会社の金を横領した女、その先には…
ヒッチコック監督 スリラー映画の最高峰

サイコ【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

6月3日(水)[BSプレミアム]後1:00

サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督。でっぷりとした巨体で、自作にチラッと出演、また、テレビ番組「ヒッチコック劇場」では、ドライでブラックなユーモアたっぷりにホストを務め、映画史上最も有名な監督といっても過言ではないと思います。今年で没後40年になりますが、その傑作群は今も多くの映画作家に影響を与えています。今回ご紹介するのは、ヒッチコックの最大のヒットとなった、映画史上最強のスリラーです。

登場人物の心理を表現する“音楽”にも注目!見る人の心をわしづかみに

借金を抱える恋人のために、魔が差して会社の金を横領してしまったマリオン。罪の意識を感じながら車を走らせるマリオンは、どしゃ降りの雨のなか、さびれたモーテルを見つけます。経営者は、母親と2人暮らしだというノーマンという若い男性でした。ノーマンと話し、我に返ったマリオンは、今ならまだ間に合うと、金を返すことを決意します。罪を洗い流すかのようにシャワーを浴びるマリオン。そして…。

短いカットをフラッシュのように重ねたかと思うと、クレーンを使った超絶のワンカットが登場する華麗な映像テクニック、モノクロならではの白と黒を強調した照明、マリオンを演じるジャネット・リーとノーマンを演じるアンソニー・パーキンスの名演技、何度見ても夢中になってしまいますが、忘れられないのが音楽。感情をも切り裂くような弦楽器の鋭い旋律は、大きな要素となっています。
作曲はバーナード・ハーマン。映画音楽の巨匠のなかの巨匠です。
名タイトルデザイナーのソール・バスの、幾何学的で卓抜なタイトル、はりつめた緊張でいっぱいになりながら車を運転するマリオン、母との関係に悩むノーマン…、強烈な映像のバックに流れ、登場人物の心理を絶妙に表現する音楽が、見るものの不安をあおり、心をわしづかみにします。ヒッチコックは、当初、バスルームの場面では音楽を使わないつもりでしたが、ハーマンから、“こんな音楽はどうか”と聞かされ、考えを変えたということです。どの場面で、ハーマンの音楽がどう流れているのか、ぜひご注目いただきたいと思います。

6月と7月は、主題歌“ケ・セラ・セラ”が有名な「知りすぎていた男」(1956)、最高傑作との呼び声も高い「めまい」(1958)、ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュース共演の「引き裂かれたカーテン」(1966)、ブラック・ユーモアの名作「ハリーの災難」(1955)、傑作サイコサスペンス「マーニー」(1964)と、ヒッチコック作品を毎週放送します。ぜひご覧ください。

【放送日時】
プレミアムシネマ「サイコ」
6月3日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:50

6月に放送するヒッチコック作品についてはこちら


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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