作品を通して見えてきた三島由紀夫の素顔とは?

没後50年 今夜はトコトン“三島由紀夫”

1月30日(土)[BSプレミアム]後10:40

1970年11月に作家・三島由紀夫が自決してから50年がたちました。三島の作品は今も世代を超えて読み継がれ、この5年で25万部以上が売れたベストセラー作品も現れています。

今回番組では、作品を読みつくし、三島に精通する6人が集結。「私と三島」をテーマに、作品の魅力はもちろん、知られざるエピソードを語りつくします。また、美輪明宏さんなど三島を間近で見てきた人たちも三島の“素顔”を証言。その謎多き人生を掘り下げる120分です。

果たして座談会ではどんなことが語られたのでしょうか。藤田盛資じょうすけディレクターに裏話を聞きながら、番組の見どころをご紹介します。

三島由紀夫とは?

1925年、東京生まれ。45年の生涯で刊行されたものだけでも99の作品を執筆。代表作『潮騒』『金閣寺』は文庫だけで300万部以上売り上げる。ノーベル文学賞の候補になったことも。1970年、自衛隊駐屯地で憲法改正を訴え自殺。長年、死の謎に注目が集まっていたが、没後50年を迎え改めて作品そのものへの評価が高まっている。

三島を愛してやまない6人!

上段左から、宇垣美里さん(フリーアナウンサー)、平野啓一郎さん(作家)、宮本亞門さん(演出家)、下段左から佐藤秀明さん(近畿大学教授)、ハリー杉山さん(タレント)、ヤマザキマリさん(漫画家)

“三島由紀夫のことならば”と、集まったのは6人の三島愛読者たち。作品や人物像、自分とのつながりや思想の分析まで存分に語りつくします。番組では、人に薦めたい1冊もご紹介。「学生時代に読んでめちゃくちゃ刺さった」という宇垣美里さんが、その作品の一節を朗読したり、宮本亞門さんが「いつの年ごろに読んでもグサッとくる」と衝撃を受けた作品を語ります。

作家の平野啓一郎さんは「三島の最高傑作はこれだと思う」と、代表作とも言われる1冊を紹介。漫画家のヤマザキマリさんは、「あえてみなさんとは違った方向性のものを選びました」と語り、『テルマエ・ロマエ』を書いたときと同じ感覚になったという読書体験を明かします。

藤田Dの裏話 その①

座談会は、20~60代の年代も職業も異なる方々に集まっていただきました。作家目線の解釈、演劇を通しての目線、いち読者として、さまざまなご意見が伺えておもしろくなっていると思います。「収録は最大で3時間ほど」と伝えていたものの、盛り上がりすぎて3時間をオーバーするほどで、かなり濃い内容となっています。口々に「楽しかった」とおっしゃっていただいた、熱いトークをお楽しみください。

自決への疑問──

三島の作品や人物像を語り合う中、やはり避けては通れないのが「憲法改正を訴え自決したこと」です。果たしてそれが三島の本当の目的だったのか…。「三島なりの表現方法だったのでは」「きっかけとなった小説があったのでは」「ある言葉がキーワードだったのでは」。これぞ座談会といった、“思考のラリー”が続きます。

藤田Dの裏話 その②

今回の座談会、そして番組は、三島由紀夫を通して「もう一度自分の内面を見つめてみる」といった裏テーマが隠れています。三島さんの戦争体験や体が弱かったこと、戦後社会での葛藤などは、彼がのこした作品にも繊細に描かれています。そういった意味では三島さん自身を語ることが作品を語ることでもあると思っています。見てくださるみなさんも思い思いの作品に当てはめて、一緒に三島さんの思考を考察してみるのもいいのかもしれません。

三島由紀夫の素顔とは

執筆活動のほかに、映画や舞台にも出演していた三島由紀夫。自身のコンサートで1曲歌うよう依頼したのは、美輪明宏さんです。「ひどい音痴だったのに1週間で直した」という驚きのエピソードのほかに、三島のコンサートにかける思い、本番前夜の逸話、そして本番の様子など、知られざる三島の素顔を語ります。

一方座談会でも、三島の素顔が明らかに。作家の平野さんは、「ある著名人が、三島を激怒させてしまった」というエピソードを。三島を研究する佐藤教授は、「剣道の師範に弟子入りした際の生真面目な一面」を。ハリー杉山さんは、ジャーナリストだった父親と三島のユーモアあふれる交流を語ります。

藤田Dの裏話 その③

番組ではほかにも、三島さんと交流の深かった人物として、瀬戸内寂聴さん、小学校からの同級生、最後の原稿を受け取った担当編集者、三島さんが結成した民間防衛組織「たての会」の元会員の方などもご登場いただきます。そういった方々にお話を聞く中で分かったことは、三島さんは常に意外性がある人だということです。また、小説と同じころに書かれた評論や対談集を読むと、当時の三島さんの心境や状況が分かって、作品への理解がより深まり、遺された資料も膨大で、調べれば調べるほど“三島沼”にハマってしまいました。視聴者のみなさんには、今回ご登場いただいた方々それぞれの三島論、三島像にふれたうえで、もういちど三島作品を手にとってみてはいかがでしょうかということを伝えたいです。これまで読んできた人も、毛嫌いして読んでこなかった人も、新たな出会いになると思います。

出演者からのメッセージ

座談会出演者のみなさんから、三島作品への熱いメッセージが届きました!

宇垣美里さん

三島由紀夫の作品を初めて読んだのは、中学生のときです。その当時は「なんてものを読んでしまったのか!」と衝撃を受け、しばらく三島作品ばかりを読む毎日でした。中でも文体がすてきで、毎度うっとりしています。薄いガラスに幾重にも細工を施したような繊細でいて大胆かつ豪華絢爛けんらんな日本語なんですよね。三島文学を読むことは、私たちがどのような国に生まれて、どういう人間かを改めて考えるのに、すごくいい機会ではないかと思います。

佐藤秀明さん(三島由紀夫文学館・館長)

三島作品は、作者が体重を乗せて書いているところが魅力だと思います。また、その切実さが容易に分からないところも何度も読んでしまう要因なのではないでしょうか。しかし三島文学は、万人に愛される文学ではないので、読みたくない人は読まなくていいと思っています。私が若いころ、三島作品を研究していると知った女性に、悪気はないのでしょうが「あら、いやだ、気持ち悪い」と言われたことがあります。三島由紀夫はそのように受け止められていた作家だったし、私にも三島を研究することに後ろ暗い感じがありました(今はそんな空気もなくなり、それはそれでさみしいですが)。文学の本当のおいしいところは、ちょっと“やばい”ところだと思います。三島文学にはそれがいっぱいあって、それは私たちを鍛え、豊かにするのではないかと思います。

平野啓一郎さん

中学生のころ、タイトルにインパクトがあって読んでみた『金閣寺』に衝撃を受けました。今まで自分が読んできた日本の近代文学とまったく文体が違っていて、非常にきらびやかで、華麗なレトリックに富んでいて、と同時に主人公が非常に暗い。内面の暗い思索と、表現のきらびやかさのコントラストに強烈な印象を受けました。また、『海と夕焼け』という短編はかなりのページをそらんじられるくらい好きでした。こういう文章を書いてみたい、こういう言葉を自分も使ってみたいという憧れをかき立てる作家でした。いま没後50年をきっかけに三島最後の作品『豊饒の海』の連載評論を書いていて、いまだに強い関心を持っています。番組を見てくださる方には、最期の行動だけで三島という人物を判断するのではなく、ぜひ、小説を読んでほしいです。

宮本亞門さん

中学生のときに作品を読んで以来、三島さんの呪縛にかかったように読みあさり、これまで『金閣寺』や『らい王のテラス』などを演出させてもらいました。三島作品は、聖(清らかさ)と対局の猥(汚らわしい)ものが反発して、まじりあって生まれる美しさが魅力だと思います。その二極化の中で、自分を問われる感覚がたまらないんです。主観と客観のあり方を考えさせられるのも好きですね。肉体を忘れてしまいがちな今、肉体と精神のバランスこそが重要だと考えています。晩年の三島が語っていた“からっぽでニュートラルで抜け目ない経済大国”にならないために何が必要か、三島から受け継がれた命題はとても大きいと感じています。今回はそんな三島由紀夫を、“演劇人”としての目線でも掘り下げていきたいと思っています。

ヤマザキマリさん

私は17歳でイタリアに留学しましたが、当時の身元引受人はイタリアの同性愛文学の先駆者だった作家で、三島文学を会うたびに勧められ、翻訳も含め随分たくさん読みました。実は三島文学に描かれる屈折した人間たちの醸し出す世界観そのものは個人的には苦手ですが、理想的な描写のためにはどんな細かい感情すら卓越なレトリックで言語化し、自分の作品の部品として組み込む彼の表現方法は、一番最初に『禁色』を読んだときから引き込まれました。三島は、世間的な先入観や嗜好しこう性を払拭ふっしょくし、今まで読み続けてこられた私にとって数少ない作家のひとりです。自分という人間を言語に体をむしばまれた表現の化身と捉え、コンプレックスを抱えながら生きることも、風潮や批判によって傷つけられることも、屈辱も失意も恐れずにまっしぐらに生き抜いた三島由紀夫という作家は、その強烈な存在感をこれからも留め続けていくのだろうと感じています。

ハリー杉山さん(番組MC)

三島文学は説明し難い中毒性があります。それは、内容が100%理解していなくても不思議なことに納得してしまうところです。そして、人間が隠している心の一番深いところにある感情を全部えぐり出すところも、ときには豪快で目が離せなくなります。僕が初めて三島文学にふれたのはイギリスにいた10代のころ、英語版を読んでいました。三島文学は今もなお数々の外国人を魅了しています。ジャーナリストだったイギリス人の僕の父も、晩年の4年間親しくしており、「外国人100人の前で動揺せず英語で笑いを取る三島の、魔法のようなカリスマ性に魅了された」と話していました。今回は番組のMCとして、三島愛にあふれた皆さんと三島文学の魅力を語り尽くしたいと思いますので、ぜひお楽しみに!

「没後50年 今夜はトコトン“三島由紀夫”」

【放送予定】1月30日(土)[BSプレミアム]後10:40

取り上げた番組はこちらです!

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