ポン・ジュノ監督も大ファンの傑作!
予言に翻弄された武将の末路とは…

蜘蛛巣城【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

3月9日(月)[BSプレミアム]後1:00

1910年3月23日生まれ、まもなく生誕110年となる黒澤 明監督。黒澤監督と名コンビの名優・三船敏郎さんは1920年4月1日生まれで、来月、生誕100年です。黒澤監督も三船さんも亡くなって20年以上になりますが、今も世界中の映画ファン、映画作家から敬愛されています。その黒澤監督と三船さんが、シェークスピアの4大悲劇の一つ『マクベス』をもとに作りあげた重厚な時代劇がこの作品。今年、アカデミー作品賞・監督賞など4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(2019)のポン・ジュノ監督も大ファンだと語る傑作です。

静と動の演技にほれぼれ…能を取り入れた世界観にも注目!

戦国時代、武将・鷲津武時は、迷い込んだ森のなかで妖しい老婆から奇妙な予言をききます。それは、武時が、蜘蛛巣城の城主になるというものでした。武時の妻・浅茅は、予言を聞き、武時に、主君を殺すようそそのかします。予言のとおり、武時は城主となりますが…。

三船さんは、当時30代半ば。すぐれた武将でありながら、権力に執着していく武時を迫力で演じています。とりわけ表情、大きく見開いた目が印象的です。そして、次第に狂気におちいっていく妻・浅茅を鮮烈に演じているのが、山田五十鈴さん。溝口健二監督の『マリヤのお雪』(1935)、小津安二郎監督の『東京暮色』(1957)、成瀬巳喜男監督の『鶴八鶴次郎』(1938)、そして黒澤監督と、世界的な巨匠の作品はもちろん、ドラマ・舞台で幅広く活躍した、日本を代表する大女優です。この作品での、浅茅の演技、静と動のたたずまいは、見ていてほれぼれしてしまいます。

黒澤監督は、能の様式美を取り入れ、強烈なグラデーションのモノクロ映像で、まるでホラー映画のような、この世のものとは思えない、不思議な世界を作りだしています。御殿場の富士山麓さんろくに築かれた蜘蛛巣城の巨大なセット、火山灰の荒涼とした風景や、黒澤監督のトレードマークともいえる風、矢が飛び交うクライマックスは、何度見ても圧倒されます。

『マクベス』は何度も映画化されており、オーソン・ウェルズの監督・主演作や、ロマン・ポランスキー監督の作品が知られていますが、最近でもマイケル・ファスベンダーの主演作や、インドのヴィシャル・バードワージ監督が登場人物をギャングに置きかえた『Maqbool』(2003)という作品が公開されています。権力と欲望に目がくらみ、破滅へと向かっていくマクベスは、今も刺激的な題材なんでしょうね。

黒澤監督と三船さんの傑作をじっくりお楽しみください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「蜘蛛巣城」
3月9日(金)[BSプレミアム]後1:00〜2:51

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坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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