もうおなかいっぱいでは!?というぐらいの分量ですよね。ところが、この後いよいよメインが出てきます。そこでメインの前に提供されたのが、リキュール入りのオレンジシャーベットでした。香りや触感、刺激される味覚がそれまでの4品とはガラっと変わります。これがいわゆる「別腹効果」につながるんです。その正体にも迫っていますので、お見逃しなく!

「オレンジと酒のシャーベット」(左)イラスト、(右)再現

 おいしい料理を提供したい一心で…

──晩さん会のあと“天皇の料理番”として働くことになったんですよね?

はい、29歳の若さで宮内省大膳科の初代総料理長に就任します。ただ、総料理長といっても、天皇陛下に直接話しかけることは許されません。毎日下がってきたお膳から好みや体調を推察し、献立に反映していたそうです。

陛下にできるだけおいしい料理を召し上がっていただくため、秋山自身が各地を食べ歩いていろいろな味を覚えたり、食材にもこだわりぬいて御料牧場(※)をたびたび訪れたりしていました。昭和天皇が実際に召し上がっていた料理の一例も、番組でご紹介します。意外と一般的な料理がならび、でも栄養バランスがとても良いという、実にすばらしい献立です。
※天皇家の食卓を支える牧場。羊や豚、季節の野菜などを生産

──番組をご覧になる方にメッセージをお願いします!

取材をしたフランス料理の専門家たちによると、通常ならばフランス料理は10年修業を積んでようやく1人前になれるそうです。しかし、秋山がフランスで修業したのは5年。にもかかわらず本格的なフランス料理をマスターし、大正天皇即位の晩さん会を成功に導きました。その点に皆一様に驚いていましたね。修業先のフランスでは、調理の様子を見たことはあってもおそらく自分では作ったことのない料理もあったはずです。調べれば調べるほど、とにかく本当によく料理したなぁと感じました。いわばデビュー戦でいきなり成果をあげ、それがきっかけで天皇の料理番として長年台所を預かることになったわけですから。今回はそんな秋山が料理に練りこんだ「おいしさ」の秘策を、現代科学の目でじっくりひも解いていますので、ぜひ楽しんでいただけたらうれしいです。

食欲の秋にもぴったり!秋山徳蔵の料理の世界を味わってください!

偉人たちの健康診断「天皇の料理番 即位の晩さん会“味覚”の秘密」

【放送予定】10月31日(木)[BSプレミアム]後8:00

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