アカデミー作品賞など7部門受賞!
スピルバーグ監督こん身の傑作

シンドラーのリスト【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

3月30日(木)[BSプレミアム]後1:00〜4:17

今回ご紹介するのは巨匠スティーブン・スピルバーグ監督の名作。ユダヤ人をナチス・ドイツから救おうとした男の物語です。

第2次大戦下、ナチス・ドイツ占領下のポーランド。ドイツ人実業家のオスカー・シンドラーは強制移住させられたユダヤ人を労働者として雇い、事業を成功させます。しかしその後ナチスは居住区を閉鎖、ユダヤ人を収容所に送り次々に虐殺していきます。シンドラーは、ユダヤ人の名前を記したリストを作成し、全財産を使って救おうとしますが…。

原作はオーストラリアの作家トマス・キニーリーが史実をもとに執筆し、イギリスの世界的な文学賞・ブッカー賞を受賞した小説。自身がユダヤ系であるスピルバーグ監督は、映画化権を取得してから10年近くも構想を練り、ポーランド各地で撮影を行って完成させました。強烈なモノクロ映像、ドキュメンタリーのようなカメラワーク、迫力と緊張感あふれる演出は、3時間以上もの間途切れることはありません。スピルバーグ監督が全身全霊を込めたこの作品は、アカデミー作品賞・監督賞はじめ7部門を受賞。エンターテインメントの大ヒットメーカーというだけでなく、アメリカを代表する映画作家として高く評価されました。

ひときわ印象的なのが、モノクロ映像のなかで赤いコートの少女だけがカラーで描かれる場面。スピルバーグ監督は、前作「オールウェイズ」(1989)に出演したオードリー・ヘプバーンから聞いた話をもとにこの場面を演出したということです。戦争中、オランダでレジスタンス活動にかかわっていたヘプバーンは、列車に乗り込む人たちのなかにいた、赤いコートの少女のことが深く記憶に刻まれていたのだそうです。

シンドラーを演じるのはイギリスのリーアム・ニーソン。大柄で低い声、酒と女性が大好きで、目的のためには賄賂も贈るバイタリティーあふれる主人公はニーソン以外考えられないほどピッタリですが、ほかにもハリソン・フォード、ケビン・コスナー、スウェーデン出身のステラン・スカルスガルド、スイス出身のブルーノ・ガンツなど、さまざまな俳優が候補になったということです。スピルバーグ監督は、父親のように慕っていた映画会社の会長、スティーブ・ロスをイメージして演出したということで、エンドクレジットでは、公開前の92年に亡くなったロスへの献辞がささげられています。

製作から今年で30周年。スピルバーグ監督こん身の傑作。じっくりご覧ください。

プレミアムシネマ「シンドラーのリスト」

3月30日(木)[BSプレミアム]後1:00〜4:17


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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