だまされたと思って見てください

テキサスの五人の仲間 ほか【渡辺祥子のシネマ温故知新】

プレミアムシネマ3月の注目作品

今月はぜひ “だましのドラマ” に翻弄されてください。

ヘンリー・フォンダやジェイソン・ロバーズ、ジョアン・ウッドワードなど、オールド・ハリウッドのベテラン俳優をそろえた『テキサスの五人の仲間』(1966)は、昔ながらの西部劇の駅馬車の疾走で始まる、と見せてこれがじつは霊きゅう車だったのだ、というおふざけで始まる。そこからもうこの映画を観る人の予想をくつがえす仕掛けが始まっていて、100人のうち99人まではだまされるはず。ポーカーのゲームを描きながらポーカーに勝つために必要なポーカーフェースとブラフ(はったり)の戦術をそのまま映画の構成と趣向に使って観客をだましぬく、という凝った作り。脚本を書いたシドニー・キャロルは、黒澤 明監督がアメリカで撮影する予定で挫折した『暴走機関車』(85年、のちにアンドレイ・コンチャロフスキー監督、ジョン・ボイト主演で製作され日本でも公開された)の脚本を手伝っていた脚本家。脚本を執筆していた菊島隆三は、彼がフルスピードでタイプを打つのを見て、それまでの手書きからカナタイプに変えた、というエピソードが残っている。

プレミアムシネマ「テキサスの五人の仲間」

3月24日(火)[BSプレミアム]後1:00〜2:36

ノーベル賞作家カズオ・イシグロの長編小説が原作の『日の名残なごり』(1993)は、英国最高の文学賞で英語圏の文学に与えられるブッカー賞を1989年に受賞。英国名門一家に半生を捧げた老執事が仕事に忠実なあまり自らの恋をあきらめた過去を振り返る。カンヌ映画祭45周年記念賞を受賞した『ハワーズ・エンド』(1992)のスタッフ、キャスト(監督ジェームズ・アイボリー、主演アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン)が再結集して生まれた。どちらも画面の隅々まで英国の雰囲気がたっぷり漂う映画だが、監督のアイボリーはカリフォルニア生まれのアメリカ人、製作者イスマイル・マーチャントはインド人、というのがおもしろい。

映画の舞台は名家オックスフォードのダーリントンホール。主人が第2次大戦中ドイツを賞賛、ユダヤ人の召し使いを解雇したりしていたが、戦後はアメリカの富豪の手に渡っている。この富豪を演じるのがスーパーマン役で人気が出たクリストファー・リーヴ。舞台などでも活躍していたが95年5月に落馬事故で脊髄を損傷、全身麻痺まひになった。だが懸命なリハビリの結果、車椅子で移動できるまでに回復して映画に出演、監督もして2004年に52歳で亡くなった。

プレミアムシネマ「日の名残なごり」

3月2日(月)[BSプレミアム]後1:00〜3:15

ミステリーの女王アガサ・クリスティーが生んだ名探偵といえばエルキュール・ポワロとミス・マープルの2人。その片方、おしゃべり好きで観察眼が鋭い老婦人ミス・マープルをアンジェラ・ランズベリーが演じる『クリスタル殺人事件』(1980)の原題日本語訳は「鏡は横にひび割れて」。クリスティーはミス・マープルものの8作目になるこの長編ミステリー小説のタイトルをテニスンの詩「シャロットの姫」の一節からもらった。「鏡は横にひび割れぬ。ああ、呪いが我が身に、とシャロット姫は叫べり」。この状況をほうふつとさせる状態があったことをミス・マープルはその場にいた人の証言から知り、事件を解決へと導いていく。クリスティーは実在するハリウッド女優のエピソードをヒントにこのミステリーを書いたそうだ。

プレミアムシネマ「クリスタル殺人事件」

3月28日(土)[BSプレミアム]後1:30〜3:17


渡辺祥子

【コラム執筆者】渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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