これまでの街歩き

チェジュ/ 韓国

2012年3月15日(木) 初回放送

語り:矢崎 滋

撮影時期:2012年1月

世界地図

地図

場所

 チェジュ島は韓国の最南端に位置する、韓国の中でいちばん大きな島です。韓国で最も高い山、ハルラ山(標高1950m)もあり、まさに“韓国一”づくしの島です。2007年、ハルラ山をはじめ、ソンサンイルチュルボン(城山日出峰)などの火山や、世界最長の溶岩洞窟である。マンジャングル(万丈窟)が、韓国で初めてユネスコ世界自然遺産に登録されました。九州北部と同じ緯度に位置しながらも、島付近を暖流が流れて気候が温暖なことから「韓国のハワイ」とも呼ばれ、年間750万人の観光客が世界中から訪れるリゾート地でもあります。
 このチェジュ島の中心都市が人口40万のチェジュ市です。15世紀に朝鮮に治められるまで「耽羅国」(たんらこく)と呼ばれ、独立した地域だったチェジュ島において、チェジュ市は古くからその中心的な街でした。そのため、独自の言語や文化がいまだに色濃く残っています。素潜りで魚介類を獲る海女漁はチェジュの伝統漁法で、日本の海女漁のルーツとも言われています。また、石積みの塀が続く路地や石造りで屋根の低い民家は、風が年中強いチェジュならではの風土が形作った街並みです。

Information

トルハルバン公園

 チェジュの守護神、石像のトルハルバン。その魅力にとりつかれ、自ら10年以上かけて150ものトルハルバンを作り、公園まで作ってしまった画家のキム・ナムフンさん。トルハルバンとはチェジュの方言で「石のおじさん」という意味で、18世紀頃、朝鮮王朝がチェジュを治めていた時代、守り神として村の入り口に祭られたのが始まりと言われています。キムさんは、トルハルバンに何とも言えない安らぎを感じるのだとか。それは、かつて朝鮮やモンゴル、日本に占領されたチェジュの人々の平和への願いがそこに込められているからだといいます。
 昔からあるトルハルバンは現在チェジュに45ほど残っていますが、ここでは、そのレプリカのほか、キムさんの創作トルハルバンが愛らしい表情を浮かべて、訪れた人たちを迎えてくれます。

カロッ

 チェジュに古くから伝わる染め物「カロッ」。今、シックで落ち着いた風合いが受け、女性たちを中心に静かなブームになっています。デザイナーのヤン・スンジャさんは、廃れかけていたカロッを新しいデザインで復活させようと、20年前、ニューヨークから故郷のチェジュに戻り、工房を作りました。
 その製法は、チェジュに自生する青柿をすりつぶした汁で麻や木綿、絹を染め上げる「柿渋染め」。汚れにくく風通しもよく、防虫効果もあることから、チェジュでは農作業で着る野良着として愛用されてきたものです。染め方は昔と変わりません。青汁に浸し、何度ももんでしみ込ませ、青みがかった布地にします。それをチェジュの風と日差しにさらすと、不思議なことにその色は次第に茶色に変化していきます。

ソンサンイルチュルボン

 2007年に世界自然遺産に登録されたソンサンイルチュルボン(城山日出逢)はチェジュ島の最も東にある死火山です。5000年前の海底噴火によってできた城塞のような山で、日の出の美しさから「いのちの山」と呼ばれています。高さは182mほどですが、最大斜度は45度。体感的にほぼ絶壁です。登るのはなかなか大変。でも、チェジュ島で一番人気のスポットで年間およそ200万人が訪れます。頂上まで登ると、火口を眺めることができます。直径600m、高さ80mの火口は、まるで巨大なスタジアムのよう。かつて外敵が襲来したとき、周辺の村人はこの火口に逃げ込んで身を守りました。そこはまた、地元の子どもたちにうってつけの遊び場でもあったと言います。
 海からニョキッと突き出した威容は、見る者の目を釘づけにする迫力があります。

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