6月は、ヒッチコックで!

ヒッチコック映画 4作品【渡辺祥子のシネマ温故知新】

コロナウィルスの怖さを考えれば映画が描く怖さなんて…と思ったりするけれど、でもアルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』(1960)はほんとに怖い。何が怖いって、あの最後のあのシーン! ヒッチコックと言えばスリラー映画の神様で知られるが、『サイコ』はショッカーと呼ばれ、一段と怖くてショッキングであることでも有名だ。

彼の映画はどれもネタバレ禁止だが、これはホント、何も知らずに見るのが一番。とはいえ、もちろんいつも通りヒッチコックはチラリと登場するのでお見逃しなく。ジャネット・リー演じるマリオンが、オフィスに入る際、窓ガラス越しに見える白い帽子の男が彼。ヒッチコックは自分の姿を探すファンが多いのを知っていて、映画が始まって「早いうちに登場するようにしている」と言っている。

6月はそのヒッチコック映画が『サイコ』に始まり、『知りすぎていた男』(1956)『めまい』(1958)『引き裂かれたカーテン』(1966)、と4作が並んだ。

プレミアムシネマ「サイコ」

6月3日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:50

ヒッチコック作品は同業の映画監督たちに人気があることでも知られているが、一番人気は、2012年に英国映画協会が世界中の映画評論家たちから集めた“偉大な映画100選”の第1位に選出された『めまい』かもしれない。原作の「死者の中から」を書いたのはフランスのミステリー作家ボワロー=ナルスジャック。ピエール・ボワローとトマ・ナルスジャックの2人組だ。彼らは、はじめは別々に作品を発表していたが、『悪魔のような女』以来、共同で書くようになり、『めまい』『脱獄十二時間』(1958)『45回転の殺人』(1960)などが映画になっている。ヒッチコックは彼らの『悪魔のような女』の原作を読んで映画化を考えていたのだが、フランスの監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾーに先を越され、残念がっていたのを大のヒッチコック・ファンのボワロー=ナルスジャックが知り、「死者の中から」を書いてこれが『めまい』の原作に使われた。この原作ではアルジェリアから帰って来た男が、ニュース映画の中に昔自殺した女性にソックリの女性がいるのを発見、彼女を探してマルセイユからニースへ行く、と言う話になっている。この映画の中のヒッチコックは造船所の前を手に何かをぶら下げて通り過ぎる。

プレミアムシネマ「めまい」

6月17日(水)[BSプレミアム]後1:00〜3:09

歌手が本業のドリス・デイが歌う主題歌「ケ・セラ・セラ」が大きな役割をはたす『知りすぎていた男』は、ヒッチコックが1934年に英国で撮った「暗殺者の家」のリメーク作。パリで開催された医学会議の帰りに妻と息子を連れてモロッコへ足を延ばしたベン・マッケンナ博士(ジェームズ・スチュワート)は目の前で殺された男の最後の言葉を聞く“政治家が殺される…ロンドン…アンブローズ・チャペル”。こうして事件に巻き込まれていくベンと妻と7歳の息子。母が息子に教えた口笛がのちに役に立つ。ここでのヒッチコックはモロッコで曲芸を見ている博士一家の脇で背中を向けて覗き込んでいる。

プレミアムシネマ「知りすぎていた男」

6月10日(水)[BSプレミアム]後1:00〜3:01

ポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースという映画の公開当時のトップスターが共演するのが『引き裂かれたカーテン』。ここでのヒッチコックはロビーの左手に赤ちゃんを抱いて座っている。このときの印象を聞かれた監督は「きみは赤ん坊を抱いたことがありますか? あれはふにゃふにゃしてじつに持ちにくいものなのだよ」と言ったとか。相当へんなおじさんだと思う。

プレミアムシネマ「引き裂かれたカーテン」

6月24日(水)[BSプレミアム]後1:00〜3:09


渡辺祥子

【コラム執筆者】
渡辺祥子(わたなべ・さちこ)さん

共立女子大学文芸学部にて映画を中心とした芸術を専攻。卒業後は「映画ストーリー」編集部を経て、映画ライターに。現在フリーの映画評論家として、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。映画関係者のインタビュー、取材なども多い。また映画にとどまらずブロードウェイの舞台やバレエなどにも造詣が深い。著書に「食欲的映画生活術」、「ハリウッド・スキャンダル」(共著)、「スクリーンの悪女」(監修)、「映画とたべもの」ほか。

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