プレミアムシネマ5月の注目作品をご紹介!

新幹線大爆破 ほか【渡辺祥子のシネマ温故知新】

いまも人気は高値安定のキアヌ・リーヴスの出世作になったヤン・デ・ボン監督のアメリカ映画『スピード』(1994)を懐かしく思い出すのが、佐藤純彌監督の『新幹線大爆破』(1975)だ。この2作、ポイントになるところがほぼ同じ。『スピード』では、バスに爆薬が仕掛けられるが、こちらは新幹線のひかり109号に爆弾が仕掛けられ、速度が80キロ以下に減速されると爆発する、と犯人から連絡がある。“減速すると爆発する”というのが2作の共通点だ。もちろん『新幹線大爆破』が先に製作された。

主役は、はじめは高倉 健ではなかったのだが、当時東映の仁侠映画で絶大な人気を誇った健さんは、新たな道を模索していて、そのときちょうど目に留まったのが『新幹線大爆破』の脚本だった。そこで自ら売り込んで出演。映画は日本だけでなく外国で大ヒット、フランスやドイツでは大幅に編集された版が大評判になった。それをオランダ人のヤン・デ・ボン監督が見たのかどうかはわからない。ということはさておいて、似たアイデアが生きた歯切れの良いハリウッド映画『スピード』が誕生した。

『新幹線大爆破』が生まれた時代の日本映画界は、まだ著作権を気にせず、外国へ売れたあとのことは関係なかったので思いがけない映画が誕生した。中でも有名なのがウディ・アレン監督の『ホワッツ・アップ,タイガー・リリー?』(1966)。これは東宝映画の『国際秘密警察』シリーズ全5作中の第3作『火薬の樽』と第4作『鍵の鍵』を併せたものをウディ・アレンが自在に編集、セリフを差し替え、そこに撮りおろしシーンを加えて再編集したギャグ映画。当時絶大な人気を誇った007映画のパロディーになっている。

プレミアムシネマ「新幹線大爆破」

5月12日(火)[BSプレミアム]後1:00〜3:33

今月は、どちらも実際にあった出来事が下敷きになって生まれた映画が2作ある。
1本目は、マリリン・モンローがキュートな『七年目の浮気』(1955)も放送される、ビリー・ワイルダー監督の『深夜の告白』(1944)。これは原作になったジェームズ・M・ケインの小説のタイトルを直訳すると「倍額保険」。自動車などの事故に比べて発生する率が低い鉄道死亡事故が起きた際、通常の生命保険金額の倍額を支払う、というシステムだそう。保険会社で働いていた経験のあるケインが、実際に起きた保険金殺人事件、ルース・スナイダー事件に着想を得て書き、大評判を呼んだ。脚本をフィリップ・マーロウの生みの親レイモンド・チャンドラーが書いている。

プレミアムシネマ「深夜の告白」

5月14日(木)[BSプレミアム]後1:00〜2:49

もう1本が水上 勉の人気小説を内田吐夢監督が映画化した『飢餓海峡』(1965)。ここでは、名前は変えられているが昭和22年の台風で起きた青函連絡船、洞爺丸の沈没事故とそのとき北海道の岩内で起きた大火災がモデルに使われている。ことの起こりは、台風で青函連絡船が沈没、その事故で打ち上げられた遺体に乗船名簿に載った人に該当しない人物が2人いて、刑事が不審に思ったことだった。おなじとき岩内で大火が起きて質屋が襲われ、一家が殺害されたことから2つの事件が結びつき、想像も出来ないようなドラマが生まれる。この映画、今回の放送では上映時間が184分だが、実際には192分あり、あまりの長さに会社側がカット。内田監督はこれが許せず、東映を退社した。

プレミアムシネマ「飢餓海峡」

5月18日(月)[BSプレミアム]後1:00〜4:04


渡辺祥子

【コラム執筆者】
渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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