トム・クルーズ、ジャック・ニコルソン出演
緊迫感あふれる法廷ドラマ

ア・フュー・グッドメン【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

4月9日(火)[BS]午後1:00〜3:19

今回ご紹介するのは緊迫感あふれる法廷劇の名作です。

キューバのアメリカ海軍基地で海兵隊員サンティアゴが殺され、2人の兵士が起訴されます。背後に暴力的な制裁があると感じた海軍内部調査部のギャロウェイ少佐は、弁護を申し出ますが却下され、法廷経験のないキャフィ中尉が任命されます。なぜサンティアゴは殺されたのか、ギャロウェイとキャフィは事件の鍵を握るジェセップ大佐に出廷を求めますが…。

見どころは、名優たちが火花を散らす白熱の演技。キャフィを演じるのはトム・クルーズ。成績優秀でも自分の仕事にやりがいをもてなかったものの、次第に正義に目覚めていく若き弁護士を熱演しています。そしてデミ・ムーアがキャフィを支えるギャロウェイを理知的に演じ、ケビン・ベーコン、キーファー・サザーランド、J・T・ウォルシュといった名優が抜群の演技で画面を彩ります。圧巻なのはジェセップ大佐を演じるジャック・ニコルソン。出演場面はそれほど多くありませんが、“自分こそが絶対だ”という権力者を圧倒的な迫力で演じています。とりわけキャフィに「お前に真実は分からん」と放つセリフ、射るような鋭い瞳の表情は強烈です。

緻密に練りあげられた物語と名セリフは劇作家で脚本家のアーロン・ソーキンのオリジナル。もともとは舞台劇ですが、本作の脚本も手がけ、映画デビューとなりました。1961年生まれのソーキンは大学時代に俳優を志しますが、自分のやりたいことは書くことだと気づき、作家となります。海軍の弁護士だった姉から聞いた話をもとに構想した本作は絶賛され、その後「ソーシャル・ネットワーク」(2010)でアカデミー賞を受賞。「マネーボール」(2011)や、監督も務めた「シカゴ7裁判」(2020)といった話題作も手がけています。

監督のロブ・ライナーは「スタンド・バイ・ミー」(1986)や「恋人たちの予感」(1989)「ミザリー」(1990)など、幅広いジャンルの作品で知られる名匠。もともとは俳優だったライナー監督、本作も俳優同士のアンサンブルを大事にする演出で、見ごたえある作品に仕上げています。

名撮影監督ロバート・リチャードソンの横長の構図を生かした流麗なカメラワーク、ライナー監督の数々の作品に参加しているロバート・レイトンの緩急ある編集と、映画ならではの見どころも盛りだくさんです。

“正義とは何か”、公開から30年以上たった今も本作のテーマは深く響きます。
アメリカ映画ならではの傑作エンターテインメント、どうぞお楽しみください。

プレミアムシネマ「ア・フュー・グッドメン」

4月9日(火)[BS]午後1:00〜3:19


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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