これまでの街歩き

ゲーテが愛した街
ワイマール/ ドイツ

2017年7月18日(火) 初回放送

語り:イッセー尾形

撮影時期:2017年5月

世界地図

地図

場所

 首都ベルリンから南西へ約200km、テューリンゲン州にあるワイマール。18世紀末の建物が残る旧市街と広場は、ドイツの中でも珍しく第2次世界大戦で破壊をまぬがれ、世界遺産に登録されています。
 また文豪ゲーテをはじめシラーやヘルダーなどといった偉人たちが数多く暮らした街として知られます。彼らによって培われた個人の自由と権利を尊ぶ気風の中で、その後、モダニズム芸術を探求するバウハウス大学や音楽院などが誕生し、文化都市ワイマールをつくり上げました。
 1919年に初の民主主義憲法「ワイマール憲法」が制定されたワイマールですが、ナチスの政権掌握によって、憲法は消滅。戦後は東ドイツ体制が敷かれます。こうした中で、人びとは“自由と権利を尊ぶ気風”を取り戻すためにデモを繰り返し、自由を取り戻しました。今でもその精神を受け継ぐ芸術家や、若者たちが数多く暮らしています

Information

ゲーテが生きたワイマール

 ドイツで作家として活躍したゲーテがワイマールで暮らすことになったのは26歳のとき。きっかけを作ったのは、当時、この地を治めていたアンナ・アマーリア大公妃でした。学問や芸術に造詣の深かったアンナ妃は、多くの文化人を街に招き、公国の改革を目指したのです。この地で政治家となったゲーテはアンナ妃の図書館を民衆に公開するなど、斬新な改革を打ち出します。更に宰相にまでのぼりつめると宮廷劇場の総監督になり、自ら呼び寄せた劇作家シラーとともに、それまで貴族の楽しみだった文化と芸術を民衆に公開。富と権力をもつ貴族たちに民衆が支配されていた時代、ゲーテたちは文学と芸術を武器に、個性の解放を目指したのです。
 こうして自由の象徴となった劇場はその後、「国民劇場」と名付けられ、民主主義をうたい上げた画期的な「ワイマール憲法」制定の舞台となります。その後の第2次世界大戦、そして戦後はしばらく、東ドイツ体制が敷かれ、ワイマールの人びとの自由な精神は危機にさらされますが、自由を求める心のともし火は消えることはありませんでした。再び民主主義を掲げて立ち上がった街の人びとが集った場所は、あのゲーテが改革を行った劇場だったのです。

食べ歩きグルメ

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介!

今回のグルメを紹介するのは、地元で観光ガイドをしているゲザさん。その体つきからも分かるように、ゲザさんは、とにかく食べることが大好き!彼女が選んだオススメは、ワイマールの人たちなら誰でも知っている、この街にゆかりある人たちが好んだものばかりです。

ゲーテのケーキ

毎年、ゲーテの誕生日に街の人たちが必ず食べるという「ゲーテのケーキ」。見た目も渋い大人の味を楽しめる絶品です。レシピはゲーテが生きていた当時のまま。特に興味深いのが仕上げに使われるのはワイン。大のワイン好きで知られたゲーテならでは。焼き上がったケーキの上に、これでもか!というほどワインを豪快に注ぎます。ワインが加わることでしっとりした食感を楽しめるケーキは、気づいたら顔が赤くなっているなんてこともしばしばなんだとか。

玉ねぎケーキ

ワイマールで300年の歴史を誇る「玉ねぎケーキ」。その味は家庭ごとに味が違う「母の味」ともいわれる一品です。ゲーテの妻クリスティアーネもおいしい玉ねぎケーキでゲーテの胃袋をつかんだに違いありません。毎年、味を競うコンテストが行われるほど大事に守り伝えられているこの玉ねぎケーキ。40個もの玉ねぎと大量のバターを使ったケーキはコクがあって、どちらかというと卵焼きといった方が私たちにはなじみます。うま味と歴史を味わえる一品です。

シラーの巻き毛

ゲーテがワイマールに呼び寄せ、街の改革を進めた盟友シラーの名前が付いたスイーツを紹介。地元の人たちにイケメンで人気のあったシラーの巻き毛をモチーフにした一品!巻き毛風に焼き上げたパイの中に生クリームがたっぷり入った、その名も「シラーの巻き毛」です。地元の子供たちは、このスイーツから街の歴史に触れることも多いんだとか。

ちょっとより道

街からちょっと足をのばして、イチ押しの観光スポットを訪ねます!

ドイツの真ん中に広がる世界遺産の大自然を満喫!
語り:篠原ともえ

 今回目指すのは、ワイマールから電車とバスを乗り継いで2時間ほどのところにある世界遺産「ハイニヒ国立公園」。ドイツのど真ん中に琵琶湖の1.5倍の広さのチューリンゲンに隣接する自然の宝庫。ドイツが東西に分断されていた時代に軍事上の理由で立ち入りが禁止されていたという一帯には、絶滅危惧種を含む7千種の動植物が生息しているのだとか。
 ブナの森に包み込まれるようにつくられた遊歩道を散策していると、ギザギザの木肌が迫力満点の大木の表面を、興味深々で触っている子どもを発見。公園で最大のブナの木だと教えてくれました。小道をそれて木々の間を歩いていると、森の管理員さんに声をかけられます。近くでキツツキが見られるというので、早速案内していただくことに。キュッキュッという特徴ある鳴き声を響かせて動き回るキツツキを発見。ちょうど産卵期で巣穴にいる赤ちゃんを守っているのだそうです。
 遊歩道に戻ると、大きな塔と不思議な回廊が…?行ってみると、森の中に造られた空中回廊!美しい鳥の鳴き声と木々に包み込まれ、ふわふわと空中散歩を楽しんでいると、先ほど目に入った塔が目の前に。上がってみると、目の前に、世界遺産の絶景が広がります。

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